サキュバスに代わってお仕置きよ!
「お嬢ちゃんが今夜『イイコト』してくれるなら許してやろうかなー?」
巨漢に言われスミレは恐怖する。
「何だその顔。サキュバスなんて、そんぐらいしか取り柄がねーだろうがよ!!」
「おい、スミレさんに謝れ」
マルクエンは険しい顔で怒鳴りつける。
「お前が喧嘩で勝てたら何でもしてやるよ」
そう言って外へ出ていく男達。マルクエンはその後を付いて行く。
店の外で男達とマルクエンは対峙した。
「かかってきな、大馬鹿野郎」
巨漢は手をクイクイと引いてマルクエンを挑発する。
「そうか、それじゃ」
マルクエンは走って一気に距離を詰めた。その速さに巨漢はギョッとする。
取り巻きの一人の腹を殴り、そのまま別の一人も蹴り飛ばし、あっという間に制圧した。
「後はお前だけだ」
「ふん、面白え」
巨漢は強がっていたが、内心焦っている。
殴り掛かられた拳をさっと避けて、カウンター気味に裏拳で巨漢の顔を殴る。大きな体が宙を舞い、飛んでいった。
スミレやボーイはその様子を見てぽかんとしている。あっという間に三人の男は地面に倒れた。
「すごい……」
思わずそう口にすると同時に、男達は短剣やナイフを取り出して立ち上がる。
「この野郎、舐めやがって!!」
「マルクエンさん逃げて!! 治安維持部隊はまだなの!?」
スミレの言葉にも、男達にも、マルクエンは動じない。
一人の男が魔法の詠唱を始め、火の玉が飛んできた。それと同じくして別の男と、巨漢が短剣を持ち走ってくる。
「死に晒せ!!」
もうダメかと集まってきた見物人達は思ったが、マルクエンは火の玉を最小限の動きで全部避けて、男達を返り討ちとばかりに蹴り飛ばした。
「少し、お仕置きが必要か?」
倒れる巨漢の両腕を後ろにねじり上げて捻る。
「いだ、いただ!!!」
「悪い腕だな、貰っておくか」
このままでは本気で折られると思った巨漢は命乞いを始めた。
「悪かった、俺が悪かった!!!」
「謝る相手が違うな」
マルクエンはそう言いながらスミレの方を向かせる。
「悪かった!! 悪かった!!!」
「マルクエンさん!! 私はもう大丈夫だから!!」
スミレが言うと、マルクエンは両腕を解放してやった。
「ひぃー」と言いながら男達は何処かへ逃げていく。
「マルクエンさん!!」
スミレはマルクエンに駆け寄って抱きついた。柔らかい感触が当たり、険しい顔から一気に照れ顔になる。
「す、スミレさん!?」
「無事で良かった……」