お洋服選び
マスカルは褐色肌の女に騒がれ、悪い気はしなかった。
「どうも、こんにちは。お嬢さん」
爽やかな笑顔を向けて、すぐに視線をラミッタへと向ける。
「皆さんは同じパーティの様ですね。良かったら今夜、私達のパーティと親睦会としてお食事でもいかがでしょうか?」
「ゆ、勇者パーティと親睦会ッスかー!?」
「私はパス」
釣れない返事をするラミッタにケイは耳打ちをした。
「勇者パーティと関わりが持てるなんてチャンスッスよ!?」
「だって私、興味無いもの」
ツーンとするラミッタにケイはもどかしそうに言う。
「もしかしたら、魔王の情報も聞けるかもしれないッスよ!?」
魔王と聞いてラミッタは反応を示した。ケイの方を見るとキラキラした目をしている。はぁっとため息を吐いた後「仕方ないわね」とラミッタが言う。
「そう来なくちゃ!! 勇者様ー、是非とも親睦会よろしくおなしゃッス!!」
「えぇ、それでは今夜、十九時に『コウーキュ』という店でお待ちしております。ギルドから出て左手にありますので」
「了解しましたッス!!」
そう会話をして一旦解散となった。外をルンルン気分で歩くケイを見て、ラミッタが話しかける。
「ケイ、あんな勇者のどこが良いの?」
「勇者本人って言うよりは、人脈ッスよ人脈!! 冒険者には人脈も大事なんス!」
「そういうものなのか」
マルクエンは会話を聞いてうーむと唸った。
「それで、店の下見なんスけど……。なるほど、ギリでドレスコードじゃなくても入れる店っぽいッスね」
遠目で約束の店を見ると、ドレスコードは必要無さそうだったが、冒険用の服で入るべきではない店だとは分かる。
「ラミッタさんはマルクエンさんが買ったワンピースがあるから良いとして」
ケイがそこまで言った所でラミッタが待ったをかけた。
「私は嫌よ!! あのワンピースじゃ恥ずかしいもの!!」
「やっぱり、俺が選んだものでは見る目が無かったか……。すまんな」
露骨に落ち込むマルクエンを見てシヘンがあわあわとしだす。
「そ、そんな事ないですよ? 私はあのワンピース、ラミッタさんによく似合っていると思います」
「私もそう思うッスよー」
二人に言われ、ラミッタは赤面する。
「なっ、えっ、っつ……。まぁ、アレしか無いから仕方なく着てあげるわ!!」
「私も前の街で買ったあの服でイケるっスねー。シヘンとマルクエンさんの服。いい機会ッスし、買っておきましょうか」
ケイの言葉にマルクエンは、それもそうだなと頷いた。