シオ
「手間取らせやがって……」
治安維持部隊の兵士が近付くと、声だけで抵抗しようとするシオ。
「やめろ!! こっち来んな!!」
「黙れ、下手打ちやがって。お前は右手の斬り落としだけじゃすまねぇ、この場で……」
そこで魔力を感知したマルクエンとラミッタが駆け付けた。
「ゆ、勇者様!! 怪しげな者を取り押さえましたので」
とっさに兵士はシオに話せなくなる沈黙の魔法を掛ける。
シオを見てマルクエンは顔をしかめた。
「怪しげなって言ったって、その子はまだ子供じゃないですか」
「いえ、この街では少し有名な手癖の悪い者です」
治安維持部隊の言葉にラミッタは突っかかる。
「そんな奴を、今の今まで野放しにしていたのかしら?」
ラミッタに言われ、治安維持部隊は言葉に詰まった。
「まぁいいわ。その子と話をさせてくれるかしら?」
「いえ、勇者様のお手を煩わせるわけにはいきません。我々で尋問を……」
ラミッタは笑顔を作るが、目が笑っていないまま言う。
「勇者の言う事が聞けないのかしら?」
流石に勇者という立場を振りかざしすぎだと思ったマルクエンはラミッタを止めようとする。
「おい、ラミッタ。そこまで言わなくても……」
「アンタは黙ってなさい。とにかくその子は預かるわ」
「か、かしこまりました……」
「宿敵、頼んだわよ」
「あぁ……」
拘束されて、口も塞がれている女の子をマルクエンは担ぎ上げた。
治安維持部隊の兵士は、隊長に今あった出来事を報告した。
「そうか。まずい事になったな……」
隊長が言うと、部下の兵士も顔を青くしている。
「これでは我々の秘密が……」
「ヤツを向かわせるぞ」
隊長の言葉に兵士は頷いた。
「はっ、ですが勇者相手では流石のアイツも……」
「なに、ガキを殺して逃げるだけさ、大丈夫。大丈夫だ……」
街の外れでラミッタはシオの沈黙魔法を解いてやる。
「ぷっはぉ!! やっと喋れる!!」
そんなシオにラミッタは話しかけた。
「アンタが私達の剣を盗んだの? 中々に度胸があるじゃない」
「し、知らなかったんだ!! まさか勇者様の剣だったなんて!!」
言い訳をするシオにマルクエンは諭すように言う。
「別に、私達の物ではなくても盗みはダメだ」
その言葉に、シオは。
「んだよ、だったら、だったら!!」
そこまで言ってから思い切り叫ぶ。
「だったら!! 盗み以外に生きていく方法を教えてくれよ!!!」
シオの勢いは止まらない。
「アンタら勇者様なんだろ!? 世界の救世主様なんだろ!? だったらなんで私みたいな盗んでしか生きられない貧民がいるんだよ!!」
「あぁ、すまない」
マルクエンが頭を下げるのを見てシオは驚く。
そして、マルクエンは続けて言う。
「飢える者が居るのは国の責任だ」
「き、綺麗事ばっかり言いやがって!!」
その瞬間。マルクエンとラミッタは殺気を感じて振り返る。




