エナハのシオ
ラミッタは椅子から立ち上がり、言った。
「行くしか、ないわね」
マルクエンも同じく立ち上がる。
「あぁ、そうだな」
ギルドマスターもうなずき、レモーヌの方を見た。
「そうですか。レモーヌ、道案内をお願いできるか?」
正直エナハの街には行きたくないレモーヌであったが、覚悟を決める。
「わかりました!」
マルクエンとラミッタが滞在する『スナドリ』の街から急いで走る影があった。
「きひひっ! コイツは上物だぞー」
俊足の魔法を使っている黒髪で小柄な少女の足は優に馬よりも速く、街からどんどん離れていく。
夕暮れになる前にエナハに着いた少女は、すぐに訳ありの品を扱う店へ向かった。
「おい、おやじ! 今日は良いモン手に入れてきたぜ」
「なんだ、シオか。またカスみてぇな剣じゃねえだろうな?」
シオと呼ばれた少女は扉を閉めて、店のカウンターまでずいずい進む。
「見て驚くなよ? この金ぴかの剣と鎧だ!」
背負っていた荷物を広げて見せると、店主はその高価そうな見た目を見て、一瞬顔が緩むが、それはすぐに険しいモノへと変わる。
「ちょっと見せてみろ」
鑑定魔法を使って、その結果に店主は驚く。
「竜!? お前、どこでかっぱらってきやがったんだ!?」
それに対して、あっけらかんと答えるシオ。
「どこって、スナドリの街だよ。竜ってなんだ?」
店主はため息を吐く。
「コイツは確かに上物だ。上物すぎる。竜の鱗を使った剣と武器だ」
それを聞いて、シオは期待に胸を膨らませる。
「そ、それじゃあ! 結構な金になるんじゃないのか!?」
「馬鹿野郎!! こんな珍しいモン、すぐに足が付いちまうだろうが!!」
怒鳴る店主だったが、シオは食らいつく。
「それをどうにかして売るのがアンタの仕事だろ!?」
「こんなもん持っているのは上級の冒険者か、金持ちぐらいだ。しかもスナドリで盗ったってんなら、いの一番にこの街を探しに来るだろうよ」
店主は続けて言う。
「しかし、なんでスナドリなんて辺鄙な街にこんなモンが……」
焦る店主とは対照的にシオは黒い髪をくるくるいじって呑気そうだ。
「結局、金にならねーのか?」
「ならねぇ、どうしてもってんなら他を当たんな」
店主に冷たく言われ、少女はふてくされる。
「んだよ……」
シオは一旦、そこら中にテントが張ってあるスラム街へ戻った。
自分のテントに戻り、盗んだ剣と防具を下ろす。
「んだよ、金にならねーのかよ」
どさっと横に寝ころび、天井を見つめる。
いつの間にか眠ってしまっている間に、事態は大変なことになるとも知らずに。




