ファッションセンス
街に着くと、服屋へ急ぐ。
「いらっしゃいませー!」
店員が笑顔で迎えてくれる。女物の服屋へ入るのは初めてなマルクエンはどこか落ち着かない様子だった。
「私は下着とケイの服を買ってきますので、マルクエンさんはラミッタさんの服を見てください」
「えぇ、分かりました」
服を待つ二人は背丈が違うので、ラミッタの服はマルクエンが選ぶことになった。適当に何か買おうと思ったが、何を買えば良いのか分からない。
女性が服を着ていると、可愛いだの美しいだのが分かるのに、服だけ選ぶとなると難しいものだと思った。
「何かお探しですかー?」
「えっ、えーっと、知り合いに服を買いたいのですが」
店員に声を掛けられ、マルクエンはおどおどとする。
「プレゼントですか?」
「え、えぇまぁ」
「だったら、このワンピースなんていかがでしょう? 新作で、色もたくさんご用意しておりますよー?」
「なるほど……」
買い物が終わり、マルクエンとシヘンは駆け足で先程の現場へと向かう。
「ラミッタ!! ケイさんいるか!?」
洞窟の中に身を隠していた二人が顔だけ出してこちらを見ている。
「良かったー、助かったッス!!」
「遅いわ宿敵!!」
粘液はラミッタの水魔法で洗い流したらしい。シヘンが服を持って二人の元へと向かう。
程なくして三人は洞窟の中から出てきた。ケイは濃い青色のキュロットと茶色のジャケットを羽織り、元気な彼女にはピッタリだった。
シヘンも一緒に出てきたが、ラミッタが出てくる様子がない。
「ラミッタさん、大丈夫ですって!!」
そう言われ、シヘンに手を引かれながら出てきたラミッタ。赤面して水色のワンピースを身に纏っている。
「しゅ、宿敵……。これはどういう事かしら?」
「どうって……。あまり気に入らなかったか?」
似合っているか、いないかで言えば、街を歩けばナンパされるぐらいには似合っていた。
「こんなの私に似合うわけ無いでしょ!!」
「そ、そうか? 似合っていると思うが……」
「なっ!!」
二人のやり取りをケイはニヤニヤとして見ている。
「だって、わ、私は……」
「私がラミッタに似合うと思って選んだんだが。やはり私のセンスではちょっと駄目だったかもしれん。街に着いたら返品して別の服を……」
「返品なんて面倒だからこのままで良いわ!! 全くド変態卑猥野郎ね!!」
マルクエンはまたラミッタを怒らせてしまったなと軽く落ち込んでいた。