護衛
朝を迎え、マルクエンとラミッタが起き出す。
ラミッタは隣にスフィン将軍が居ないことに気付き、しまったと思った。
「おはようございますスフィン将軍! 申し訳ありません、将軍より遅くに起きるとは……」
「いや、良いんだラミッタ」
怒ってはいない様子なので、ホッとしたラミッタ。続けてマルクエンもテントから出てくる。
「おはようございます」
「敵が起きているというのにイーヌの兵は随分と不用心なのだな」
「いや、まぁ、ははは……」
相変わらずマルクエンに対してはあたりの強いスフィンだ。
「おや、おはようございます。飯出来ているんで食べましょうや!」
マッサに言われ、食事を済まし、馬車を走らせ試練の塔へと向かう。
「この調子なら明日の朝には着くとおもいますぜー」
荷台に座るスフィンは「あぁ」と短く返し、揺られていた。
「あそこに見えるのが試練の塔ですぜー。思ったより早く着きましたなー」
「あれが……」
遠くに高くそびえ立つ建造物が見え、スフィンがジッと目を凝らしていた。
そんな時だった。
「っ……!! 魔人の気配!!」
ラミッタが突然大きな声で言う。スフィンも膨大な魔力の気配を感じ取っていた。
「こりゃ、まずいかもなー」
口調とは裏腹にマッサは真剣な眼差しで空を見る。
遠くからこちらへ飛んでくる影があった。
「はぁーい、元気してた?」
奇術師の魔人。ミネスがやってきて、拡声魔法を使って話しかけてくる。
「残念ながら元気よ、どこかへ行ってもらえるとありがたいのだけど」
ラミッタがそう返すと、やれやれといったポーズをし、ミネスは話し続けた。
「そっちの金髪のおねーさん。ちょっと殺させて貰えないかなー?」
ミネスは自分の事かと剣を引き抜いて構える。
「やれるものならやってみろ!!!」
「そう。じゃあやっちゃうよーん」
ミネスはジャグリングをし、ボールから火炎を射出した。
一気に辺り一面が火の海になる。
「スフィンさん、逃げるぞ!! 今のままじゃアイツには勝てない!!」
マッサがそう言って馬車に飛び乗った。
火を見た馬が驚き走り出そうとしている。
「敵前逃亡は兵士の恥だ!!」
「戦略的撤退だ!! 試練の塔で力を手に入れればアイツにも勝てる!!」
スフィンは冷静でもあった。確かに、今の自分には奴の相手は難しいかもしれない。
「……、わかった」
スフィンが馬車に乗り込むと、マッサは勢い良く走らせる。
「宿敵!! 馬車出して!!」
「あぁ!!」
マルクエンとラミッタも同じく馬車を走らせた。
「鬼ごっこだねー?」
ミネスは追いかけながら上空から魔法を放ち続ける。
「魔法反射!!」
ラミッタとスフィンは馬車から身を乗り出して魔法を弾き飛ばしていた。
「ははっ、やるねー。ますます殺しておかなきゃダメだね」
ミネスはニヤリと笑う。
「この状況。どうするラミッタ!? 私達で足止めするか!?」
「敵の狙いはスフィン将軍よ!! 足止めよりも一緒に走って将軍を守ったほうが良いわ!!」
「あぁ、わかった!!」