賢者様
うーんとマッサは腕を組んで唸る。
「ともかく、こんな所で話していても埒が明かない。俺の住む街まで行こう」
マッサの言う通りだったので、スフィンは了承し、森を歩いた。
その間、マッサはスフィンを軽く口説いていたが、全てスルーされる。
「ここが聖域の街『チター』だ!」
街と言うには寂れたそこを、誇らしげにマッサは紹介する。
「つっても、魔物の活性化と、信仰心の薄れで最近あんまり人は来ないけどな」
「そうなのか」
街に入り、とある宿屋へ向かう。
「ここ、俺の実家!」
ドアを開けて中へと入るマッサ。スフィンもそれに続く。
「おかえりマッサ……。って、そっちの美人さんは?」
「よう姉ちゃん。森で運命的な出会いをした将軍様だ」
「まーた、適当なこと言って……。はじめまして、支配人の『ネーア』と申します。お客様ですかね?」
「いえ、私は……」
そこで森で起きたことを話すマッサとスフィン。
「なるほど……」
「信じられない話だろうが信じて欲しい」
「えぇ、信じますわ。それでは賢者様に聞いてみると良いかもしれません」
「賢者様?」
スフィンはどんな人だろうと一瞬考える。
「賢者様っていうか、スケベじいちゃんだけどな!」
「こら、マッサ。本当のこと言うんじゃないの!」
何だか不安になる会話を聞いたスフィンだったが、ともかく誰でもいいから情報を集めるしか無い。
山の中にある古風な街並みを上へ上へと登っていくと、ぽつんと家があった。
「賢者様ー、マッサだぞー」
ドアをノックすると扉が開き、立派な白いヒゲを蓄えた老人が出迎えてくれる。
「マッサか、聖域の魔物の退治はどうなった? って……」
賢者の目はスフィンの顔へ、胸へ、足へ向かった。
「な、なんだそのべっぴんさんは!?」
「俺の運命の人……かな」
「適当なことを抜かすな」
スフィンは賢者に一礼し、話し始める。
「賢者様とお話は伺っております。私はスフィン・スクと申します」
「おぉ、いかにも私は賢者ミハルです」
ニヤケ顔のミハルはスフィンに手を差し出し、握手を交わした。
「お嬢さん、いや、スフィンさん。中でお茶でもいかがですかな?」
「はい。それでは……」
家の中で茶を出されたスフィンとマッサ。
緑色の茶は中々の美味で、スフィンは思わず目を閉じる。
「それで、何の用ですかな」
「えぇ、実は……」
スフィンはかいつまんで今起きている状況を話した。