終決
「あらら、やられちゃった」
ミネスはやれやれといったポーズを取って呆れて言う。
「ダメだよクラム。油断一秒怪我一生って言うじゃない? あ、もう聞こえていないかな?」
「仲間がやられたってのに随分と悠長だな」
マルクエンは剣を空飛ぶミネスに向けて言う。
「クラムは脳筋だったし、仕方ないかなー」
「次はあんたの番よ、覚悟しなさい」
「おぉ、こわいこわい。それじゃ逃げちゃおうかな?」
ミネスがジャグリングの玉をそこら中へ投げると、激しい音と共に閃光が視界を塞ぐ。
思わず眩しさで目を覆うマルクエン。
ラミッタは魔法でどうにかしているのか、平気そうだ。
逃げるミネスの後をついて行こうとするが、その速さに追いつけず、途中で諦めた。
「逃がしたわね……」
「あぁ、だが魔人は一人討伐できた」
魔人が去り、静けさを取り戻した村。
セロラはコラーの見舞いをしていたが、浮かない顔をしていた。
「セロラ、どうしたんだ?」
「私、もっと強くなりたい……」
「……。どうして?」
尋ねられると、セロラは耳をしゅんと垂れ下げたまま答える。
「強くないと生きていけない。それに、私、強くなかったら必要じゃない」
そう言って涙目になるセロラ。
「私が弱いせいでコラーを怪我させた」
「違う、これは俺のせいだ」
「だって……」
コラーは少し黙ってから、話し始める。
「俺も強くなりたい……。マルクエン様とラミッタ様を見て思ったんだ。誰かを、村の皆を、セロラも、守れるようになりたいって」
「私も?」
コラーは見つめられ、赤面して言う。
「あぁ、セロラは大事な仲間だからな!!」
そこまで言われ、セロラは色々な感情により、涙を抑えきれなくなった。
魔人襲撃からの翌日。昨日の英雄達は日が昇っても眠っている。
「おはようございます。マルクエン様」
宿屋の女将に部屋をノックされ、ようやく目を覚ました。
ラミッタも同じ様で、眠たげにあくびをしながら部屋から出てくる。
王都からの使者が戻るまで時間があるので、マルクエン達は村の復興を手伝うことにした。
「そんな、勇者様に仕事なんてさせられませんよ!!」
「いいえ、暇ですし、好きでやっていることなので」
マルクエンはコラーの言葉も気にせず、倒壊した建物の修理を手伝う。
空を飛べるラミッタは屋根へ荷物を運ぶのに大助かりで、マルクエンも信じられない重さの物を持てるので、皆が驚いていた。
「マルクエン様、本当にこんなお昼で良いんですか?」
「美味しそうじゃないですか! イタダキマス!」
昼になり、マルクエンは米と塩だけのシンプルなオニギリを美味しそうに食べる。