表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
別の形で会い直した宿敵が結婚を迫って来たんだが  作者: まっど↑きみはる
修行
156/268

眠るエン

「光の刃も、その青いオーラも。膨大な魔力を使う」


 普段から身体強化の魔法を使っているマルクエンですら。戦い続けると、動力が切れたかのように、こうなってしまうようだ。


「お話になりませんね。今日はここまでです」


「も、申し訳ない」


 指の一本も動かせないマルクエンは蚊の鳴くような声で言った。


「私は行きます。しばらくそこで反省なさい」


 ヴィシソワはどこかへ飛び去ってしまう。マルクエンは未熟さと惨めさを感じながらうつ伏せに地面に横たわっていた。


 昼前に魔力を(ほとん)ど使ってしまったとは言え、屈辱的だ。情けなさを感じる。


「宿敵!! 居るの!?」


 声が聞こえる。ラミッタだ。


「宿敵!!」


 一歩一歩階段を降り、闘技場の中で倒れているマルクエンを見ると、ラミッタは駆け寄ろうとした。


 だが、上手く体が動かず、つまずいて転んでしまう。


「ラミッタ!? 大丈夫か!?」


 姿はうつ伏せになっているので見えないが、大きな音は聞こえた。


 だが、マルクエンの絞り出した声はラミッタに聞こえていないようだ。


 立ち上がり、ラミッタはマルクエンの元までやって来る。


「宿敵!! 無事なの!? 宿敵!?」


「あぁ、大丈夫だ」


「何が大丈夫なのよ!!」


 マルクエンの弱々しい声を聞いて、ラミッタはそう言う。


「魔力切れだ。情けない」


「……。情けなくなんか無いわ。本当に情けないのは気を失っていた私よ」


「ラミッタ……」


 マルクエンを担いで部屋に連れて行こうとするラミッタだったが。今は引きずる元気すら無い。


「ラミッタ。大丈夫だ。動けるようになったら部屋に戻る」


 そんな言葉を聞いているのかいないのか、ラミッタはマルクエンを横から押して、やっとの思いで仰向けにさせる。


 上半身を起こさせ、頭の下に自分の膝を滑り込ませた。


 マルクエンはラミッタの顔が見えた。優しそうな、泣きそうな表情をしている。


「ラミッタ……?」


 マルクエンは今、ラミッタに膝枕をされている。


「ラミッタ。お前が大変だろう。私は大丈夫だから……」


「うるさい」


 ラミッタの膝は、暖かくて柔らかくて、優しさに包まれている気分だ。


 何だか心地の良い匂いまでする気がする。


「何だか、心地よくてこのまま寝てしまいそうだ」


 ハハッと力なくマルクエンが笑うとラミッタはそっぽを向く。


「……いいから」


「ん?」


「寝ても……、いいから」


 マルクエンは仰向けでラミッタの顔を見ながら言う。


「そうだな、子守唄でも欲しい所だな」


 ラミッタは何かを考えてから。


「地に生まれし 愛しき我が子よ」


 歌を歌い始めた。マルクエンは驚いて目を丸くする。


「ら、ラミッタ!?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ