知らんな
「宿敵、なにそれは」
「いや、私も知らん……」
「知らんって……。それが宿敵が得た能力なのかしら」
辺り一面には狼型の魔物の死体だらけだ。
「とりあえず。ギルドに報告かしら?」
「あぁ、そうだな……」
ギルドへと戻った二人は先程のことを報告することにした。
順番が来たので、受付嬢と話をする。
「お待たせ致しました!」
「クエストを受けたの者なのですが」
ギルドの身分証を提示してマルクエンが言う。
「えーっと、マルクエンさん! クエストは無事終わりましたか?」
「はい、終わったことには終わったのですが……。その、魔人に襲撃をされまして」
マルクエンが言った瞬間。受付嬢が笑顔のまま四秒ほど固まった。
「ま、ままま、魔人ですか!?」
大声を出すので、ギルド中の注目がこちらへと向けられる。
「え、えぇまぁはい」
「な、何故魔人だと分かったのですか!?」
「以前も戦ったことがありまして。ミネスという魔人です」
「以前戦ったァ!? じょ、冗談ですよね?」
そこで別の受付嬢がやって来た。
「この方達は、龍殺しのパーティのマルクエンさんとラミッタさんよ」
「龍殺しィ!? ですか!?」
「え、えぇ、そう呼ばれているらしいですね」
注目を受けている恥ずかしさでマルクエンは顔を赤くして頭をかく。
「なるほど、犬型から狼型の群れになって、討伐は終わったと……」
だいぶ落ち着いてきた受付嬢は状況を理解したようだ。
「大変でしたね。ともかく、お怪我が無くて何よりです」
マルクエンとラミッタは報奨金を貰って視線を感じるギルド内を後にした。
「何かお腹すいたわね。何か食べていきましょうか?」
「あぁ。だが、マスカルさんに魔人が現れた事を報告しなくては」
「報告しなくてはって言ったって、どこに居るか知っているの?」
「あっ……」
そう言えばどこに居るのか聞いていなかったなと思うマルクエン。
「夜になれば会えるんだし、先に何か食べましょう」
「そうだな……」
飲食店通りまで足を伸ばす二人。色々な料理屋があって目移りしてしまう。
「何系が食べたいとかある?」
「パスタが久しぶりに食べたいな」
「パスタか……。まぁいいわ。それにしましょう」
自分の提案にすんなり乗っかるラミッタに、何だかマルクエンは違和感を覚えた。
「随分と素直じゃないか?」
「別に、疲れているだけよ」
ラミッタはキッと睨んで言う。あぁ、いつものラミッタだなと安心するマルクエン。