空中戦
「宿敵!! 魔人よ!!」
「なんだって!?」
マルクエンは空を見上げる。遥か彼方からやって来た人影は、頭上で止まった。
「はぁーい、ハローハロー!!」
「貴様は確か……」
奇術師の格好をした魔人を見てマルクエンは名を思い出そうとする。
「僕の名前忘れちゃったの!? ひどーい!! ミネスだよミーネースー!!」
「心配しないで。もう名前なんて必要ないようにしてあげるわ」
ラミッタは空を飛び、ミネスを斬りつけようと近付く。
「えっ!? ちょっと待って!? キミ、飛べるの!?」
不意を突かれて慌てるミネス。ラミッタの奇襲攻撃が決まりそうだったが。
「危ない危ない」
魔法の防御壁を貼ってから、身をひらりと躱すミネス。
ラミッタは空を飛べるようになって日が浅い。まだまだ相手の動きについて行けていないみたいだ。
「っく、このっ!!」
ミネスは俊敏な動きで空を飛んで、ひらひらと手を振って挑発までしている。
ラミッタはと言うと、ミネスの半分程度の速度しか出ていなかった。
「あーそうそう。マルクエンくんだっけ? キミも退屈しないようにしておいたからさ」
そう言われて辺りを見るマルクエン。
犬型の魔物……。というよりは、大きな狼のような魔物に取り囲まれていた。
おそらくミネスが魔物の群れに何か細工をしたのだろう。
「お気遣いありがとう。これで退屈せずに済む」
マルクエンはニッと笑い、剣を構えて周囲を囲む狼の魔物と対峙した。
先鋒らしき数匹がマルクエン目掛けて飛びかかる。
重心を低くし、マルクエンは踏み込んだ。次々に狼の魔物を斬り捨て、逆に群れへと飛びかかった。
胴体から真っ二つにし、突いて串刺しにし、魔物を蹴散らしていく。
「それじゃ、キミは僕と遊ぼうか」
ミネスはボールを取り出してジャグリングを始める。
「出た、ダサい技」
「なっ、ダサいって言うな!! マーダージャグリング!!!」
ボールからは水と雷が飛び出し、ラミッタを襲う。
雷の魔法は方向を定めるのが難しい。それを補うために、水に雷を伝わせて、威力と命中精度を上げているのだ。
「魔人のくせに、基礎みたいな魔法の使い方するのね」
「しらないの? 極めたら一番シンプルな事が強いんだよ?」
「あら、それには同意するわ」
ならばお返しは避雷針代わりの氷魔法を辺りに散らばらせる事だ。
水と雷はラミッタから逸れて、周りに着弾する。
ラミッタは背後に魔法の防御壁を展開し、それを蹴って勢いを付けた。