座学
「よし、揃ったわね! それじゃ今日も楽しい特訓よ!」
ホテルのロビーでマルクエンと合流すると、開口一番にラミッタが言う。
「が、頑張るっす!!」
「私もやります!!」
やる気はあるみたいだが、二人共顔から疲労が隠せていない。
「うむ、やる気はよしだけどー……」
ラミッタは真面目な顔をする。
「無理な時は無理って言う事、そうしないと命を落とすわよ?」
そこまで言って笑顔を作った。
「まぁ、たまには無理しないといけない時もあるけどね?」
「それは置いといてだな。お二人共どうです? 昨日の今日で辛くはありませんか?」
マルクエンに尋ねられると、ケイは情けなさそうに話す。
「うー……。正直、腕は痛いしプルップルっスー」
「私も、ちょっと疲れてて……」
シヘンも正直に今の体調を答える。それを聞いてラミッタは頷いた。
「正直でよろしい! それじゃ今日は座学をやっていきましょうか」
ラミッタはシヘンとケイを座らせ、火、水、雷、風、光に闇とありとあらゆる魔法を披露する。
まるで曲芸の様に披露されるそれを非現実が起きているように眺めていた。
途中、いつの間にか野次馬の見物人まで現れだす始末だ。
「ざっとこんなもんよ、魔法ってのはここまで出来るってわけ」
「何か凄すぎて、実感が湧かないですね」
「私もっス……」
ラミッタはそんな二人を見て笑っていた。
「いずれ、出来る様になるわ。っていうか、なって貰わなくちゃ困るわよ?」
「が、頑張ります!!」
「さて、宿敵は何を面白いもの見せてくれるのかしらね?」
そう言われマルクエンはうーむと悩む。
「演舞だったら見せられるが、実戦向きかと言うとそうではないぞ?」
「まぁいいからやってみなさい」
マルクエンは「わかった」と言い、十分に距離を取ると、一礼し目にも留まらぬ速さで抜剣する。
大剣を棒切れのように軽々と回し、見えない敵を斬り伏せるマルクエン。
一通り終えると、また一礼し、シヘンとケイだけでなく、見物人からも拍手が起こった。
「いつの間にか見物人が増えているな」
マルクエンは照れながら言う。
「まぁ良いわ。それじゃ二人に質問でもしましょうかしら?」
「な、何スか!?」
ケイは何を聞かれるのだろうと身構える。
「戦いにおいて、大事なことって何かしら?」
「戦い……。っスか?」
ラミッタは二人に考えさせる。先に答えたのはシヘンだった。
「相手の弱点を突く……。みたいな?」
「それも正しくはあるわ」