1.コイハジマリ
「好きです付き合ってくださいっ」
——————————え?
ずっと嫌われていると思っていたおなじクラスの子に告られた。
あまり目立つタイプではないようなメガネをかけた女の子。
目が合うたび逸されるし、話しかけても無視される。絶対嫌われていると思っていたが…
不思議と彼女の声は心に響き、あまり口を開かない彼女の声は久しぶりだった。
久々且つ透き通った綺麗な声で思わず聞き惚れてしまう
告白など縁遠い俺はいきなりのことに固まってしまった。
胸がドクッ、ドクッ、力強く血液を流している感じがする。そんな中でも案外、頭は
クリアで、半開きになった教室のロッカーや六時半くらいだろうか、長針と短針が重
なるのが見える。
そんなことを考えながら、固く閉じていた口を開ける。
「まだ出会って日も浅いし、楠木さんのことあんまり知らないからごめんね」
自分なりの精一杯の返事をした
高校入学から約三ヶ月が経ち、最初の定期テストを終え、やっと一息。
テスト期間なので、十二時に終業のチャイムがなり教室は緊張から解放され放課後の
雰囲気になっていく。この感覚がなんとなく好きだ。腹の虫がなく。
「楠木―、放課後ひまか?」
ビクッ、と驚いたようにこっちを向く
「小木曽くん、ひまだけど…」
リュックの中に教科書を入れながら、返事をしている。そんなに教科書を持って帰っ
て家で勉強するのだろうか。
「どっかに軽く食べ行かないか、今日昼飯なくてさ」
「あー、いいよ私もないし」
どこに食べにいくか話しながら教室を抜け、校門をくぐり、学校を後にした。
告白を受けてから約二ヶ月、自分が振ったことで空気が悪くなることを危惧し、自分
から喋りかけることを徹底し、話をしていくうちに趣味が合うことがわかり、意気投合した
そして、放課後に一緒に帰るような仲になった。