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命のやりとり

[田中 健斗]


「なっ!!」


俺の目に映ったのは、壁の近くで座り頭を抱え込んでいる渡辺と反対側の壁の近くで倒れている須藤。

気付いてしまった。

俺の親友がこの場にいないことに。


「あ、天音は?」

「........」


肩を小刻みに震わせながら自分の膝に顔をうずめている渡辺に近づき


「おい!!天音はどこだよ!!」

「........」

「おい聞いてんのかよ渡辺!!」


胸倉を掴み顔を上げさせる。

渡辺の顔色は酷く、いつものヘラヘラ顔ではなかった。


(.....なんだよ、俺が悪いやつみたいじゃねぇか..)


田中は掴んでいた胸倉から手を放し、心の中でごちる。

いつまで経っても戻ってこない天音達を探しに聖騎士団数名と聖騎士長ロベルトさんが見に行くことになり、無茶を言って自分も同行させてもらった。


「田中君」

「...ロベルトさん」

「渡辺君からは私がしっかり聞いておくから須藤君を運ぶのを手伝ってくれないか」

「...はい」


正直、天音のことをいじめていたやつを運ぶ気にはならなかったが自分のすべきことがそれ以外で見つからなかったため渋々手伝う。


「天音....」


――どこに行ったんだよ。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

[天音 優]


目が覚めた。

夢の時とは違い今回の精神世界での出来事はしっかりと覚えていた。


「いたっ!」


起き上がろうとして頭を打つ。

そこはまだ狭い通路だということに気が付く。


目の前にある空洞内に入り、目にしたものは


「ヒッ...」


空洞の壁を背にし、肩身を寄せ合っている人。

否、骸骨が居た。

かつてこのボス部屋に入り、先程の熊に勝てず、偶然見つけたこの空洞で助けを待ち続けた人たちなのだろう。

闇魔法に体を修復してもらったが肝心な体力面や精神面では回復できておらず心身共に疲れていた。

なので今は骸骨を気にする気力はなく、骸骨とは反対方向に視線を向けて地面に寝ころぶ。


「....【闇魔法】」


気を紛らわせるために闇魔法を呼ぶ。

すると脳内で声が響く。


【お呼びでしょうか】

「ここに、助け..が来ると思う..?」

【落ちる原因となった映像とこの空洞にある骸達を見る限り可能性は低いと思います】

「い、いや...そ、それでも。友達...田中君とかロベルトさんが助けに来てくれる.....はず」

【.........】

――きっと大丈夫

そう思っていると【メア】が会話に割り込んでくる。


『来ないに決まってるじゃん~~天音~~』

「なんでそんなこと言い切れるんだよ」

『天音自身が一番分かってる癖に♪』


メアの言う通り、分かっていた。

助けが来ないことなんて。

なんせ、王城にある書庫で事前に大迷宮のことは調べていたからだ。

そしてその書庫内に壁の中に空洞がある仕掛けなんて文献出てこなかったんだから。

それでも。

それでも。

信じないと心が壊れてしまう気がした。


『信じるのは別に良いけどさぁ~私お腹空いたんだけど』


僕とメアは感覚がリンクしている。

そしてこのリンクは切り離すことは出来ないらしい。


「食べ物なんて...あっ」

『思い出したぁ?アイテムBoxに肉入れてたでしょ~~』

「.......ぐぅぅ」


食べる気にはなれなかったが...意識しだすとお腹が鳴る。

そしてその肉をちまちま食べながら助けを待つ日々が始まる。


[2日目]


「【闇魔法】」

【お呼びでしょうか】

「僕の助け、来ると思う?」

【可能性は低いと思います】

「....何日経った」

【2日経ちました】

「そう....」


3本あった骨付き肉が1本無くなる。


[5日目]


「【闇魔法】」

【お呼びでしょうか】

「僕の助け、来ると思うか?」

【可能性は低いと思います】


2本あった骨付き肉が1本無くなる。


[9日目]


(なんでなんで助けが来ないんだ)

(捨てられたのか...いや田中君がロベルトさんへの説得が長引いてるだけなんじゃ)

(それとも助けが来れない場所まで落ちたってことなのか....)

(もしこれが勇者や聖女だったら助けに来たに違いない)

(僕だから?僕だから捨てられたのか?)

(弱いから?)

(僕なんて必要ないから?)

(一人ぐらいかけても問題ないってこと?)


カランカランッ


顔を上げる寄り添いあっていた片方の骸骨の頭が落ちる。

寄り添いあう骸骨を見ていると段々と心が冷める。

心の中にある光が、灯が消えそうになる。


(あぁ、僕もこうなるんだ)


「ブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツ」



[11日目]


遂に食料が無くなる。


天音はゆっくりと立ち上がる。

かつての優しい目は消え去り今は血に飢えた獣のような獰猛さがあった。


「【闇魔法】」

【お呼びでしょうか】

()()()()()、来ると思うか?」

【可能性は低いと思います】

「だよな」




「闇魔法、俺はあいつに勝てると思うか?」

【おそらく可能性は低いと思います】

「絶対に勝てないとは言わないんだな?」

【はい】

「【メア】」

「はぁ~~い、どうしたの天音~どうせなら精神世界で名前呼んでよぉ~」

「お前に明け渡す身体なんてないから」


口調もかつての天音とは違う。

目つきもかつての天音とは違う。

生きるために。

生き残るために変わった。

否、戻った。

生き残るために、親を殺した頃の天音に。


「闇魔法、メア」

「あいつを狩るぞ」


口角を吊り上げ笑う天音の顔を見た者は誰一人として居なかった。






「とは息巻いたけどな~」


現状レベルが低く圧倒的にステータスで()()()()()()に負けていた。

ちなみにデビルベアーと名付けたのは天音である。


少し変化が起きていた自分のステータスを見ながら作戦を考える。



・‥…━…‥・‥…━…‥・‥…━・‥…━…‥・‥…━…‥・‥…━


天音 優 男 人間 Lv,2


ジョブ「   」


MP:50(+200)


筋力:30


防力:100


体力:35


敏捷:95


魔力:35


スキル:言語理解lv1・短剣術lv,1・闇魔法lv,2(+1up)・青魔法lv,1・風魔法lv,2・光魔法lv,1・アイテムboxlv,2(+1up)・物理耐性lv,2・魔法耐性lv1・危機察知lv.3・偽装lv,3・混合魔法【クリーン】


固有アビリティ:与えられし心臓・二面性【メア】(NEW)


・‥…━…‥・‥…━…‥・‥…━・‥…━…‥・‥…━…‥・‥…━


闇魔法とアイテムBoxのレベルが上がっている。

(使ってたからだろうな~)

どうするかを考えていると一日が終わった。


そして....




「グルルルルルルルルル」

「よぉ、そろそろこっちも腹が減ってきてよ~」


穴から這い出てた天音はデビルベアーの前に姿を現し


「お前も俺のことを食おうとしたんだ。食ってもいいよな??」

『グガアァァアアアァァアアアア!!!』


宣戦布告をしたのち強者だけが残れる世界に天音は足を踏み入れる。


              「【闇魔法展開】」


闇魔法のモヤをわざとデビルベアーの周りに展開する。

俺は落としていた短剣を拾うために全力で短剣まで駆ける。


「グガアァアァアア!!!!」

「チッ、鼻が良いこって!」


天音が走っている途中でモヤから抜け出してきたデビルベアーが前に立ちはだかる。


「【マスター。デビルベアーは鼻や目ではなく2本の角で反応しています】」

「へぇ! っっ!!!【闇魔法】!!!」


そう叫ぶだけで俺の意図を読み取りデビルベアーの横なぎ払いに対する防御を張る。

俺とデビルベアーのなぎ払いの間に入る濃いモヤが衝撃を緩和してくれる。


「ぐぅっ!!」


それでも吹き飛ばされる。

ただのなぎ払いに対しても避けることは出来ずに闇魔法に頼らないと防ぎきれない。

口から血が垂れる。

闇魔法は万能ではあるが完全ではない。

主である俺が使いこなせていないってのもあるが...

今のなぎ払いに対しても衝撃を緩和させるだけでしっかりとダメージは通る。


「短剣拾わせてくんねぇかな」

「グルルルルルルル」

「......【闇魔法】作戦通りに行くぞ」

「【スモーク】」


濃い煙が天音を中心に展開する。

部屋中に煙が立ち込める。

そしてそそ煙の中で動いた影をデビルベアーは見逃さなかった。

その短剣に向かって走る影に大振りのなぎ払いをお見舞いする。

が、デビルベアーの手には確かな感触は無く


「残念でした」


デビルベアーの背後を取っていた天音は角目掛けて手刀を打ち込む。

そして角に手が触れる瞬間に


「【ウィンドウカッター】」

「グルアアァァアアアアア!!!!」


手刀で切れた角を拾い上げ後方に放り投げる。

デビルベアーの魔力感知能力はこれで使えなくなりここからは一方的な狩りとなった。

煙の中で潜む天音の本物と偽物がデビルベアーを惑わし、あらゆる角度から【ウィンドウカッター】がデビルベアー目掛けて飛んでいく。

勿論、圧倒的なステータス差を埋めれたわけではなく、天音の魔力値では致命傷を負わせることが出来ない。

遂に激怒したデビルベアーが暴れ始める。

腕を振り回し、周りの【スモーク】が晴れていく。

そして。

煙が晴れた瞬間に全力で飛び出してきた天音はデビルベアーの首にある切り傷に手を当て


「じゃあな熊野郎【ウィンドウカッター】」


キィン


風が鳴る。

そして


ドサッ


デビルベアーの首が落ち、低レベルながらも勝ち星を上げた天音が、落ちた首を見下ろしながら立っていた。

この日、大迷宮フロアボス最高突破記録が更新されたことは、今の天音しか知らない事実だった。


[戦闘が起こる数分前]


『天音そんなのほんとに使えるのぉ~』

「あぁ、これがないと絶対勝てない」


天音の目の前に立つモヤ。

一度天音にモヤを纏わせて形を覚えさせてそれを闇魔法が動かすと言ったものだった。

ただこれはスキルではないため一々纏わせないと出来ないことで、そのための時間を作るために本来の闇魔法で使える【スモーク】を覚えることにしたのだ。

これに関しては【闇魔法展開】でしていたこととあまり変わりはなくイメージしやすかったのですぐに覚えることが出来た。

ちなみに自分の中にある闇を闇魔法は操るため、【闇魔法展開】を全力ですると他の機能を使うことができなくなるらしく闇魔法本人も【スモーク】を覚えてもらえると嬉しいですとのことだった。

そしてその【スモーク】内であらゆる角度から()()()()()【ウィンドウカッター】を飛ばし、最後の一撃はゼロ距離【ウィンドウカッター】で仕留める作戦を立てていた。






「あぁぁ~~~疲れた~~」



部屋の端には下に降りる階段が出現していた。

ボスを倒すと現れるのだろう。

ここで気が付く。

ここは誰も到達したことのないフロアボスなのだと。

降りるための階段がないことに初めから気が付いていたらもっと心が折れていたかもしれないと。

そしてステータスを確認し確信する。



     もう一方的に生殺与奪の権を相手に握られる弱者ではなくなったのだと。



・‥…━…‥・‥…━…‥・‥…━・‥…━…‥・‥…━…‥・‥…━


天音 優 男 人間 Lv,40(+37up)


ジョブ「   」


MP:1900(+200)(+1850up)


筋力:585(+555up)


防力:3800(+3700up)


体力:1330(+1295up)


敏捷:3610(+3515up)


魔力:1330(+1295up)


スキル:言語理解lv,1・短剣術lv,1・闇魔法lv,3(+1up)・青魔法lv,1・風魔法lv,3(+1up)・光魔法lv,1・アイテムboxlv,2・物理耐性lv,3(+1up)・魔法耐性lv1・危機察知lv.3・偽装lv,3・混合魔法【クリーン】・魔力感知lv,1(NEW)身体操作lv,1(NEW)


固有アビリティ:与えられし心臓・二面性【メア】


・‥…━…‥・‥…━…‥・‥…━・‥…━…‥・‥…━…‥・‥…━


そして、デビルベアーの死体に背を預けて眠りにつく。

評価が増えると投稿スピードが上がるかもです。


次の話が気になる又はいいなと思った方が居たら【評価】と【ブクマ】をお願いします。


下部の星マークで評価出来ますので!


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