刻まれた恐怖と精神世界
[天音 優]
またあの空間。
周囲は真っ暗。
そして自分は白い椅子に....
「あれっ」
白では無くグレーの椅子に座っていた。
(色なんてどうでもいいか...僕、どうなったんだろ)
コツコツコツコツ
顔を上げる。
目の前にいたのはもう一人の自分。
ではなく黒髪ロングの知らない女性だった。
漆黒のドレスを見に纏い、よくわからない状況でも綺麗だと思ってしまった。
目が合う。
するとその女性は僕の前にしゃがみ、片膝をつく。
【ようやくこうしてマスターの前に姿を現すことが出来ました】
目の前の女性の口から聞こえた声。
この無機質な声は少し聞き覚えがあった。
「え、と、...マスター??」
【はい。あなたは私のマスターです。マスター今は少し時間がありません。なので今ではなく後でゆっくりお話しましょう....】
目の前の女性が喋り終わると急に眠気が襲ってくる。
そして眠りに落ちるときにこんな言葉が聞こえた気がした。
【逃げてください】
と。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
グチャグチャ....
バキバキボキボキ...
グルルルルルルルル...
「んっ..??」
洞窟のようで1層2層とは違う薄暗い場所で目が覚めた。
壁を背に寝ていたらしい。
壁には緑色の鉱石が埋め込まれておりそれが光源となり部屋に明かりをわずかに灯していた。
グチャグチャ....
バキバキボキボキ...
ズボンに何かが付着していた。
気持ち悪い肉片が.....
目の前には何かを食している熊がいた。
普通の熊より一回りデカく頭に2本の角を生やした熊がいた。
その熊は食事に夢中なのか僕の方には向かずに何かを貪っている。
ふと足元を見ると何かが転がっていた。
「えっ」
その何かと目が合う。
その目にすでにハイライトは無く瞬きもしない。
本田の首だった。
理解したくないのに理解してしまった。
目の前の熊が食しているのは本田なんだと。
どうしてここにいるのかも、どうして本田が食べられているのかも、分からない。
身体が震える。
横に落ちている短剣を拾い上げ
「あぁ、ああぁ」
カランカランッ
短剣を落とし音を鳴らしてしまう。
その音で熊はこちらを向き、食べていた本田の死体を後方に放り投げた後
『グガアァァアアアァァアアアア!!!』
「ヒッ...」
動けなかった。
立ち上がらないと...逃げないといけないのに。
熊が物凄いスピードで近づいてくる。
逃げることが出来なかった天音の身体を熊は片手で掴み上げる。
掴み上げた腕を振りかぶり、天音は後方の壁に叩きつけられる。
「がはっ」
壁に叩きつけられた衝撃で骨が折れる。
左腕が完璧に動かない。
熊はゆっくり近づいてくる。
このまま食われると思った。
体の震えが一向に収まらない。
『グガアァァアアアァァアアアア!!!!!』
熊が教えてくれる。
弱いやつは食われ強いやつが最後に残る、と。
そんな中、投げつけられた壁の近くに小さな穴を見つける。
人1人がほふく前進でギリギリ入れる穴が...
その穴を見た瞬間に足が動いた。
必死だった。
無我夢中でその穴に向かって走り出す。
(食べられたくない食べられたくない食べられたくない)
(死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない)
危機察知が反応する。
振り返ると熊が片腕を上げ、鋭い爪で俺を切り裂こうとしていた。
「く、くるなぁぁぁぁあああああ!!!」
「【ウィンドウカッター】!!【ウィンドウカッター】!!【ウィンドウカッター】!!」
胴体と顔に向けて放った【ウィンドウカッター】。
胴体に放った【ウィンドウカッター】は、片腕で簡単に弾かれてしまう。
ただ、幸運なことに三発目の【ウィンドウカッター】は目に当たり熊の足止めを成功する。
熊が片目を抑えながら吠えている隙にほふく前進で穴の中に入る。
片腕が垂れて上手く前進することが出来なかったが、それでも必死に前に前にと進んでいく。
『グガアァァアアアァァアアアア!!!!!』
熊が穴の前にたどり着き必死に腕で穴を掘り僕を捕まえようとする。
もっと奥に奥にと体に走りわたる痛みを無視して進む。
そして少し先に空洞を見つける。
(あと少しあと少し!!)
目の前が歪み始める。
(あ...と少し...)
身体が先に限界を迎え、その空洞の手前で力尽きる。
「やぁ、天音。散々な目にあってたね~?」
「........」
「どうしたんだよ~~そんなに体震えさせてさぁ」
にやけ面の僕が目の前にいた。
だけどもうそんなことはどうでもよかった。
今はあの熊の目が忘れられない。
あんな視線を向けられて怯えない方が難しいだろ、と心の中でごちる。
いきなり目の前にいたもう一人の天音 優が指を鳴らす。
すると場所が変わり移動した場所は映画館だった。
顔を上げる。
目の前にあるスクリーンには先ほどの天音視点の映像が流れていた。
「こんな怪物が現れたんだから怯えるのは仕方ないよぉ~」
「........」
「楽になりたいかい?」
「........」
「楽になりたいなら【メア】って言ってくれたらすご~く楽になれるよっ」
もうよくわからなかった。
目の前にいる僕が言っていることの何もかもが。
でも、それで楽になれるのならと...
「【メ...】」
横から手で口を優しく押えられた。
いつの間にか隣に見覚えのある女性が座っていた。
「チッ、出たよ出たよ~あと少しだったのにぃ」
【マスター。その先を言ってはいけません】
「..あなたは....」
【私はマスターの闇魔法です。すいません。今は真名をお答えすることは出来ません】
「........」
意味が分からない、と声を漏らすと闇魔法が丁寧な口調でいろいろと説明してくれた。
自分が気絶してから何が起こったのかや【メア】が自我を持った理由も。
【すいませんマスター。ここまで自我が強い人格がすでに居たとは知らずに【二面性】を発動させてしまって】
「いや、大丈夫だよ。こちらこそ助けてくれてありがとね」
【いえ、マスターをお守りするのが私の存在意義です】
この今いる空間は、天音 優の精神世界だと言う。
そして精神世界に関しての権限は【メア】と【闇魔法】の彼女にあり、天音には無いらしい。
この精神世界で【メア】と声に出して発言してしまうと体の主導権が切り替わると闇魔法は言う。
「あ~あ~バレちゃった~」
「君、性格悪いんだね」
「そりゃそうでしょ」
前のめりになって顔を近づけて目を合わせてくる。
「私は、君の闇そのものなんだからさぁ~そんな私が性格いいと思う?君の闇を強く引き継いだ人格で定着したからこの性格は治らないなぁ~」
「僕の、闇.....」
「引き継いだと言っても天音の闇は消えてないよぉ~~」
僕の闇...それは目の前のスクリーンで流れている映像が物語っている。
「それにしても私はここのシーンが大好きだなぁ」
そこに映っているのは僕が須藤君に向かって吐いた言葉がループで流れていた。
『地獄に落ちて死ね』
言ったのを覚えていないと言ったら噓になる。
そこで右隣に座って目をつぶっていた闇魔法が目を開き、
【マスター。身体の修復終わりました】
「ありがとう」
闇魔法がしていたことに驚くことはなかった。
先程メア視点の戦闘も見させてもらっていたからだ。
それに体が感覚を覚えている気がした。
ただ闇魔法のレベルがまだ低いせいで全ての機能が使えないと発言していた。
「それじゃあ一旦起きるよ」
【はいマスターいつでもお呼びください】
メアの方に視線を向ける。
まだメアには何故乗っ取ろうとするのかとかは聞かなかった。
そして今も楽しそうな顔でスクリーンに映る天音の戦闘シーンを見ていた。
「天音またねぇ~~」
「.......」
何を言えばいいか分からずに意識を現実に戻す。
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