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歩むことをやめない

[精神世界]


『スース―』


寝息が聞こえているシアター内。

天音は現在激しい戦闘を終え、眠りについている。

普段感覚がリンク天音とメアだが天音が寝ている時はメアが寝ることはない。

リンクが繋がったままのせいで体をあまり動かすことができず、気怠い。


「あぁぁ~~【闇魔法】~~天音とのリンク解除できないのぉ~?」

【できたとしてもマスターの命令じゃない限り解除はしません】


闇魔法を呼ぶといつの間にか隣の席に座っていた。

今はスクリーンと天音の目をリンクしているため天音の寝息しか聞こえず、スクリーンに映る映像は真っ暗だ。

天音には睡眠をしっかりしてもらうために精神世界には来ずらいようにしていた。

勿論、闇魔法には内緒で。

なんでそんなことをしたかというと闇魔法と話がしたかったからだ。

真剣な話を...


「闇魔法ってさぁ~ほんとは何者なのかなぁ~」

【.........私は私です】

「そゆこと聞いてるんじゃないんだよねぇ~ちなみにもし僕の天音に手出す感じならさぁ~」


「消えてくんないかな」


怒気を含んだ声。

目が笑っていなかった。

いつものヘラヘラした雰囲気は消えており、確かな圧を感じる。


「天音を乗っ取る気なら許さないよ?なんてたって僕の天音だからねぇ~乗っ取るのは僕だよ」

【乗っ取るつもりはないです。私はマスターと共に生涯を歩んでいくと決めています】

「そこがよく分からないんだよね~僕よりも後に天音の中に入ってきたくせにいきなりそんなことを言ってもさぁ~」

【私自身分からないことが多いんです】

【ですが、レベルが上がるたびに私が何なのかが分かってきているんです...】


闇魔法のことを見るといつも通りの無表情の中に不安がチラついていた。

今のところ完璧に感情がないといった感じではなさそうだ。


「ふ~ん?まぁなんでもいいけどねぇ~」


話が終わったタイミングで目の前のスクリーンから光が差し込む。

天音が起きたことによって映像がボスフロアの景色に変わっていた。


「さてっどうせ寂しがりな天音ちゃんは僕たちのことをすぐ呼んでくるだろうねぇ~~」


先程の雰囲気は消えており、いつものヘラヘラ顔に戻っていた。

闇魔法自身もメアに対して思うことはある。

――なぜ乗っ取ろうとするのか

その理由を闇魔法や天音が知ることになるのはまだ先の話。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

[天音 優]


「ふわぁぁ~よく寝た」


起き上がろうとした瞬間、背中にビリビリッとした感覚があり背中に目を向けるとそこにはデビルベアーの死体があった。

ただそれだけなのにまるで、まだデビルベアーがまだ生きているかのように感じる。


「【闇魔法】」

【はい】

「こいつから発せられているものが何かわかるか」

【はい。マスターは新しいスキル、魔力感知を獲得しておりますのでデビルベアーの体内にある魔石の魔力に反応しているのではないかと思います】


ヴィン


手の上にステータスプレートを出す。

レベルやステータス値の内容に少し驚きつつも「そういえば、眠る前に見ていたな」と思い出す。


「これだけステータスが爆上がるするってことは...」


転がっているデビルベアーの死体を見る。

死体を見る限り首元以外には傷がついていなかったのだ。

首以外にも攻撃を当てていたのにだ。

元々俺が勝てるような相手ではなかったってことを表していた。

闇魔法が居なければ。

【ウィンドウカッター】が使えていなければ。

もし、MP値がアビリティ補正されていなかったら。

「そんなこと考えても仕方ないか」と思い、魔石について考える。


(今思ったけど魔石って何に使うんだ?)


と考えているとこのダンジョンに潜る前に露店で見た一本の剣を思い出す。


(そういえばあの剣の柄の部分に真っ赤な魔石が埋め込まれていたような..)


そんなことを考えるが、天音自身が剣に細工できるはずもなく、そしてこんな大迷宮の中に鍛冶師がいるはずもなく、一旦魔石のことはアイテムBoxの中に入れようと話を進める。


魔石の魔力反応を辿り、そこに先程拾いに戻った短剣を突き刺し、デビルベアーの胸に穴をあけて取ろうとするが


パキンッ

カランカランッ


「は?」


天音が持つ唯一の武器が折れてしまう。

そして折れた短剣を見ながら頭の中で恐ろしいことを思い描いてしまう。

もし、あのまま短剣を拾い上げ、この短剣で戦おうとしていたならばすぐに短剣がだめになりその隙にやられていたのではないかと。


「はは...こいつが魔力感知持ちで助かった..」


少し気乗りはしなかったが、切れた首に手を突っ込み魔石を取り出す。

肉片や液体が右手と魔石にこびりついていて気持ちが悪かったので綺麗にしようと魔法を唱える。


「【クリーン】」


体にかけた後は魔石にも使い綺麗にする。

紫色の綺麗な魔石でホワイトウルフの魔石と比べると大きさは二回りぐらい大きいが魔力反応で感じ取った魔力量が段違いだった。

この魔石をどうにか使うことが出来ないかと考えていると


【マスター】

「ん?どうした闇魔法」

【マスターが左手に持っている小さい魔石からなら力を吸収できます】

「えっそんなことできたのかよ」

【はい。先の戦いでレベルが上がり魔石吸収ができるようになりました】

「デビルベアーの魔石もできるか?」

【いえ、その魔石を解析、吸収するには私のレベルが足りません】

「まぁ、そんなうまい話はないよな」


だけど、闇魔法のレベルさえあげればもっと強くなれると確信する。

使い道のないと思っていたホワイトウルフの魔石を持っていてよかったと思いながらデビルベアーの魔石はアイテムBoxに入れる。


「魔石を吸収してくれ」

【分かりました】


左手から黒いモヤが溢れ出始め小さい魔石を包み込み左手から魔石が消える。

少し、体から活力が沸き上がるのが分かった。

ステータスを見ると全ての数値が+2されていた。

その他には変化が見られず、スキル獲得はしていなかった。


「こんなもんか」

【はい。このレベルの魔石はこんな感じです】


魔石に関しては一段落するが、一つ重大なことを忘れていた。


ぐぅぅぅぅぅ


そう、食料問題だった。

「お腹すいたぁ~~」と話しかけてくるメアを無視する。

ここは無理してでもデビルベアーの肉を生で食うべきかを悩んでいた。


「闇魔法...火..出せたり」

【できません】

「だよなぁ」


お腹は空いたがまだ我慢できると思ったのでアイテムBox内にデビルベアーの死体を収納してボスフロアから出る。

すぐにでも地上に戻りたかったが下の階層への階段しかなく降りていく。

地上に戻りたい反面、ここでならもっとレベルが上げられるとも思っていた。

とにかく気を散らさずに降り着いたフロアで下への階段を見つけるために歩く。

所々分かれ道があったが適当に選び進む。

やはり一階層とは違い地面もでこぼこしており、周りに明かりもなく緑色の鉱石が少し光っているだけだ。

その明りを頼りに歩いていると魔力感知に引っかかる。


ガシャンガシャン


「黒い鎧に、黒い剣...見えずらいな」


周りの暗闇に溶け込んでいるようにも見える全身黒の鎧を着た魔物と出くわす。

ブラックナイトは天音の前に立ち、型をとっていた。

知能があるのかもしれないと思いこちらも戦闘態勢に入る。

右手には訓練用の短剣の柄が握られていた。

武器を持たない天音が魔物と戦うために歩いている間に考え、編み出した未完成魔法を唱える。


「【ウィンドダガー】」


柄から溢れ出た風の魔力が刃の形に変わる。

ただこの魔法はレベルが足りないのか何もないところから魔力だけで短剣を作ることは出来なかった。

なので刃の部分だけならできるんじゃと思い一応持ってきていた短剣の柄を使って唱えると成功した魔法。否、未完成魔法だった。


「レベルアップした俺がどこまで戦えるようになったか...楽しみだな」


そう言うと天音がその場からブラックナイト目掛けて全力で駆ける。

ブラックナイトは、反応が遅れた様子もなく軽々と剣で受け止めてくる。

が、レベルが上がり魔力値が上がったおかげで魔法の威力も上がっておりブラックナイトが天音の短剣を剣で受け止めるたびに刃が欠ける。


ただ戦闘技術で言えばブラックナイトに軍配が上がる。

なのでブラックナイトも剣が簡単に折れないように受け止めてくる。

3度お互いの剣を打ち合った直後、腹部に強い衝撃を感じる。


「ぐっ」


何をされたのかが一瞬分からなかったが天音がブラックナイトの剣だけに集中しているところを蹴られたと察しが付く。

あばらの骨は折れてないだろうがズキズキと痛む。

休憩させてくれるわけもなくブラックナイトが剣を構えた途端、姿がブレる。

右肩がヒリつく。

この感覚はデビルベアーの死体から感じ取ったヒリつきと同じ感じだった。

その感覚を感じ取った瞬間に暗闇から姿を現すブラックナイト。

間一髪短剣で防ぎ、攻撃に転じようとするが隙がなく防戦一方。

だったがブラックナイトの蹴りを待っていた天音にチャンスが舞い降りる。


「同じ攻撃は二度食わねぇよ!」


蹴りをできるだけ最小限の動きで避けてから足払いをする。

体勢を崩したブラックナイトに全力の一閃。

首を斬り飛ばすと鎧の中から黒いモヤが出始め、中身が消える。

その場に残ったのは、黒い鎧と折れた剣と魔石だけ。

首を斬り飛ばしたときに少し違和感を覚えた。

その違和感は、肉を切ったというよりは魔力を斬ったと言われた方がしっくりくる感触だった。

ただの武器では倒せなかった相手なのかもしれない。

ギリギリではあったもののとにかく勝てた。

下層の魔物にも十分通じるんだ。

勝利を少し噛みしめていると


ガシャンガシャン

ガシャンガシャン


ブラックナイトが二体並んでいた。


「二体か...」


構え直しもう一度唱える。


「【ウィンドダガ―】」


そして天音は敵の生命活動を停止させるために全力で前に跳躍し短剣を振るう。


天音が目の前の敵に集中している中、迷宮最下層で天音を待っている。

否、【闇魔法】【魔夜(まや)】を待つ者、迷宮に選ばれた王が最下層で笑っていた。

評価が増えると投稿スピードが上がるかもです。


次の話が気になる又はいいなと思った方が居たら【評価】と【ブクマ】をお願いします。


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