ミステリアス・キャット
自分で踏み出してみる事だと、花は答えて居る。
予想だに出来無い出来事に遭遇して、心が、折れそうに成った3人だったが、山荷葉に情報を与えられた後に言われた助言を、思い出した。
『もし、迷ったなら、各々の悪魔の囁きの帰趨する処に行って御覧。必要なら案内人を寄越そう。きっと面白い事が起こるから♪』
「悪魔の囁き?帰趨って何だ?」
「う~ん、推測するに、≪個々の悪戯心を擽る所≫って意味じゃ無い?」
「悪戯?」
「例えば、ウチ等に共通する悪戯と言えば?」
「………偽葬殿での所業か!」
「ピンポーン☆」
「流石、全国トップクラスの思考力。」
3人が行動を共にするのは、基本、学校の帰宅時だけ。
其の間にする事と言えば、神様(仮)達が言ってた罪状のみ。
「にゃごーん」
3人の耳が不可思議な声を捉える。
3人が、声のした方を、振り向く。
すると、其処には、黒猫が、居た。
いや、普通の黒猫じゃ、無かった。
なんと、其の風体は、異様だった。
3人は、無言で其の両目を見張る。
本来ならば、動物の毛の、生え具合や色艶の、毛並みしかない筈の背中には、体毛と同じ、真っ黒な鴉揚羽蝶の羽根を、パタパタッ、パタパタッ!と生やして居る。
本来ならば、尻尾が長く生えて居る数は1本だが、どう数えても……、尻尾の数は9本もあり、尻尾の形は、黒狐の尻尾みたいで、其処には、沢山の鈴達が散りばめられた様に、埋め込まれて居る。
本来ならば、可愛らしく、ピンッ!と、丸くも尖った大きな両耳が生えて居る筈が、片耳の中からは、大きな房の様に垂れ咲く、艶やかな、4色の藤の花が、狂い咲く様に、立派に満開に、咲き誇って居た。
目は…、片目は、耳から生えて居る藤の房が、覆い被さる様に隠してしまって居る。(まるで、ゲゲゲの鬼太郎の様だ。…真似っこ?)
其の代わりにと言う様に、隠されて居ない、もぅ片目は、真夜中で光って見える眼光よりも異様なまでにギラッと鋭く耀やいて居る。
「「……猫??」」
「か、可愛い♡」
「「え゛!?」」
「にゃご~ん」
泣き方もまた、独特の鳴き声だ。
だが、声のトーンは其処等の猫と変わらない。
軽快で、何処か頼りない、求める様な、甘えた様な、長く尾を引く様な鳴き声は、間違い無く、猫のもの。
「にゃぁーん」(訳:なぁに?)
「摩耶、激かわ!もっと啼いてくれ!!ハァハァ♡ハァハァ♡♡」
「ふぅ…。出たよ、喧花たんのキング・オブ・変態が。」
「しっ!驚いて逃げちゃうでしょっ。」
摩耶は自らの唇の前で人差し指を立てて、2人に黙る様に促す。
そう話してる間に、猫らしきモノは、クルリと踵を返す。
「あっ、」
逃げちゃう、そう摩耶が思った…。
けれど、猫らしきモノは、一歩も動こうとしない。
不思議に思い、じぃ…っと、3人は猫らしきモノを見つめる。
猫らしきモノが振り返る。
そうして、また、一鳴き。
3人の姿を、其の1つの片目に、しっかりと映し、何かを求め、伝える様な鳴き声。
「付いて来いってか?」
「にゃごーん」
そうだ、と言って居る様だ。
如何やら、正解を言い当てたと判断した、猫らしきモノは、また前を見て、進み出した。
「おい、どぉするよ?」
「勿論、付いてく!」
「摩耶たんに賛成~。山荷葉の言ってた案内人かもしれないし、此処にずっと居る訳にも行かないしねぇ。」
そう言って、一足先に、猫らしきモノを、追い始める風鵺と摩耶。
「案内人って…“人”じゃねぇじゃねぇか!」
屁理屈とも言えるツッコミが、溜息と共に自然と零れ落ちた。(流石、生粋(?)のツッコミ体質である喧花だ。)
そうして、手を繋いで居る状態なので、真ん中に居る喧花は、自然と、風鵺と摩耶の2人に引っ張られて行く事に成る。
「まるで、≪おむすびころりん≫みたい。」
「いやいや、案外、≪不思議の国のアリス≫かもYO?」
「どっちにしろ、穴に落ちるじゃねーか!」
『俺は御免だぞ!』と叫ぶ喧花に対して、風鵺と摩耶のカラカラとした笑い声が響いた。
And that's all…?
(それでおしまい…?)




