絡むばかりの縁
正にチキンなり(?)
ブチ切れ、凶悪になった喧花だったが、結果は惨敗。
言い訳をさせて貰えるなら、サシと言うか、今までの経験上、真面な喧嘩じゃ無かった事。
流石、人外魔境と言った所か、太郎神(仮)と次郎神(仮)の半端無いダブル猛攻撃に、防御に徹するしか成す術が無かった。
其の所を、後ろから、あっさりと素敏い手刀を、首にトンッとされ、気絶…………。(犯人は多分、三郎神(仮)だろう。)
そんな訳で、今や御縄頂戴の捕虜状態だ。
そうして、其の事は直ぐ様、放送で伝えられた。
「ッーーーー…」
「大事ないか?」
「平気。ちょっと喰らっちゃっただけだしね。」
「モロに殴り打っ付けられたの間違いだろ。」
「え?」
「何デモ無イデス!!」
三郎神(仮)の黒い笑みに、直ぐ様、カタコトで返事を返す喧花。
三郎神(仮)は、喧花の最初の反撃で、一発殴られた際に口端を切ってしまった様だ。
そして今、喧花は部屋の隅っこで手首と足を縄でグルグルに縛られて床に座らされていた。
「にしても、面白味が無いよね。こうもあっさりと捕まえられちゃうなんて。」
「鬼ごっこでは無いのだがな。」
「ケイドロ?ドロケイ?だっけか、今時の呼び名は。」
「だぁってぇ、こいつ等6人に任せてても永久に終わりそうに無いから♪」
「「全く以て同感だ。」」
「だから、少し趣向を変えようと思ってさ♪」
そう言って喧花の方を向き、瞳を楽し気に輝かせ、微笑を送る。
其の微笑を贈られた喧花は、ほんの少しだけ背中に悪寒を感じた。
―――― ★ ――――
「「あ」」
「ヤッホー!ヤン坊」
「チャオ、マー坊。」
天気予報のキャラクターの名前を使って、可笑しな挨拶を交わし合う。
追われて走りながらも、幽霊を撒き、隠れた場所で、偶然にも再会した2人。
どうやら、予想以上に、腐れ縁は強いらしい。
其れこそ、長年、親しまれて来た、ヤンマー並みに☆
「あれ?此処も同調部屋?」
「ううん、違う。」
「?。だって摩耶たん見えてるよ?」
『触れもするし…』と、風鵺は摩耶の腕を手に取る。
「クッキー食べたでしょ?」
「へ?あぁ…、うん。」
「完全消化されるまでは、個々の波長を同調させる事が出来る様、御呪いを掛けたの。」
「ほへ~ん。…其れが摩耶たんの能力?」
『あの男子達みたいな。』と、ジトリ…と目を据わらせて、棘だらけの声音で聞き返す風鵺。
変に隠されたり、中途半端な事が大嫌いな風鵺の反応に、臆する事無く、スルーして、肯定の意を示す様に、『うん』と頷く摩耶。
ピンポンパンポン♪
と、再会の挨拶を交わしつつ、そんな重要な会話をして居た時だった。
またまたリズミカルな放送音が耳に入って来たのは。
だが、その後に耳に入って来た声は、2人にとっては、凄く不快な男の声。
『クックック、良い報せだ。鬼姫 喧花は捕まえた。残るは2人。潔く捕まる覚悟でも、しとくんだな。ジャジャ馬娘の様に痛い目に遭いたくないならな!』
『誰がジャジャ馬娘だッ!』
最後に、自分で自分をジャジャ馬娘と、自己申告をしたも同然な、アホ喧花の怒鳴り声が、小さく耳に入る…と、同時に、ブツッと、放送が其処で途切れた。
「たたたた大変だYO!」
「落ち着きなさい。」
「ゴフッ…ハイ。」
慌てる風鵺。
摩耶は『甘味特集大辞典』の分厚い本の角を、風鵺の腹を突き抉る様に殴り、大人しくさせる。
「早く逃げなきゃ!」
「其処は助けなくちゃでしょ。」
「摩耶たん、チキンは永久不滅なんだじぇい!何でか分かる?」
「さぁ?」
「其れはね……他人を身代わりにするからさ☆」
「最低ね。」
ゴツンッ!
「チーン……。。。」
非人道的発言をする風鵺。
そんな風鵺に、今度は腹では無く、頭を本の角で殴り付け、気絶させ、喧花救助の為に、引き摺って行く摩耶であった。
And that's all…?
(それでおしまい…?)




