腹の神鳴り
どうして おなかが へるのかな?
「御腹、減った。」
上へ上がる階段を探そうと、皆が動き出そうとした矢先の事だった。
摩耶が空腹を訴えたのは…。
「~~~っ、あのなぁ!」
文句を、空気を読めと、空腹の1回や2回位、我慢しろと、お説教をしようとして振り向く。
そして振り向き様に見たのは、何処から取り出したのか、お菓子のアソートセットを掲げる摩耶の姿。
お菓子を見た瞬間、自分の腹の虫が鳴いた。
皆の視線が自分の腹に集中するのが分かった。
だから、其の途端、耳までカッと赤くなった。
「どぉうして、おなかが、へるのかな?♪」
「けぇんかを、する~と、へるのかな?♪」
「なかよし、してても、へるも~んなぁ?♪」
「「「かあちゃん、かあちゃん、おなかと、せなかが…くっつくぞ!!」」」
童謡・唱歌として有名な『おなかのへるうた』を、ノリノリで、合唱する女子3人。
「~~~~~~ッツ、ッテメー等なぁッ!!」
不可抗力とは言え、自ら、墓穴を掘ると言う醜態を晒してしまった志音。
更に志音の、そんな失態に、追い打ちを掛ける様に、揶揄う女子達の御蔭で、只今より、口から火炎放射を発射致します…と、言う程の赤い顔になる。
いや、最早、耳と顔が赤いだけでは無い。首も手も指も赤い。
はっきり言って、肌が露出して居る部分は、全身真っ赤だ。
此れが所謂“茹蛸状態”である。
「因みに、割勘です。」
「しかも有料かよッ!」
「割り勘とは、参加者の同等割にして代金を支払うことであります。」
「「俺/ウチ等もかよ!?」」
「3倍返しも可です。」
「「「いや、何時の時代のホワイトデー!!?」」」
「うん、確かに、腹が減っては戦は出来ぬって言うし、先ずは、腹拵えを、してからでも、良いんじゃない?ねぇ、nil。」
「…別に構わねーぜ。但し、俺等が払うのは金じゃねー。」
ペシッと手を差し出して来た摩耶の手を軽く撥ね除けるnil。
不満そうにする摩耶に、仙祥が綺麗な微笑みを向ける。
「“恩”をあげるよ。あ、もう売っちゃったケド…、」
さっき、助けてあげたデショ?
「ね♪」
「「「そう来るか!其の節はどーも!」」」
「どう致しまして♪」
「交渉成立だな。」
「喧花と風鵺は?」
「「……ツケで!」」
「鴉金。」
※カラス金は、一昼夜を期限として高利で金を貸す業者の事である。
「「せめてトイチ、いや無利子で!!」」
※トイチは、借入金利が「十日で一割の金利」の略。
「non」(訳:ノン=拒否)
「……お前等の関係って、一体何なんだ?」
―――― ★ ――――
「あ、彼奴等、腹拵えしてやがる。」
「あのマイペース☆ゴーイングマイウェイさが、ホントに、ムカつくwwwww」
「モグモグモグ…」
「「……何食ってるんだ!!!」」
「モグモグ、ゴックン…やらんぞ」
「「要らねーーよ!!」」
既に手に幾つかの串団子を持ち、食べて居る次郎神(仮)。
ゴロゴロゴロ、グゥ~~…
太郎神(仮)の腹の虫が、先程の志音同様、鳴く。
次郎神(仮)と三郎神(仮)の視線と、薄暗い物体の“出来損ない”の視線が一気に集まる。
「…ま、まぁ、食欲は三大欲求に必要なモンの1つだよな!」
そんな次郎神(仮)の横で、赤面をしながら、お供え物の食事の載った膳を出現させ、御椀の蓋を外し、飯を食べ始める太郎神(仮)
「君もォ!!??」
先程の爆発で、半分を、自分達が被害を受けない様に、防御壁として使い、生き残った“出来損ない”が、そんな彼等から視線を外し、肩を落とした。
其の様はまるで、『下に居る奴等と同レベルに見えて来た……。』と、軽蔑を語って居る様にしか見えなかった。
其の“出来損ない”達の様子を見て、頭痛が来た様で、痛みを紛らわす為に、こめかみを押さえる三郎神(仮)。
「主は、食わんのか?」
…どうやら此方も此方で自分の好きな通りに、ゆっくり事を進めて行くつもりらしい。
「(…もしかして、コレって同レベル同士のケンカ程度なんじゃ……)」
そう思って、三郎神(仮)は其処から先の続きを心で呟くのを止める。
理由は勿論、そんな事をしている自分はアホでバカで暇人だ。と、認める事に成ってしまうからだ。
其の代わりに三郎神(仮)は、先程の“出来損ない”達と同じ様に、肩を落とし、更に溜息を吐き捨てた後、成る様に成れ!と思い、自分も食事を食べる支度を始めた。
And that's all…?
(それでおしまい…?)




