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5の2「クラスチェンジと再レベリング」





ヨーク

「それで、どうやれば良いんだ?」


ミツキ

「まず、親指の腹に刃物で傷をつけて下さい」


ヨーク

「えっ? 痛いじゃん?」


ミツキ

「やりなさい」


ヨーク

「ちぇっ……」



 ヨークは剣で親指の腹を切り、ミツキの首輪に触れた。


 首輪が輝いた。



ミツキ

「んっ……」



 ヨークはミツキの主人として、首輪に登録された。



ミツキ

「ふふふ」


ミツキ

「これでヨークは私のご主人様ですね」


ヨーク

「なんで嬉しそうなん? マゾなの?」


ミツキ

「月狼族とか、全員マゾですよ」


ヨーク

「お前の性癖に、一族を巻き込むな」


ミツキ

「お断りします」


ミツキ

「指を治した方が良いでしょう。こちらに寄越して下さい」


ヨーク

「ああ」


ミツキ

「ちゅっ……」


ヨーク

「えっ?」



 ミツキはヨークの親指を、口に含んだ。


 ミツキは自身の舌を、ぐいぐいと傷口に押し当てた。


 やがて、指の傷は癒えた。


 それでもしばらくの間、ミツキは指をくわえていた。



ヨーク

「……いつまでやってるんだ?」


ミツキ

「ん……」



 ヨークに言われ、ミツキは指を開放した。


 ヨークは親指を見た。



ヨーク

(塞がってる……)



 ヨークの指の傷は、綺麗に完治していた。



ヨーク

「ありがと」


ミツキ

「どういたしまして」


ヨーク

「行くか」


ミツキ

「はい」



 2人は王都への道を歩いた。


 やがて、最寄の町へとたどりついた。


 その町は、ヨークの故郷の村と比べると、遥かに大きい。



ミツキ

「ヨークヨーク」


ヨーク

「うん?」


ミツキ

「提案が有るのですが」


ヨーク

「何だ?」


ミツキ

「暗黒騎士になりませんか?」


ヨーク

「なれよ。良いぞ。そういうお年頃なんだよな?」


ミツキ

「私の話じゃないです!?」


ヨーク

「俺が? どうして?」


ミツキ

「私が知る未来の話ですが、ヨークは敵と、斬り合いをすることが多いです」


ミツキ

「ですが、クラスが魔術師なおかげで、レベルが下の相手にも、苦戦してしまいます」


ミツキ

「それに、接近戦が弱い魔術師だと、レベリングの時も、リスクが有ります」


ミツキ

「おかげでスライム以外の敵には、なかなか『敵強化』を、限界まで使えないというのが現状です」


ミツキ

「これらの問題を解決するには、暗黒騎士になるのが一番だと考えます」


ヨーク

「そうは言うがな……」



 ミツキの提案に対し、ヨークは気乗りがしない様子だった。



ヨーク

「せっかくレベルを100以上にまで上げたんだ」


ヨーク

「クラスチェンジで、これを半分以下にするのは……」


ミツキ

「それに関しては、解決策が有ります」


ヨーク

「お?」


ミツキ

「まず、ヨークの『敵強化』で、私のレベルをヨークと同じにします」


ミツキ

「クラスチェンジをしたヨークを、私がパワーレベリングします」


ミツキ

「これで低下したレベルを、一瞬で元に戻すことが可能です」


ヨーク

「ん……」


ヨーク

「やってみるか」


ミツキ

「はい。やりましょう」


ミツキ

「あと、その剣もうすぐ折れますよ」


ヨーク

「えっ?」





___________________________



ヨーク=ブラッドロード



クラス 暗黒騎士 レベル128


___________________________



___________________________



ミツキ=タカマガハラ



クラス 聖騎士 レベル128


___________________________





ヨーク

「ヨシ!」



 クラスチェンジとパワーレベリングは、無事に完了した。


 クラスチェンジには苦痛が伴ったが、耐えられないほどでは無かった。


 下がったレベルも、ミツキが敵を倒すことで、すぐに元通りに出来た。


 二人の手には、新しく買った剣が見えた。


 ミツキの資金で購入したものだ。


 レベル上げに区切りがついたので、ミツキは剣を、スキルで『収納』した。



ミツキ

「しかし、あれですね」


ヨーク

「ん~?」


ミツキ

「聖騎士と暗黒騎士というと、なんだかお揃い感が有りますね」


ヨーク

「どっちかと言うと反発しそう」



 ヨークは素直な感想を述べた。



ミツキ

「しません。光と闇が両方そなわり最強に見えますよ」


ヨーク

「見えるだけかよ」


ミツキ

「それと、ヨーク」


ヨーク

「ん?」


ミツキ

「これから先の戦い、なるべく『敵強化』スキルを使って、レベルを上げて下さい」


ヨーク

「そんなに強いのか? これから俺たちが戦う敵は」


ミツキ

「なにせ、相手は神様ですからね」


ミツキ

「たとえレベルが10000有っても、勝ち目は薄いかと思われます」


ヨーク

「10000ってマジか」



 ヨークは今の時点で、かなり強くなった気でいた。


 前に会ったとき、バジルのレベルは2桁前半だった。


 そこから倍に上げても、3桁にはならないだろう。


 今の自分のレベルは、バジルよりも高い。


 そう予想していた。


 ヨークはバジルに対し、いちもく置いている。


 バジルより強い自分は、かなり強い。


 そういう認識が有った。


 だが、ミツキが言うには、まるで通用しないらしい。


 ヨークは驚きを隠せなかった。



ミツキ

「はい」


ミツキ

「私がスキルで知った神の力は、それほど圧倒的なものでした」


ミツキ

「そして、私が知る運命では、神と戦ったのは、今から半年ほど後のことです」


ミツキ

「つまり……1日に50レベルを上げても、神には敵わないということです」


ヨーク

「えっ……」


ミツキ

「事態の深刻さを、理解していただけましたか?」


ヨーク

「ああ……」


ミツキ

「魔獣を1体見つける度に、レベルを10上げる」


ミツキ

「それくらいの覚悟が無ければ、私たちは生き残れません」


ヨーク

「分かった。覚悟してやるよ」


ミツキ

「はい。頑張りましょう」



 2人は、王都への道を進んだ。



ヨーク

「あっ。スライム様」



 やがて、ヨークたちの前方に、グリーンスライムが出没した。



ヨーク

「敵強……」


ミツキ

「待って下さい」



 スキルを発動しようとしたヨークを、ミツキが留めた。



ヨーク

「どうした?」


ミツキ

「前から思っていたのですが……」


ミツキ

「どれくらいのレベル差までならスライムに勝てるのか、調べてみませんか?」


ヨーク

「危険な気もするが」


ヨーク

(前に赤狼を舐めて、痛い目に遭ったんだよな……)


ミツキ

「普通のやり方では、神には勝てません」


ミツキ

「少しでも、効率的にレベルを上げられる方法を、模索すべきです」


ヨーク

「分かった」


ヨーク

「どれくらいから試す?」


ミツキ

「私たちのレベルの1、5倍くらいから行きましょう」


ヨーク

「攻めるねぇ」


ヨーク

「んじゃ、行くぞ」


ミツキ

「ちょっと待って下さい」



 ミツキは右手の指輪を、スライムへと向けた。


 2人を包む結界が、展開された。



ヨーク

「それは?」


ミツキ

「EXPを閉じ込める結界です」


ミツキ

「これが有れば、通りすがりの人に、EXPを吸われずに済みます」


ヨーク

「良い物持ってるな」


ミツキ

「通りすがりの奴隷商人から、奪いました」


ヨーク

「奴隷商人って、通りすがるんだな」


ミツキ

「それと念のために、氷狼を出しておいて下さい」


ミツキ

「いざという時の、盾代わりにします」


ヨーク

「氷狼、二連」



 ヨークは杖を構え、呪文を唱えた。


 氷狼が、2体出現した。


 ヨークは創造した氷狼を、走らせてみせた。



ヨーク

「ん……。魔術師だった頃より動きが悪いな」



 暗黒騎士になってから、初めての氷狼だ。


 ヨークはその性能に、物足りなさを感じたようだった。



ミツキ

「それは仕方ないです」


ミツキ

「レベルが上がれば、すぐに元の性能に戻ると思いますよ」


ヨーク

「そうだな」


ヨーク

「……行くぞ?」



 ヨークはミツキに対し、覚悟を促した。



ミツキ

「はい」



 ミツキは迷いなく答えた。



ヨーク

「『敵強化』!」



 ヨークはスキル名を唱えた。


 スライムの体が、光に包まれた。



ヨーク

「『戦力評価』」



______________________



グリーンスライム レベル190


______________________




 今、眼前のスライムは、大幅に強化されていた。


 スライムは地を這って、ヨークに向かってきた。



ヨーク

「おお、すばやい」


ミツキ

「スライムにしてはですけどね」



 スライムの動きは、レベル1の時と比べ、遥かに速かった。


 だが、元の動きが遅い。


 たとえ強化されても、対処不能というほどでは無かった。


 ヨークとミツキは、スライムから一定の距離を保った。



ヨーク

「倒すぞ」


ミツキ

「はい」


ヨーク

「炎嵐」



 ヨークは炎の呪文を唱えた。


 グリーンスライムにとっては、弱点属性となる呪文だ。


 ヨークの呪文が、スライムに直撃した。


 いつものレベル上げであれば、この一撃で終わりになる。


 だが、スライムは倒されることなく、ヨークに向かってきていた。



ヨーク

「残るか。1、5倍だと」



 スライムとの距離を保ちながら、ヨークが言った。



ミツキ

「呪文の威力も落ちてますしね」


ヨーク

「もう一発」


ヨーク

「炎嵐」



 スライムは、これにも耐えてみせた。



ヨーク

「炎嵐、炎嵐、炎嵐」



 ヨークは呪文を連発した。


 炎の呪文を5発受け、ようやくスライムは焼失した。



ヨーク

「5発か……。結構かかったな」




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