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4の23の3「緑竜と突進」

予約投稿を一週間

間違えてると気付いて

ちょっと遅れました(575)



ミツキ

(レベル0。黒蜘蛛さんと同じですか)


ミツキ

「逆に強そうですね」



 ミツキはスキルを用い、大剣を取り出した。


 彼女は剣を構えると、ヨークの前に出た。



ヨーク

「ドラゴンだからな」


クリーン

「……なかなか攻撃して来ないですね?」



 ドラゴンの視界は、既に3人をとらえていた。


 だが未だに、攻撃をしかけてはこなかった。



ミツキ

「知性が有るのでしょうか?」


ヨーク

「んー……」


ヨーク

「おい。俺の言葉が分かるか?」



 ヨークは、ドラゴンに話しかけた。



緑竜

「…………」



 緑竜は、何も答えなかった。


 じっとヨークたちを見つめていた。



ヨーク

「言葉は話せないか……?」


緑竜

「…………」



 緑竜は、先頭に居るミツキに対し、ゆっくりと顔を近づけてきた。


 そしてすんすんと、匂いを嗅ぐような仕草をした。



ミツキ

「…………?」



 ミツキはそれを、じっと見守った。


 敵対行動には見えなかったからだ。


 匂いを嗅ぎ終わると、竜はミツキから顔を遠ざけた。


 そして次に、クリーンに鼻先を近づけた。



クリーン

「…………」



 ……何の因果か。


 平穏には終わらなかった。



緑竜

「…………!」


クリーン

「え……?」


ミツキ

「危ない!」



 突然だった。 


 緑竜は、ぶんと首を振った。


 敵意の有る、明確な攻撃だった。


 クリーンが、狙われていた。


 ミツキはクリーンを、突き飛ばした。


 クリーンの代わりに、ミツキが攻撃を受けた。


 頭部による打撃を受け、ミツキの体が宙を舞った。


 痛烈な1撃は、勢いよくミツキの体を弾いた。



ミツキ

「がふっ……!」


ヨーク

「ミツキ!」



 ミツキの体が、壁に叩きつけられた。


 川が有る方角とは、逆側の壁だった。


 壁に衝突したミツキは、弾かれて落下した。



ミツキ

「風癒」



 地面に倒れたミツキは、即座に呪文を唱えた。


 自分自身に治癒術を使うと、素早く起き上がった。



ミツキ

「平気です。ヨーク」



 そう言って、ミツキは剣を構えた。



緑竜

「グルルルルルルッ!」



 緑竜が、喉を鳴らした。


 その敵意は、ミツキに向けられた様子だった。



クリーン

「何が気に障ったのでしょうか……」


ヨーク

「臭かったのか?」


クリーン

「本気で殴るのですよ」


ヨーク

「悪い。お前は良い匂いだよ」


クリーン

「本気で殴るのですよ」


ヨーク

「理不尽じゃん?」


ミツキ

「冗談を言っている余裕は有りませんよ」


ミツキ

「強敵です。恐らくはあの黒蜘蛛よりも」


ヨーク

「そうかもな」


緑竜

「ぐるううっ!」



 緑竜は口を開き、ミツキに首を伸ばした。


 緑竜の牙が、ミツキへと向かった。



ミツキ

「っ!」



 ミツキはなんとか飛び退いて、攻撃を回避した。


 緑竜の頭部が、迷宮の壁を叩いた。


 地響きが起きた。


 岩壁が弾け飛び、凹みが出来た。


 さきほどの攻撃よりも、遥かに威力が高い。


 さらに、連続で攻撃が来た。


 ミツキはギリギリで、緑竜の攻撃を回避していった。


 その攻撃の圧に、ミツキは反撃が出来なかった。


 回避を繰り返すと、緑竜との距離が離れた。


 ミツキは、なんとか体勢を立て直し、緑竜に向かって構えた。



ヨーク

(ミツキが苦戦を……)


ヨーク

(精一杯軽く見積もっても、レベル400ってところか……)


ヨーク

(迷宮の魔獣は、レベル100程度のモノしか発見されてない)


ヨーク

(最低でも、その四倍以上)


ヨーク

(次元が違う、神話の生き物ってワケだ)


ヨーク

(魔術師の俺が喰らったら、即死かもしれねーな)


ヨーク

「とっ」



 ヨークは氷狼に飛び乗った。



ヨーク

(頼んだぞ。ワンコ)



 ヨークの意思に沿って、氷狼が走り出した。



ヨーク

(接近戦は危険だ。まずは……)


ヨーク

「氷槍!」



 ヨークは様子見で、呪文を放った。


 とはいえ、できる限りの魔力はこめている。


 通常の魔獣であれば、1撃で絶命する代物だった。


 鋭い氷の槍が、緑竜へと飛んだ。


 それを見ても、緑竜は動かなかった。


 緑竜は動じずに氷槍の着弾を待った。


 氷の槍が、竜の鱗にぶつかった。


 氷槍は、傷一つつけられず、粉々に砕け散った。



ヨーク

(無傷かよ……!)


ヨーク

「風刃! 炎矢! 雷玉!」



 ヨークは、三属性の呪文を、立て続けに放った。


 だが、その全てが、緑竜には手傷を与えられなかった。



ヨーク

(マジか……)



 ヨークが手加減無しで敵を攻撃したのは、久しぶりだった。


 ヨークは強くなりすぎていた。


 だから、半分以下の力しか籠めなくても、魔獣を倒すのは容易かった。


 だが、今回は違う。


 全力の呪文を命中させたというのに、まったく手応えが得られなかった。


 黒蜘蛛のように、特殊な魔導器を持っているようにも見えない。


 実力で、ヨークは負けていた。



ヨーク

(属性とかじゃない。純粋に、魔術の威力が足りてないってことかよ)


ミツキ

「はあっ!」



 ヨークの攻撃で、意識が逸れた。


 そう見込んだミツキは、緑竜に斬りかかった。


 だが、緑竜は簡単に斬撃を回避し、前足でミツキへ反撃を放った。



ミツキ

「ぐっ!」



 それは巨体には似合わない、機敏な一撃だった。


 回避しきれず、ミツキは体を打たれた。


 彼女は激痛と共に、地面を転がった。



ミツキ

「風癒……!」



 ミツキは急ぎ、治癒呪文を唱えた。



緑竜

「グオォォォッ!」



 ミツキ目がけて、追撃の前足が伸びた。



ミツキ

「くうっ!」



 ミツキは転がって、追撃を回避した。


 そして瞬時に立ち、体勢を立て直した。



ヨーク

「炎獄柱!」



 ヨークは攻撃を、火力重視の呪文に切り替えた。


 これでさきほどよりは、威力の有る攻撃が出来たはずだった。


 巨大な炎の柱が、ドラゴンを包み込んだ。


 だが、炎が消えた後には、相変わらずの、無傷の緑竜が残った。


 ヨークの呪文は、通用していない。


 それを見ても、ヨークは諦めなかった。



ヨーク

「呪壊!」



 ヨークは続けて、闇の呪文を放った。


 敵を殺すためだけの、殺傷能力に優れた呪文だ。


 だが、それも緑竜には通用しなかった。



ヨーク

(なんなんだよコイツは……)



 緑竜の涼しげな視線が、ヨークに向かった。


 見下ろされている。


 ヨークはそう感じた。



ヨーク

(蟻でも見てる気分か?)



 全力の呪文が、切り札にならない。


 ヨークには、眼前のドラゴンを倒すだけの、手札が無かった。


 1つを除いて。



ヨーク

(魔導抜刀を……いや)


ヨーク

(未完成だ)



 ヨークは、自らの魔導抜刀を思い出した。


 醜い一閃。


 自己流の、自己満足。


 デレーナの足元にも及ばない、出来損ない。


 黒蜘蛛の胴を、断った技だ。


 一瞬脳裏に浮かんだその技を、ヨークは手札から放り投げた。



ヨーク

「…………」



 ヨークは決断した。



ヨーク

「逃げ……」



 ヨークが撤退を告げようとした、そのとき。



クリーン

「ヨーク、本気でやるのです!」



 クリーンが怒鳴り、ヨークを睨んだ。



ヨーク

(本気なんだが……)



 傷一つ負わせられない無様な様子を、手を抜いていると見られたのか。



クリーン

「モフミちゃんも頑張ってるのです! あなたも頑張るのです!」


ヨーク

(いや……)



 自分にはもう、ドラゴンに勝つための手段など無いのだ。


 ヨークはクリーンに、そう言いたくなった。


 だが……。



ヨーク

「っ!?」



 ヨークの感覚に、違和感が生じた。


 なぜか唐突に、体の奥底から、力が湧いてくるのを感じた。


 違和感の正体を探るため、ヨークはまぶたを下ろした。




______________________________




ヨーク=ブラッドロード



クラス 魔術師 レベル342+684



______________________________




ヨーク

(は……?)



 ヨークは自身のレベルが、1000を超えていることに気付いた。


 その表記は、いつもとは異なっていた。


 本来のレベルの隣に、謎の+の表示が有った。



ヨーク

(何だこりゃ……? いや……)


ヨーク

(細かいことは後回しだ)



 このパワーが有れば、ドラゴンに勝てるのではないか。


 ヨークはそう考え、剣先を緑竜へと向けた。



ヨーク

「ミツキ! 川に飛び込め!」


ミツキ

「ッ!? はい!」



 一瞬の躊躇の後、ミツキは飛んだ。


 ミツキの体が、水中に没した。


 そして。


 ヨークは呪文を唱えた。



ヨーク

「嵐紅-ラング-!」



 膨大な熱量を持った炎の渦が、緑竜へと向かった。



緑竜

「グガアアアアアアアァァァッ!」



 緑竜が、悲鳴を上げた。


 その表情から、涼やかさが消えた。


 ヨークの攻撃に、痛がっている様子だった。



ヨーク

(効いた……!)



 ヨークは内心で喜んだ。


 だが……。



ヨーク

「あ……?」



 油断。


 いつの間にか、緑色の巨体が、ヨークに迫っていた。


 敵に有効打を与えた。


 そのことが、ヨークの気を緩ませた。


 緑竜は、炎に苦しみながら、ヨークに突進していた。


 前衛クラスのミツキですら苦しめる、緑竜の圧倒的パワー。


 その突進を、魔術師のヨークは、避けきることが出来なかった。



ヨーク

「が…………ッ!」



 巨岩のような塊が、ヨークの体を打った。


 ヨークの体が舞った。


 ヨークが乗っていた氷狼が、粉々に粉砕された。


 全身の骨が、砕けた。


 それを感じながら、ヨークは地面へと墜落した。




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