タイムリープは拒否します
勢いで作ったのでかなり短いです。
俺は後悔していた。幼馴染に告白しなかったことを。
家族同然に思っていた彼女には、気付いたら彼氏ができ、そして結婚した。今では子供を授かっている。
俺はそんな幼馴染のことを忘れられず、昔、夏祭りを一緒に楽しんだ神社に来ていた。
「?」
あることに気付く。
鳥居の脇にある狐の石像から、前掛けが取れていた。何となくかわいそうだと思ったので、俺は前掛けの紐を結び直した。
すると……。
ドロン!
「ほぉ、人間。妾に前掛けをつけてくれたか」
「うわぁ!」
猫耳(狐耳?)姿の幼女が目の前に現れた。お約束のごとく長い尻尾もついている。
「驚くでない。妾はこの神社の神である」
なんで神様が鳥居の脇にいるんだよ……。
「前掛けをつけてくれた礼じゃ。お主を過去に戻してやる」
「いえ、結構です」
「なぬ!? お主冒頭で後悔していると言っていたではないか!」
「メタ発言しないでくださいよ!」
「それより何故じゃ?」
「過去に戻って幼馴染と付き合えたところで、幼馴染の夫ことがちらつくじゃないですか。俺はそのことをずっと気にしないといけないんですよ? それに、彼氏になれる保証もないし」
「めんどくさいやつじゃの……お主。ならお主を記憶を消して、さらに過去のお主をイケメンしてやるのはどうじゃ?」
「嫌ですよ。ただのチートじゃないですか」
「なら、どうすればいいのじゃ?」
「このままでいいです。後悔はしてますけど、別に過去を変えてやろうなんて思ってないですし」
「本当にいいのじゃな? このような機会、二度はないぞ?」
「はい」
★★★★★
「はぁ……」
男が立ち去った後、狐は境内に腰掛けため息をついていた。
「まったく、あのニブチンめ……。せっかくあの女を心変わりさせたというのに」
夏祭りで初めて男を見たとき、狐は男に一目惚れをしてしまった。
男の幼馴染は実は男に惚れていたのだ。故に狐は神の力を使って他の男を好きになるようにした。
狐は男が女を失ったことで神に縋ると思っていたが、そうではなかった。むしろ神社に来なくなった。
そして久しぶりに男が神社に来たので、わざと前掛けを外し、男の気を引いた。
狐は男が過去に戻ると言ったら、対価として自分の番になるように要求するつもりだった。
「妾が望みを叶えてやるというのに、どういうことなのじゃ……」
狐は自分の気持ちを素直に伝えたら、男が応えてくれる可能性があることにまだ気付いていない。
最後まで読んで頂きありがとうございました。