想いは募っていった。
想いは募っていった。
もう何回逢っただろう。
ロンドンでの出会い。
それを無にしたくなくて、俺はお礼の意味を込めてCDを送った。
素敵な曲ですね。
クラシックしか聴いたことがなくて、こういう音楽に疎いのですけど、これはなんてジャンルと呼べばいいのかしら。
俺のソロ第一弾。
彼女が住んでいたロンドンの雰囲気にぴったりの曲。
彼女が心惹かれてくれたのが、正直嬉しかった。
こんな素敵なプレゼントは初めてよ。
CDのお礼がしたいわ。
食事に行くことになった。
待ち合わせのフレンチレストランに現われた彼女の美しいこと!
俺は夢じゃないかと思った。
こんな商売をしている俺の周りには、女は絶えなかった。
綺麗な女も可愛い女もたくさんいた。
でも、美しいと思ったのは初めてだ。
夢見心地の時間はあっという間に過ぎていく。
食事が終わり、ワインに少し酔った彼女をエスコートして散歩した。
華奢なハイヒールの彼女がよろけた。
俺は、思わず肩を抱いた。
華奢だけど、女らしい丸みを帯びた肩を抱きしめ、唐突なキス。
羽のような軽いキスだったが…。
駄目よ。
彼女の弱々しい拒絶に俺の火がついた。
片手で彼女のあごをつかみ、もう一方の手で抱きしめながらの2度目のキス。
逃げる彼女の舌を追いかけ、甘い唾液を吸う。
頭が、体の芯が痺れるようなキス。
彼女の潤んだ瞳が悩ましい。
彼女が欲しい。
人妻だろうと構わない。
後先考えず、彼女を欲しいと思った。
しかし、今度は彼女から断固とした拒否が…。
こんなことをするなら逢えないわ。
いいお友達だと思っていたのに…。
友達?
俺は深呼吸して、彼女の手を取った。
1か月、レコーディングのために渡米します。
帰国したら逢ってもらえますか。
あなたが好きです。
俺は、そう言いながら、いつの間にか泣いていた。
自分の涙にびっくりした俺を、彼女は驚くでもなく、優しく見つめていた。
1ヶ月後、あなたの気が変わらなければ…ね。
1か月、思い出すのは彼女のことばかり。
気が変わるどころか、益々想いは募っていった。