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その4 俺はついに旅立った。

 車で半時間の道のりをその五倍を掛けてマンションにたどり着き、バロンとサクヤを駐車場のポールにつないで部屋に戻り旅の準備を始める。


 まず、野営の装備、寝泊まりする場所はホテルや何なら人様の家に入り込んでも良い訳だが、そうそう快適な宿が見つかるとは限らない。よってテントの出番となるの。妻と登山の時に使っていたアライテントのトレックライズ2にタープを加え、寝具としてモンベルのダウンシェラフ、シェラフカバー。それにマットは壊れる心配を考えてウレタンマット。グランドシートも忘れずに持つ。

 次にストーブ、燃料の補充を考えてカセットガスが使えるタイプの物が良いのでそれを選ぶ。当然、何時かは使えなくなるだろうから、焚火に必要なブタンガスライター、ファイヤースチール、レンズ、チタンのゴトク、団扇に畳める火吹き棒も忘れない。あとは調理器具、焚火にも使える弦のついたコッヘルいわいるビリー缶、登山用のフライパン、シェラカップ、箸にスプーン、ナルゲンボトルに折りたためる水筒プラティパス。カタディンの浄水器もフィルターと共に持つ。

 食料は、一応フリーズドライのご飯ものやパスタ、調味料は持って行くが、基本は行く先々で失敬していくことを前提にする。それもいずれ厳しくなるし、大体生鮮食品は入手不可能だろうから、勢い自然環境から調達する事に成る。

 そこで頼りになるのがベネリM3スーパー90だ。手入れの道具と共に四号にダブルオーバックと二種類の散弾、それにスラッグ弾も持って行く。あと、釣りの道具だが、コイツは何処か釣具屋に行って調達しよう。

 サバイバルと言えば何と言ってもナイフだ。獲物のトドメ刺し様と護身用にコールドスチールのトレイルマスター、これならブッシュナイフや鉈の代わりにもなる。解体用及び雑用にはバークリバーのブラボー1。ブレードが分厚く、皮を剥ぐのには少々使いづらい向きもあるが汎用性が魅力だからこいつに決めた。他に折り畳みのこぎり、折り畳みのシャベルも加える。細々とした雑用にレザーマンのマルチツールも当然ながら加える。

 光源は色々考えて単四電池を使うペルツのヘッドランプとジェントスのフラッシュライト、ランタンを選んだ。単四電池なら行く先々で何とか手に入るだろう。

 ナビゲーションのツールとしてロードマップとシルバのコンパス、ガーミンのGPS、その他、ニコンの双眼鏡も装備に加えた。

 他、ロープやダクトテープなどの雑貨、洗面道具、等々、これらをオスプレイのバックパック一個と、防水性あるノースフェイスのダッフルバッグ二個に分け、バックパックは自分で背負い、ダッフルバッグはナイロンのベルトで鞍に固定しサクヤに載せる事にする。

 着るものは、あまり洗濯できないことを考え化繊中心。アンダーはモンベルのウイックロン、トップのシャツもモンベルのメリノウールのジップネックのシャツ。ボトムはファイントラックのストームゴージュアルパインパンツ。防寒具としてモンベルのサーマルラップジャケットとパンツ、雨具はストーム・クルーザー、足元はシリオのライトトレッキングブーツと乗馬用のハーフチャップスで行くことにする。その他、焚火にをするときに化繊の服はNGと考え、シェラデザインのマウンテンパーカーも荷物に加える。

 最後に、妻が去年の誕生日にプレゼントしてくれたロレックスのエクスプローラーⅡを付けたら身に着ける物は完了だ。 


 家で出来る準備はこんなところか?

 完全に自給自足の野宿旅となると、相当な荷物の量だが仕方が無いし、馬二頭なら問題なく運べる量だ。最後に役に立たないかもしれないが現金、カード。あと妻の写真もポケットに入れて、すべてが終わるころには日が暮れていたので外で調達する装備は明日に回し、バロンとサクヤが心配なのでマンションの共用公園でテントを張り、二頭を見張りつつ夜を過ごすこととする。

 さて、ここで困ったのは彼らの餌だが、バロンは公園に生えていた観賞用の笹の葉をモシャモシャと食べはじめ、サクヤも真似をして口にしていた。案外逞しいな、コイツら。


 朝が来たので出発の準備を始める。

 テントを畳み、振り分け荷物にしたボストンバッグを載せて、バックパックを背負って準備完了。妻の墓に別れを告げて、バロンにまたがり、サクヤの手綱をバロンの鞍に括り付け出発した。

 噎せ返る死臭に包まれながら、あちこちに現れた蠅の塊をよけつつ、先ずは勤め先の病院を目指す。

 臭気除けにマスク代わりにタオルで顔をぐるぐるに巻き、院内に脚を踏み入れる。

 目がくらむような死臭。腐敗網が顔面や手足に現れ、変色し始めたかつての同僚たちの姿。息を詰め目を逸らしながら目指すは救急処置室。

 ぶんぶん飛び回る蠅共を払いつつ、キャビネットから必用そうなものをかき集める。

 メスの柄と刃、縫合糸付きの縫合針、各種剪刀、医療用ハサミ、コッヘル、各種包帯、止血帯などの外傷対策の用品に抗生物質や鎮痛剤などの薬品も持って行けそうな量を持って行く。

 吐きそうになりながら作業を進め、逃げるように病院を後にする。

 染みついた臭いにバロンもサクヤも俺から逃げようと後ずさるが、何とかなだめすかして乗せてもらう事に成功した。

 

 この後、ドラッグ・ストアーやホームセンター、スーパー、釣具屋を回って補充したいものをかき集め、すべて終わる頃には陽が落ちかけていた。

 今日は街の中の公園で野宿。ガスボンベを節約したいのであちこちから木材を集め焚火を熾し、湯を沸かしてカップ麺とレトルトライスの夕食を取る。

 バロンとサクヤは公園の芝生をブチブチ言わせて食べていた。


 次の日、街を離れるため二桁国道に入り、一路東を目指す。

 当面、どこに行っても死体だらけで衛生環境は最悪だろうから、補給以外に街に入るのは止そうと思う。

 山の中の放浪生活、かなりの不便だろうが、装備もあるし、なにしろあの匂いに悩まされずにすむだろう。


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