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88.成長

雄鶏おんどり嘴亭くちばしてい』に戻ってきた『白銀の女神』は、自分たちの実力を把握するためアニーに頼んでレベル確認をすることにした。




「では発表していくぞ、いつも言っているが『白銀の女神』では探索に関する情報は隠さないことになってる。リサもそのことは了承してくれ」


「わかったわ」


 リサは今回が初めてのレベル情報の共有なので、念のために確認をした。


「まずワンさん、レベル十七、前回のレベルから二上昇だ。スキルは『縮地』、『気配消失』、『剛力解放』、『金剛硬化』、『魔力効率化』、五つも獲得できたようだ」


 一斉に拍手が巻き起こり、ワンさんは立ち上がってお辞儀をしていた。

 とても嬉しそうな顔をしていて俺も嬉しくなった。


「次はモーギュスト、レベル十七、前回からレベル三アップだ中々の上昇率だな。骸骨騎士を一人で倒したのが大きいように思う。スキルは『縮地』、『気配消失』、『剛力解放』、『金剛硬化』、『魔力効率化』、こちらも五つも獲得できた」


「やった! ワンさんとレベルならんだよ、スキルだって一緒だ。もしかしたらトップに並んだんじゃないかな?」


「とうとう並ばれやしたか、でもモーギュストは頑張っているから納得でやんす」


 ワンさんはモーギュストとガッチリと握手をして笑い合っている。


「次はアニー、レベル十六、モーギュストと同じで三レベルアップだ。そして『気配消失』、『魔法速詠唱』、『魔力効率化』のスキルを獲得した。俺個人の意見だが『神聖防壁』の法術を取得したことは、今後の探索にかなり貢献することになると思う。よく頑張った、みんなアニーを讃えよう」


 みんなうなずいて聞いていたが、俺の言葉で一気に立ち上がって拍手し始めた。

 防御の大切さを嫌という程理解しているメンバー達は、鉄壁の障壁をアニーが使えることに心底嬉しそうだった。


 アニーは立ち上がり深々とお辞儀をする。

 みんなに認められて嬉しくなったのか、目に涙を浮かべて微笑んでいた。


「アニー凄いわ! 『神聖防壁』なんて司教クラスだって使えないわ! やっぱり女神様に愛されているのよ!」


 セルフィアが興奮してアニーに抱きついた。

 アニーは嬉しそうに受け止めて二人で抱き合い泣き出してしまった。

 アトラスさんのところでの辛い修行を思い出しているのだろう、それほど過酷な修行だった。



「盛り上がっている所悪いが次の発表をするぞ、リサレベル十、保護したときはレベル二だったから、短期間でこれほど上がるとは正直驚きだな。『気配消失』、『魔法速詠唱』、『魔力効率化』、『身体強化』、スキルも基本を抑えていて俺達の中で一番の成長株だ。更に凄いのが精霊術を使えることだな、ドラゴン戦の足止めはすごすぎて言葉が出なかったよ」


「確かにあれは凄かったでやんす、あの大きなドラゴンが移動を封じられてしまったんでやんすからね」


「アースドラゴンの体当たりを食らったら、僕でもどうなっていたかわからなかったから、足止めは助かったね」


 ワンさんとモーギュストがしきりにうなずき感心している。


「あれはリサがやったことではないわ、精霊さんがやったのよ」


 リサが遠慮がちに言ってはにかんでいる。


「何言っているのよ、精霊に頼めるリサが凄いんじゃない、もっと自信を持っていいのよ」


「そうですよ、リサちゃんしか出来ないことなんですから、自慢してもいいのですよ」


 リサはアニーたちに頭を撫でられて嬉しそうにしている。

 俺も撫でたいが我慢したほうがいいだろうか?


 美女たちと美少女のじゃれ合いを眺めていたら、急にセルフィアが俺に向き直り言ってきた。


「さあ、そろそろあたしのレベルを発表してもらえるかしら? 今回は自信があるのよね、レインお願いね」


 たしかに彼女が自信満々なのは理解できることだった。

 大物の魔物を仕留めるのはだいたいセルフィアの魔法だった。

 先のドラゴン戦でもとどめはセルフィアの大魔法だったのだ。


「わかったよ、俺もそう思ってセルフィアを残してあったんだ。期待していいぞ」


「本当!? やったわ! ねぇ早くして!」


「よし、セルフィアのレベルは……、十八だ! 前より三ポイントアップして単独トップだおめでとう!」


 食堂内にどよめきが起こった。

 特にワンさんとモーギュストはセルフィアに単独トップをさらわれて唖然として固まっている。


「お姉ちゃん凄いわ」


「セルフィアやりましたね!」


あねさん負けやした、完敗でやんす」


「セルフィアさんすごいね! 僕も負けを認めるよ!」


 全員が拍手をしてセルフィアを讃えた。


「と、当然の結果よ! これからもトップを守り続けるわ!」


 みんなに褒められて少し動揺してしまい、ぎこちない挨拶になってしまったようだ。


「セルフィアは呪文やスキルの方も凄いぞ、スキル『気配消失』、『魔法速詠唱』、『魔力効率化』、呪文は『インフェルノ』に『サンダーバースト』、特に呪文はみんなも威力を知っていると思う」


 また拍手が巻き起こりセルフィアは得意そうにしている。

 興奮が一段落すると、みんなが俺のことを見始めた。


「旦那、そろそろ旦那のレベルを教えてくだせぇ、あっしは旦那のレベルが一番気になりやす」


「そうね、レインのレベルは興味あるわ、ねぇ教えて」


 アニーは事前に知っているので俺のことを見ながら悲しい目をしてくる。

 俺は意を決して発表することにした。


「先に言っておくが期待しないでくれ、頑張ったんだがあまり良くなかったんだ……」


「レイン様、レベルが全てではありませんよ……」


 アニーが眉をハの字にして俺を慰めてくれた。


「そうだな……、俺のレベルは十四だ!」


 勢いよく言ってはみたが、食堂は波が引くように静まってしまった。


「前よりレベルは二つ上がったぞ、スキルは『縮地』、『気配消失』、『剛力解放』、『金剛硬化』、『魔力効率化』、五つを取得できたよ……」


 インパクトに欠ける報告にみんな微妙な顔をする。

 その時ワンさんが立ち上がってみんなに向かって話し始めた。


「旦那は『兜割り』も覚えやしたよ、ドラゴンの尻尾を一撃で両断しやしたし、スキルの数は今までのと合わせてダントツの八個でやんす。女神様の加護まであるんでさぁ、すごいでやんすよ!」


「そうよね、レベルだけが全てではないわ。指示だって適切にしてくれているし、何より物資をいっぱい持って探索できるのはレインが居るからじゃない」


「そうだよ、レインさんがいなかったら僕らアトラスさんに鍛えてもらえなかったんだから、レインさんが一番すごいよ」


 みんなが立ち上がり拍手してくれる。

 俺を気遣っての拍手ではないのは目を見れば明らかだった。

 自信を取り戻して立ち上がりお辞儀をする。

 それから楽しく雑談をして一息ついた。




 今後の探索の方針はいつもと変わらず慎重に進むことでみんなの意見がまとまった。

 十八階層で俺達がどの程度通用するか、ゆっくり慎重に検証しながら活動範囲を広げることにした。


「最後に報告だが『ミドルグ探索結社』の会合の知らせが来たよ、会合はオレ一人で出席することになった。心配はないと思うが一応警戒はしていてくれ」


 食堂に緊張が走る、さっきまでの温かい雰囲気が全て吹き飛びピリピリした空気が食堂を覆った。


「会合の日時は明日の夕方、場所は一度行ったことのある『熊の牙亭(きばてい)』、スラム街の宿屋だ」





 とうとう俺にとっての『ミドルグ探索結社』の初会合が決まってしまった。

 一抹の不安を感じつつ強者たちとの話し合いに向かうのだった。





ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー

アニーが書いたメモ


[レイン…… 十八歳、 レベル…… 十四、 スキル…… 縮地、気配消失、剛力解放、金剛硬化、魔力効率化、身体強化、健康、異世界言語、 加護…… 女神イシリスの加護]


[セルフィア…… 十八歳、 レベル…… 十八、 スキル…… 気配消失、魔力制御、魔法速詠唱、魔力効率化、身体強化]


[アニー…… 十八歳、 レベル…… 十六、 スキル…… 気配消失、魔法速詠唱、魔力効率化、身体強化、信仰]


[ワンコイン…… 二十三歳、 レベル…… 十七、 スキル…… 縮地、気配消失、剛力解放、金剛硬化、魔力効率化、身体強化]


[モーギュスト…… 二十歳、 レベル…… 十七、 スキル…… 縮地、気配消失、剛力解放、金剛硬化、魔力効率化、身体強化]


[リサ…… 十歳、 レベル…… 十、 スキル…… 気配消失、魔法速詠唱、魔力効率化、身体強化]

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