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85.財宝

  アースドラゴンを倒した『白銀の女神』は、巣穴に大量にあるお宝を回収する作業をしていた。




「ワンさん……、この巨大な宝箱どんな罠が仕掛けられていたんだ……」


「よくぞ聞いてくれやした、まず周囲に呪術的な警報装置が張り巡らされていやした。きっとドラゴンが盗人を警戒して仕掛けていたと思いやす」


 箱の周囲を回りながら得意になって話し始める。

 俺はこのワンさんの話が大好きで、毎回ワクワクしながら聞き入っていた。


「それを『魔力吸収像キャッチャー』で作動できなくしやした。ドラゴンを倒したので警報がなってもいいと思うかもしれやせんが、これほどの宝箱でやんすからガーディアンが現れても不思議ではありやせんからね」


「『魔力吸収像キャッチャー』ってあれだろ、強引に魔法系の罠を作動させなくするやつ、大司教の宝部屋で使ったよね、でもガーディアンってなんだ?」


「僕知ってるよ、ガーディアンって言うのは大事なものを守る守護者だよ、魔物だったり機械だったり、中にはゴーレムが守護していたなんて話を聞いたことがあるよ」


「その通りでやんす、厄介なやつをわざわざ呼び出す事はありやせん、だから作動しなくしたんでさぁ」


 スキの無いワンさんの手際にいつもながら感心してしまう。


「あそこの窪みに人形が横たわっているのが見えやすか? あれがガーディアンの可能性がありやす」


 ワンさんの指差す方向の壁につるりとした泥人形が数体横たわっている。

 大半は苔に覆われ完全に壊れているようなので安心だが、まだ魔術が生きていそうな個体も何体か存在していた。

 もし仮に襲ってきても今の俺達なら余裕で撃退できるが、わざわざ眠っている物を起こす必要はないと思った。


「宝箱自体には二つの罠がかかっていやした。一つは定番の爆弾系の罠でやんす、側面に小さな穴を開けて中を覗いたんでやんすが大きな魔力爆弾がありやしたよ。蓋を開けたらドカンと行きやすよ」


「魔力爆弾ってなんだ?」


 知らない用語がどんどん出てきてとても面白い。


「魔力爆弾ていうのは密閉容器に純粋な魔力を目一杯入れて、盗人が触ると爆発するように仕掛けた魔法具でやんす。密閉容器の具合からこの罠が作動したらこの洞窟は間違いなく吹き飛びやすよ」


 ワンさんは嬉しそうにニヤリと笑い、目の前の宝箱を愛おしそうに撫でる。

 本当に罠が大好きなんだなと背筋が寒くなった。

 モーギュストはワンさんから少し距離を取り始めたようだ。


「二つ目の罠はかなりいやらしい罠でやんすよ、中に入っている宝を持ち上げると魔力爆弾が炸裂するようになってやす。箱の罠を解除して安心したらその後ドカンでやんす、凝った罠でやんすね」


 うっとりと宝箱を抱きしめ目をつむって微笑んでいる、終いには箱を頬ずりをし始めた。


「ワ、ワンさん、そろそろ中身を見てみないか? 罠は全部解除したんだろ?」


「ん? そうでやんすか? 仕方がありやせんね、蓋を開けやしょう」


 俺に邪魔をされて少し機嫌が悪くなったようだ、なんとかなだめすかして中の宝を拝ましてもらうことにした。



「そっちの端を持ってくだせぇ、掛け声を上げて一緒に開けやしょう」


 ワンさんと俺が宝箱の端にそれぞれ立ち宝箱の蓋に手をかけていた。

 一人では到底持ち上げることが出来ず、二人の共同作業になっていた。


「レイン待って! いま行くから!」


 セルフィア達がこちらに急いでかけ寄ってきた。


「まだ開けてなかったのね、良かった間に合ったわ」


 宝石箱に気を取られて俺達がいないのをさっき気づいたらしく、急いで後を追ってきたそうだ。

 三人の後をアトラスさんがゆっくりと歩いてくる、きっと三人の護衛をしていてくれたのだろうな。



「みんなそろったな、では開けるぞ。いち、にい、さん!」


 蓋の重さは相当なもので『身体強化』を強めなくては開けられなかった。

 一気に力を込めると箱を壊してしまうので徐々に力を加えていった。


「モーギュスト、蓋が地面に激突するのを防いでくれ、完全に反対側まで蓋を開けるぞ」


「わかったよ、いつでも来ていいよ」


 宝箱の裏側に回ったモーギュストが、両腕を持ち上げて蓋が落ちてくるのを待ち構えた。

 ゆっくりと持ち上がった蓋は垂直になると勢いよく裏側に開いていく。

 衝撃をうけるのに慣れているモーギュストが、蓋を器用に受け止めゆっくりと地面につけた。


「おつかれモーギュスト、重かっただろ?」


「このくらいで重いって言っていたら僕は何回死んでいるかわからないよ、この重さなら小指一本でも支えられるね」


 小指で蓋を支えながら言ってくる。

 よくよく考えたらあながち冗談ではない気がしてきて、モーギュスとの小指を凝視してしまった。


「旦那、早く中身を見てくだせぇ、いろいろ面白いものがありやすよ」


 ワンさんにかされて宝箱の中身を覗き込む、そこには金貨や銀貨に混じって宝石や金の延べ棒など金銀財宝がぎっしり詰まっていた。

 更に大量の武具が収まっていて中には魔法がかかっていそうなものまで混じっていた。


「これ見てよ、魔術のスクロールがあったわ、新しい呪文が書いてあるかもしれないわ」


「姉さん方、指輪はむやみにはめたりしちゃいけやせんよ、呪いの品の場合がありやすからね」


「これ魔法の短剣じゃないですか? うっすらと光ってますよ」


「あっしに見せてくだせぇ、もし良い品だったらあっしが使わしてもらいたいでやんす」



 ワイワイと騒ぎながら宝箱の中身を袋に移し替えていく、すると底の方に小さな宝箱が姿を現してきた。


「旦那方! 動かないでくだせぇ! 宝箱が底の方にありやした、罠が仕掛けられている可能性がありやす。今から調べやす」


 完全に油断していて無理な体勢のまま体を止めてしまった。

 首を動かさず周りを見ると他の仲間達も止まるには辛い格好をしていて泣きそうになっていた。

 アトラスさんだけが不思議そうに俺達を覗いている、アトラスさんはワンさんの言葉を理解できずに戸惑っているようだった。


「旦那、師匠に状況を伝えてくだせぇ、声を出すだけなら大丈夫でやんす」


「アトラスさん、小さい宝箱が中から見つかりました。罠が仕掛けられているかもしれないので動かないでもらえますか?」


『そうか、わかったぞ』


 それから十数分、無理な体勢で固まり続ける。

 ワンさんは慎重に宝を調べていった。

 結果的に罠は仕掛けておらず、宝箱の中身も空だった。

 がっかりやら安心やらで疲れてしまい、その場に座り込んでしまう。

 休憩をたっぷりとってから再び宝を物色していった。。




 それから午後中かけて巣に散らばっている金貨銀貨を集め巾着袋に収めていく。

 大量のお宝が袋の中に収まり、巣の高さは半分以下になってしまった。


「後はドラゴンが食い散らかした骨だけになったわね、さっさと『コロニー』に戻って夕食にしましょ」


「リサ今日の夕食はバーベキュー食べたい」


「リサちゃん昨日も食べたでしょ、今日は違うものがいいんじゃない?」


 モーギュストがやんわりとツッコミを入れる。


「リサ毎日だって食べたいわ、とても美味しいんだもの」


「たしかにリサの言うとおりね、ばーべきゅーは飽きないわ。レインもそう思うでしょ?」


「ん? ああ、今日もバーベキューにするか!」


「お兄ちゃん大好き!」







 リサが勢いをつけて俺に抱きついてくる。

 かわいい告白に頬を緩ませながら『コロニー』に向かって帰還していくのであった。


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