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84.おたのしみ

 とうとうドラゴンを倒すことが出来た。

『白銀の女神』はアースドラゴンを倒して正式なドラゴンバスターになった。




『お前ら最終試験は合格だ、よく連携していたぞ。スキルの重ねがけも見事だった、もう俺に教えることは全て教えきった。それに最後の魔法は俺も驚いたぞ、あれは中々の攻撃魔法だな』


 アトラスさんが俺達に合格を宣言した。

 仲間達に伝えると皆んな飛び上がって喜びだした。


「やりやした! 師匠のお墨付きをいただきやした!」


「リサも頑張ったわ、お兄ちゃん褒めて」


「当然の結果だね、早く樹海で強敵と戦いたいよ」


「セルフィア、あなたのおかげで合格もらえたわ」


「まだまだこれからよ……、もっと凄い呪文を覚えてみせるわ……」


 アニーに膝枕をされて静かに寝転ぶセルフィアは魔力を使い果たしてぐったりしていた。

 しかし強化前では考えられないほどの攻撃呪文を、二つも発動して無事でいられるのは修行の成果と言わざるを得なかった。


 どこからともなくドラムが降りてきた。

 すました顔をして俺の背中へ降り立つと翼を器用に畳んで張り付いた。


「ドラムお前どこへ行っていたんだ? あのブレスの中大丈夫だったのか?」


「洞窟の天井で見ていたよ、あの程度のブレスなら問題ないよ」


「そうか、でも心配だから俺の目の届く所にいてくれな約束だぞ」


「わかったよ、あまり離れないことにするよ」


 可愛いドラムが見当たらなかったので戦闘中も頭の片隅に引っかかっていた。

 まさかあの威力のブレスを受けても平気だとは夢にも思わなかった。



「旦那! 討伐した後はあっしの出番でさぁ、お宝発掘と洒落込みやしょう」


 薄手の手袋を手にはめながらウキウキ声で提案してくるワンさん。

 俺も嬉しくなってきて大きな声で応えた。


「よし! ワンさん罠の発見と解除よろしく! 俺らはその間に昼飯の用意をしているよ!」


「了解でやんす! こっちは任せてくだせぇ、きっちり仕事しやすよ!」


 足取り軽くドラゴンの巣に走っていく、巣の手前からは慎重な足取りに変わり辺りを調べ始めた。

 俺達は昼飯を作るべくキャンプの用意に取り掛かる。

 その前にアニーが俺達にクリーンの魔法をかけてくれた。

 色々ついていた体はすっかりきれいになりスッキリする。

 アトラスさんも魔物の血を取ってもらいご機嫌になった。


 簡易的なかまどでスープを作りテーブルにパンを載せていく、焚き火を焚いて周りに厚手の敷布を敷き昼食の準備を終えた。

 凝った料理ではなく巾着袋に入った食料を皆んなで食べる予定だ。

 後はワンさんが戻ってくるのを待つばかりで、皆んなでおとなしく待っていた。



「旦那~! みてくだせぇ、こんな大きな魔石が取れやしたよ!」


 ワンさんが頭の上に何やら大きな光る物体を掲げながら小走りに近付いてくる。

 注意してみると掲げられているものは魔石で国王に献上したものよりも更に大きな物だった。


「旦那! アースドラゴンの魔石でやんす! こんなに大きい魔石見たことありやせん!」


「なにこれ! すごすぎじゃない? ワンさんの顔より大きいわ!」


「綺麗ですね透き通ってますよ、ワンさんの顔が魔石を通してでもよく見えますよ」


「すごいね! リサこんな大きな物見たことないわ!」


 女性陣はすっかりドラゴンの魔石に夢中だ、セルフィアがワンさんから魔石を奪い取り上に掲げて喜んでいる。


「旦那、これだけじゃありやせんよ、これ見たらぶったまげやすよ」


 ベルトの後ろに隠していた物を俺の目の前に急に取り出した。

 それはドラゴンの前足の爪で俺の二の腕と大きさが大して変わらなかった。


「すごいお宝じゃないか! 光になって消えなかったのか?」


「旦那これはドロップアイテムでさぁ、稀に大物を仕留めると出現することがあると聞いたことがありやす」


「皆んな見てみろ、ドロップアイテムを発見したぞ」


 俺は高く掲げみんなに見せた。

 モーギュスが興味深そうに近寄ってくる。

 しかし女性陣の方はちらりと見ただけでまた魔石に群がっていった。

 どこの世界でも女性の関心は宝石のようだ、ドラゴンの爪のほうが価値あると思うのだが駄目なのかな。


「ま、まあ興味は人それぞれだからな、他になにかありそうか?」


「あのドラゴン金貨を集めるのが好きだったようでやんすよ、巣に散らばっている骨の下はほぼ金貨で埋め尽くされていやす」


「いいね金貨、新しい装備買えるね」


 モーギュストも懐が暖かくなって喜んでいる。


「アトラスさん、分配方法はどうしますか? 人数で割るのが俺達のやり方です」


『ん? 俺はいらないぞ、お前らで分けろ。持っていても使いみちなんてないからな』


 アトラスさんはお宝をいらないらしい、何度も説得したが金貨一枚すら受け取ってくれなかった。


「旦那、昼飯食べたら宝箱に案内しやすよ、何個か見つけて罠を解除しときやした。まだ中身を見てないので確認お願いしやす」


 お楽しみは残しておいてくれたらしい、快諾して食料を巾着袋から出して並べた。




 昼食を手早く済まし、お楽しみの宝箱に向かって移動していく。

 アースドラゴンの大きな魔石は俺が預かり巾着袋にしまってしまった。

 アトラスさんが俺の巾着袋を興味深そうに見ていて、女神様からもらった経緯を話すととても感心していた。


「旦那、一個目の宝箱はこれでやんす、罠はかかってなかったので中身は期待薄でさぁ」


 ゆっくりと近づき宝箱を調べる、特に珍しい宝箱でもなく作りが荒い箱だった。

 ワンさんを信用していないわけではないが慎重に宝箱の蓋を開けていく。

 この瞬間がゾクゾクして楽しくてしかたがなかった。

 仲間達も興味津々に覗き込んでいる。

 アトラスさんも中身は気になるようで俺達にかぶるように立ち上から見下ろしていた。


「銀貨と金貨だな、箱いっぱいに入っているみたいだ」


 本来なら喜ぶところだが、足元には大量の金貨がばらまかれている。

 その上を進んできたので感覚が麻痺しているらしく、みんなから落胆の声が上がった。


「次行きやしょう、次の宝箱は致死性の毒針が仕掛けられてやした。もう処理してありやすから安全でやんすよ」


 隣に少し傾いた宝箱があり、ワンさんが指さして説明している。

 致死性の毒針と聞いて少し緊張してきた。


「では開けるぞ、罠は大丈夫だよな?」


「大丈夫でさぁ、あっしを信用してくだせぇ」


 少し悲しそうに俺をみて訴えてくるワンさんに謝りながら蓋に手をかけた。

 先程の宝箱と同じで装飾のない箱は少し古びていて金具が錆びていた。

 蓋に力をかけて持ち上げようとするが何かに引っかかっているような抵抗を感じる。


「ワンさん、蓋が少し重いよ、なんか引っかかっているようだ」


「ちょっと貸してくだせぇ、あっしが試してみやす」


 そう言って俺と場所を交換する、少し力を入れた後一気に蓋を持ち上げた。

 バキッと音がして蓋の蝶番の部分が壊れて金具が飛び散る、一斉にワンさん以外の仲間達が飛び退き地面に伏せて頭を抱えた。


「みんな大げさでさぁ、蓋の蝶番ちょうつがい部分が錆びていただけでやんすよ」


 笑いながら説明してくるが生きた心地がせず、リサに至っては半べそかいて俺に抱きついてきた。

 リサの頭を優しく撫でながら宝箱に近寄っていく、他のメンバーも恐る恐る近付いてきた。


「お! 宝石でやんすね、色々な色の宝石が入っていやす」


「宝石! ちょっと見せなさい! アニー宝石があるそうよ!」


「いいですね、少し見せてください」


 セルフィアが宝箱に飛びつき中の宝石を手ですくい上げた。


「あ! ダイヤのネックレスまであるわ! アニー見てよ、どれ位価値があるかしら!?」


「ネックレスですか! セルフィア私に見せてください!」


 大興奮の二人を俺達は生暖かい目で見守る。

 いつの間にか俺に抱きついていたリサが、セルフィアとアニーの間に入って宝石を眺めていた。

 泣いていた顔は今ではニコニコの笑顔になり、ルビーらしき石をかざして喜んでいる。


(セルフィア達はどんだけ宝石が好きなんだ……、当分宝箱から離れそうにないな……」


「ワンさん次の箱に行ってみよう、三人はほっといていいよ」


「わかりやしたこっちでさぁ」


 少し奥まったところへ案内される。

 見えてきた宝箱に言葉をなくしワンさんの肩をつかんだ。


「旦那、この宝箱が本命でやんすよ、何が出るか楽しみでやんす」





 人間のひつぎほどの大きな宝箱が目の前に現れる。

 見たことのない大きさに俺は言葉をなくし、ただただ見つめることしか出来なかった。


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