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58.リサの故郷

 凶悪な迷宮からの石碑を使わない撤退を成功させた『白銀の女神』は、宴会を開き生還を祝った。




 頭が痛い、割れるようだ。

 遅く起きた俺は二日酔いの頭を抱えながら部屋を出た。


「旦那、おはようございます」


「おはよう……、あまり大きな声を出さないでくれ……」


 ワンさんの元気な声に俺の頭はガンガンと痛み、しかめ面になってしまう。

 

(人一倍飲んでいたのに何故元気なんだ……)


 ニコニコしながら近寄ってくるワンさんと連れ立って水場へ向かった。


「今日の予定はどうするんでやんすか?」


「まずギルド長に報告に行こうと思う、その時リサのことを相談する」


「あっしもお供しやす」


「そうか、よろしく頼むよ」


 部屋に戻って身支度をして再び部屋を出る。

 ちょうど向かいの部屋の扉が開き、アニーとリサが出てきた。


「おはようございます、レイン様」


「お兄ちゃんおはよう……」


「おはよう二人とも、昨日は良く眠れたか?」


「うん、お姉ちゃんたちと一緒に寝たのよ」


 嬉しそうに報告してくるリサは朝から元気だった。


「ガウガウッ」


 俺の背中に張り付いていたドラムがリサに飛びつく、少しよろけながらも受け止めたリサが、嬉しそうにドラムを抱き寄せた。

 ドラムがリサのほおを長い舌で舐めあげる。

 くすぐったそうに笑いながら水場へかけていった。


「アニー、先に食堂に行っているよ、また後でな」


「はい、すぐ行きますね」


 ニッコリと微笑んでリサを追いかけていく、アニーの後ろ姿を眺めながら大きく伸びをした。




 セルフィアが二日酔いでダウンしているので、五人と一匹で遅い朝食をとる。

 昨日の疲れがあるのか会話はいまいち弾まなかった。


 食事の後アニーがセルフィアの介護のため部屋に戻る、一緒にドラムが連れていかれた。

 モーギュストは行きたいとことがあるからと言って、そそくさと宿を出ていった。

 結局俺とワンさん、リサの三人で斜め向かいのギルドへ向かった。




 ギルドの扉を開けると中にいた探索者がざわめき出す、一斉にお辞儀をし始めリサがビックリして俺を見上げてきた。

 リサの頭を優しく撫で、何事もないようにカウンターに近付いていった。


「アメツチ準男爵様、おはようございます。今日はどのような御用でしょうか?」


 すまし顔で受付嬢が聞いてくる。

 リサがビックリして目を見開き俺を見上げてきた。


「おはよう、ギルド長に取り次いでくれ」


「わかりました少々お待ちください」


 丁寧なお辞儀をした受付嬢が裏に消えていく。


「お兄ちゃんは貴族様なの?」


 リサが少し不安そうに聞いてくる。


「そうだよ、でも今まで通りに接してくれるとお兄ちゃんは嬉しいな」


「わかったわ、今までどおりね」


 嬉しそうに微笑みながら俺の腰に抱きついてきた。


(よかった、変に気を使われてよそよそしくなったら悲しかったからな)


「旦那は女の子に好かれやすね、徳が高い証拠でさぁ」


 ワンさんが妙に感心しながらウンウンとうなずいている。



「お待たせいたしましたこちらへどうぞ」


 少し待っているとすました顔をした受付嬢が戻ってきて、ギルド長室へ案内してくれた。




「お主達よく来たな、立ってないで座れ」


「お久しぶりです、失礼します」


 ソファーに座るようにうながされ三人並んで座る。


「おお? 知らない子がいるな、なにか事情がありそうじゃな」


「ええ、そのことでギルド長に相談があってきました」



 丁寧にリサの救出状況を説明していく、石碑を使わない強行行軍にギルド長はビックリしていた。


「お主達本当に樹海の奥から徒歩で帰ってきたのか!? いやはや開いた口が塞がらないわい」


「まあ、二度とやりたくありませんけどね、でも無事リサをつれて帰れてよかったと思います」


 ギルド長は感心しきりで、顎髭あごひげをせわしなく触っていた。


「リサのことでギルド長に聞きたいことがあるんです、聞いてもらえませんか?」


「いってみろ、ワシの分かることなら何でも答えるぞ」


「ギルド長は『エレンの森』という場所はわかりますか? リサはそこで暮らしているそうです。俺たちはリサをそこに連れて行こうと思います」


「『エレンの森』とな、ちょっと待て地図を持ってくるからな」


 ギルド長は豪華な革張りの本が並んでいる書棚に向かい、引き出しを開けて中を探り始めた。

 そして一巻きの羊皮紙を持って戻ってきた。


「これは『オルレランド王国』と周辺諸国を網羅もうらした最高機密の地図じゃ、本来は見せることはできんがお主たちならいいだろう、いつも面白い迷宮の話を持ってきてくれるからな」


 茶目っ気たっぷりに片目をつむりギルド長が地図をテーブルの上に広げた。


(ギルド長おちゃめだな、仲良くしていてよかった)


 ワンさんと俺も加わり人海戦術で大きな地図を調べ始めた。

 ミドルグ市の近場にはエルフたちが暮らす森はなく、当然『エレンの森』も記載されていなかった。


「う~む、おかしな話じゃな、王国にもその他の国にも『エレンの森』は載ってないようじゃ、リサや本当に『エレンの森』で間違いないのじゃな?」


「うん、間違いないわ……、ちゃんとお父さんに教えてもらったわ……」


 心細そうに答えるリサは今にも泣き出しそうだ。


「困ったのう……」


 これにはギルド長もお手上げで考え込んでしまう。

 しばらく考えていたが突然膝をポンと叩き俺に言ってきた。


「肝心なやつを忘れていたぞ、お主ら『迷宮都市図書館』の館長メアリー・アイスを知っておるか?」


「ええ、彼女とは知り合いです、以前色々教えてもらいました」


「彼女は地理と歴史が専門なんじゃ、きっと『エレンの森』のことを知っているはずじゃ」


 たしかに彼女なら知っているかもしれない、行って聞いてみる価値はありそうだ。


「ギルド長、今から行ってみます。迷宮の話はまた明日にでも話に来ますよ」


「そうか、力になれなくてすまんの、リサの故郷の場所がわかるのを祈っているぞ」


 ギルド長にお礼を言ってギルドをあとにした。




 その足で『迷宮都市図書館』へ向かう、受付でメアリーさんを呼んでもらった。


「レイン様、お久しぶりでございます。準男爵位に叙されたと聞きました、おめでとうございます」


「ありがとうございます、メアリーさんに聞きたいことがあってきたのですがよろしいですか?」


「もちろんでごさいます、こちらへどうぞ」


 いつも丁寧に接してくれるメアリーさんが、変わらず別室に案内してくれる。

 図書館の応接室へ通された俺達は、豪華なソファーに座ってメアリーさんと対峙たいじしていた。

 メアリーさんはニコニコとしているが、いつもよりよそよそしい、貴族になって初めてきたから固くなっているのだろう。


「メアリーさん、さっきは受付の人の手前よそよそしくなったけど、普通に話して下さい、そのほうが俺も気が楽なんです」


「そうですか……、レインさんがそういうのなら公の席以外は少し砕けた話し方に戻しますね」


 ニッコリと笑い俺を見てくる、メアリーさんもよく見ると相当な美少女だよな。

 異世界の美女率高すぎるな。





 果たしてメアリーさんはリサの故郷を知っているだろうか、不安そうなリサの小さな手を握ってメアリーさんと話し始めた。

 

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