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51.女神の盾

 謎の手紙を受け取った俺は、手紙にしるされていた場所へ行くことにした。

 その前にモーギュストの鎧を直すことにした。




 翌日の午前中、防具屋にモーギュストとともに出かけた。

 他の三人はセルフィアが二日酔いでアニーがその看病、ワンさんは調べ物があると言って今日は別行動だった。


 防具屋で損傷した魔法鉄鋼の鎧と盾を主人に見せると、その破壊の甚大さに開いた口が塞がらない主人は、修理には相当の時間と費用がかかると言ってきた。

 モーギュストと相談した結果、新しく防具を新調することに決まった。

 今回はパーティーのお金を使って店で一番いい鎧を買うことにした。

 その決定にモーギュストは恐縮してしまい、説得に数十分かかったほどだった。


 購入する鎧は以前から目をつけていた店の一番目立っている所に飾られている商品だ。

 値段は冗談のような高値で、店としても売る気はないのだろう。

 性能はこの防具屋で一番良く、他の防具を引き離してダントツだった。


 購入決定した全身鎧をモーギュストにつけさせる。

 材料は魔法鉄鋼をベースにして、アダマンタイトをふんだんに使った合金だ。


 アダマンタイトとはこの世界で一番硬いと言われている金属で、鉄に少量混ぜるだけで強度が桁違いに上がってしまう魔法金属だった。

 その魔法金属を魔法鉄鋼九割、アダマンタイト一割という破格の割合で混ぜ合わせた、強度と価格共に桁違いに高い化け物鎧を購入したのだ。


 防具屋の主人はまさか売れると思っていなかった店の看板防具が売れてしまい、びっくり仰天して隣の道具屋を切り盛りしている奥さんに報告しに行ってしまった。

 奥さんをともなって戻ってきた主人に介助してもらいながら鎧をつけていく。

 防具を装着するたびにモーギュストが唸り声を上げていった。

 彼はアダマンタイトの鎧を着けるごとに、これまでにない最高の防御力が身についていくことを感じ取り、唸らずにはいられなかったようだ。

 全てを装着して固定の呪文がかけられる。

 全身が青黒あおぐろく光るモーギュストは小さな戦術兵器に変わっていた。


 更に同じ材料でできている壁盾を購入する。

 壁盾とは大盾より大きな盾のことで、防御力がもっとも高い盾のことだ。

 形は長方形でわずかにカーブしている。

 盾の下側部分にスパイクが収納されていて、操作するとスパイクが勢いよく飛び出してくる仕様だった。

 そのスパイクを地面に突き刺すと完全に固定され、並の攻撃では微動だにしなくなる。

 まさに一つの要塞とかしてしまうのだ。

 



 立て続けに高額商品を購入されてしまい、防具屋の主人の顔色は壁盾のように青黒くなって、今にも倒れそうになってしまった。

 動けなくなってしまった主人の代わりに奥さんが会計をしてくれた。

 その顔は布袋様のように満面の笑みを浮かべて、凄く幸せそうだった。


 あらためて完全武装したモーギュストを見る。

 その姿はどこから攻撃しても一切傷はつけられそうにない完全な金属の塊だった。


「レインさん……、ホントに買ってもらっていいの? 後でみんなに怒られるよ……」


 金額が凄いので怖くなったモーギュストが、顔が見えなくても分かるほど動揺している。


「大丈夫だよ、モーギュストは『白銀の女神』の盾なんだ、常に最高の存在で居てもらわないとこっちが困ってしまうんだよ。間違いなくみんなも俺と同じ意見さ、堂々としていてくれ」


「うわ~ん……、いつもありがとう。次はあの騎士たちの攻撃も受けきってみせるよ……」


 鎧の中で号泣しながらお礼を言ってくるモーギュストの背中を、そっとさすりながらいい買い物をしたと思った。

 モーギュストを防御力の怪物に仕立て上げ、満足した俺は足取り軽く宿に戻っていった。




「ただいまサムソンさん、モーギュストがパワーアップしたよ」


 誰かに自慢したくて宿屋の主人のサムソンさんに要塞化したモーギュストを見せびらかした。


「うわっ! 凄いじゃないか! みてるだけで鳥肌が立つよ、いったいいくらしたんだい?」


 軽く引きながらサムソンさんが鎧の値段を聞いてくる。


「そうだな、この街で一般人が買える一番いい物件より少し高いくらいかな」


「ひぇ~、それはヤバイ値段だな、そんなの買って懐が傷まないのかい?」


「俺達は命を張っているからね、報酬だって桁違いだよ」


 実際巾着袋の中にはまだ換金していない魔石が山のように眠っていた。

 買い取り屋に値崩れを起こすといけないからと言われ、仕方なく巾着袋の肥やしにしているのだ。

 既に迷宮に潜る目的は金銭ではなく、未開の地を探索する刺激に移行していた。



 サムソンさんと話していると、二階からセルフィアとアニーが降りてきた。

 セルフィアは二日酔いがだいぶ良くなって、はっきりとした顔つきになっている。


「あ! モギュッち新しい鎧になってる! かっこいいわ!」


 階段を駆け下りてきたセルフィアがモーギュストをいろいろな角度から眺めて騒ぎ始めた。


「今度の鎧も凄く良さそうですね、これでモギュさんが怪我をしなければ嬉しいのですが」


 アニーは僧侶らしくモーギュストの体の心配をしている。


「二人に相談しなかったけど、この鎧パーティーの積立金で買ったから」


「そうなの、モギュッちに負担かからなくてよかったわ」


「積立金で購入するのは私は賛成ですよ、モギュさんの装備は一番お金がかかりますからね」


 何の問題もないように二人が話してくる。


「な、言った通りだろ? 誰もお金のことで責めるような仲間は『白銀の女神』には居ないのさ」


「ホントだね、みんな優しいね」


 会話をしながら食堂に入っていく、モーギュストは宿屋の床が抜けないように鎧を脱いで俺に渡してきた。

 重くて持てないので巾着袋に自分で入れてもらう。

 俺が巾着袋に触っていれば誰でも物を入れることが出来ることを、最近わかってモーギュスト鎧を預かることが増えていた。



 食堂で話しているとワンさんが宿屋に帰ってきた。


「ワンさんこっちだよ、早く食べよう」


 ワンさんを手招きして食事を始める。

 部屋に一旦戻ったワンさんは急いで食堂に入ってきた。


「ワンさん、モーギュストの鎧、新しく積立金で買ったからね」


「そうでやんすか、いいの買えやしたか? モーギュストにはあの店の一番いいやつを買ってほしいでやんす」


「ワンさんもそう思うだろ? だと思ったから一番いい鎧と盾を買ったよ」


「それは良かったでやんす、後で見せてもらいたいでさぁ」


「うん! 後で見せてあげるよ、すごい派手でかっこいいよ」





 嬉しそうなモーギュストを見ながらみんなで食事をする。

 食べ終わった後は宿屋の前で鎧を着て、ワンさんに見せたりして夕方まで時間を潰した。





ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー

【モーギュストの現在の装備】


アダマンタイト合金の全身鎧フルプレートアーマー


アダマンタイト合金の壁盾


ミスリルの短槍

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