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128.思わぬ強敵

 無事村娘たちの安全確保ができた、隠密行動を解除した『白銀の女神』は、ゴブリン殲滅作戦に移行した。




「ゴォォォォン」


 村娘達にした暴行の報いをゴブリン達にしていると、洞窟の奥から咆哮ほうこうが聞こえてきた。


「どうやらこの洞窟に巣食っているのはゴブリンだけではないようだな」


「旦那、どうしやすか? このまま一気に蹴散らしやすか?」


「そうだな……」


 俺は壁際で震えている村娘三人を見る。

 娘たちは裸で抱き合い、声を出さずに泣いていた。



「もう大丈夫ですよ」


 アニーが三人に近づき『キュア』をかけていく、みるみるうちに頭の傷や体の痣が消えてきれいな肌になった。


『クリーン』


 更に洗浄の魔法をかけ透き通った若い肌に戻っていく、その様子を凝視していたらセルフィアが突然目を塞いできた。


「レインは見ちゃ駄目よ!」


 娘たちをいやらしい目で見ていたのを見つかってしまった。


「アニー、これを着せてやれ」


 ごまかすために巾着袋から予備の衣服を人数分取り出す。


「わかりました」


「リサも手伝うわ!」


 女性陣三人は娘たちを取り囲み服を着せていく、何度もお礼を言いながら娘たちは身支度をしていった。


「戦えない娘たちが心配だな、やはり一旦外へ出るぞ、ゴメスさんに娘たちを預けて仕切り直しする」


「わかりやした」


 一時撤退が決まり速やかにその場を離れる、娘たちを隊列の真ん中にして守りながら洞窟内を足早に進んだ。



 それほど時間はかからず洞窟の外へ出ることが出来た。

 周囲の安全を確認すると一気にゴメスさんのいる茂みに移動する。


「ゴメス、戻ったぞ」


 地面に伏せているゴメスさんに声をかける。

 不意に声を掛けられたゴメスさんはびっくりして飛び上がり、こちらに駆け寄ってきた。


「レイン様ご無事で何よりです。おお! お前達無事だったのか!?」


「おじさん!」


 娘たちがゴメスさんに駆け寄る。

 気を張っていた娘たちは、見慣れた顔を見て一気に緊張の糸が切れたようで、大きな声で泣き始めた。


「よかった! 怪我はしていないか? ひどいことされなかったか?」


 三人を抱きしめながら男泣きに泣いているゴメスさんは、安心したようで四人揃って地べたに座り込んでしまった。


「ゴメス、俺達はこれから巣穴に巣食うゴブリン共を殲滅することにする。今しばらくここで娘たちとともに隠れているように」


「ははぁ~、わかりました。仰せのとおりにしています」


 俺の言葉に飛び上がって地面に頭を擦り付ける。

 娘たちも正座をして深々と頭を下げていた。


「セルフィアたち三人はここに留まって娘たちを守ってくれ、アニー『神聖防壁』を展開しろ、万が一ゴブリン達の他に手強い敵が現れるかもしれないからな」


「わかりました」


 アニーは大きくうなずくと無敵の障壁を張るための祈りを開始する。


「セルフィア、リサ、みんなのことをよろしく頼む」


「まかせなさい」


「うん、任せてお兄ちゃん!」


 ふたりともやる気満々で大きくうなずいた。


「よし! これから殲滅作戦に移行する。雑魚どもに地獄を見せてやるぞ!」


「わかりやした!」


「待ってました!」


 ワンさんとモーギュストが飛び上がって喜んでいる。

 残虐スイッチが入ってしまった二人は、やる気満々で目がギラついていた。

 

 ふいに辺りに風が巻き起こりドラムが空から降りてくる。

 ゆっくりと下降してきたドラムは俺の背中に張り付いた。


「一緒に行く」


「そうか、それじゃドラムも一緒に行こう。頼りにしてるぞ」


「うん、まかせて」


 少々過剰戦力になってしまったがまあいいだろう。

 女性陣を残し、魔物が待ち構える洞窟内部へ足を踏み入れていった。




 洞窟の内部をモーギュストを先頭に進んでいく。

 俺とワンさんは横に並び、ドラムは俺の頭上をプカプカと浮遊していた。


「もうすぐ村娘たちを確保した部屋に差し掛かる、更に奥へ進まなくては魔物共はいないだろう、気を引き締めていけ」


「オッケー」


 モーギュストが明るい返事をしてくる。

 いつもの様に彼は緊張することはないようだ。


「旦那、さっきの雄叫びは何なんでやんすかね、ゴブリンの叫び声とは違うような気がしやす」


「確かに俺も聞いたことがない咆哮だったな、未知の魔物の可能性がある。なめてかかったら痛い目にあうぞ」


「わかっていやす、気を付けやす」


 更に洞窟の奥へ進んでいく、洞窟の幅はいつまでも大きなままで、狭い穴蔵を好むゴブリンにはふさわしくなかった。




「旦那、前方から複数の足音が近づいてきやす、数えられないくらい多いでさぁ」


「面白くなってきたね。レインさん僕の槍、出してよ。これだけ広ければ使えそうだよ」


「そうだな、ちょっと待ってくれ」


 俺は一旦立ち止まると、巾着袋からモーギュストの愛用しているアダマンタイト合金の短槍を取り出す。

 短剣と引き換えに渡すと更に壁盾を取り出した。


「サンキュー、これで思いっきり暴れられるよ。見たことがない敵が出てくればいいな」


 ご機嫌で槍を振り回しながらつぶやく、戦闘狂の彼は強敵と戦いたくてしょうがないようだった。


「ゴブリンの大群が接近中だ、各自撃破しろ」


「わかりやした」


「オッケー」


「わかった」



 道幅いっぱいに溢れかえったゴブリンたちが、押し合いへし合いしながらすごい勢いで迫ってきた。

 なにかに追い立てられているように殺気立っていて、戦意はかなり高い。


 俺は『身体強化』を高め刀を抜き放つ、魔力を刀身に込めていくと刀は淡く光だし小刻みに震えだした。

 剛力の小手にも魔力を流し万全の態勢にする。


「さっきみたいにいたぶり殺すのは無しだ、効率よく殲滅しろ。ゴブリンの後ろからなにか強い気配が近づいているぞ」


 俺の指示を聞きモーギュストが腰溜めに短槍を構える。

 それは彼の必殺技、『連撃槍龍突れんげきそうりゅうとつ』の構えだった。



 地鳴りのような足音が間近に聞こえる。

 もう十数メートルの距離までゴブリンたちが迫ってきた。


「一番槍はもらったよ! 『連撃槍龍突』!」


 モーギュストが腰だめから大技を繰り出す。

 高速で打ち出される穂先は不可視の衝撃波をともなってゴブリン達に降り注いだ。

 ゴブリンたちが次々と爆散していく。

 不可視の槍先は通常の射程距離の数倍まで衝撃波を打ち出し、防御力の低いゴブリン達は肉片となって四方に散らばっていく。


「まだまだこんなものじゃぞ! 『シールドチャージ』!」


 槍で細切れにされたゴブリン達に突っ込んでいく、壁盾を前方に突き出しスキルを発動した。


 ドンッと鈍い音がしてモーギュストを中心に爆発が起きる。

 ゴブリン達はその爆発に巻き込まれて、粉々に消えて無くなった。


「やったー! 同時殲滅の新記録だよ、レインさん見てた!?」


「ああ、見てたよ。ゴブリンが全て消しとんだな……」


「少しぐらい残しておいてくれてもいいんでやんすよ……」


 確実に百匹以上いた大群が一瞬のうちに肉片になってしまった。

 辺りはゴブリンの肉と臓物と血潮で水たまりのようになっていた。

 くるぶしまでぬかるみに浸かっているが、別段なんとも思わない。

 アンデッド達の腐肉に比べれば、ゴブリン達の臓物なんて可愛いものだった。


「さて、真打ち登場だな。もうすぐデカブツがやってくるぞ」


 前方からゆっくりとした足取りで巨大な何かが近づいてくる。





 暗い洞窟の奥から大きな鈍い足音を響かせて、なにか巨大なものが近づいてくる。

 俺達は現れる敵を固唾かたずを飲んで待ち受けていた。

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