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117.『城』

『コロニー』の確定ができた、更に奥へ探索していった。




 探索して一週間後、とうとう下へ向かう階段を発見した。

 迷宮の作りが複雑だったのでそれなりに時間はかかったが、城の地下は樹海に比べ規模が小さく、探索していくとそれほど大きくないことがわかってきた。



「今回の遠征はついているな、こんなに早く次の回への階段が発見できるとは思わなかったよ」


 ワンさんと並んで階段下を眺める。


「全くでさぁ、次はいよいよボスでやんすね。緊張してきやした」


「まあすぐに攻略することはないと思うよ、もう少し戦力を上げてから挑むからね」


「了解しやした、早速罠がないか見てきやす」


「よろしくお願いするよ、気を付けてくれ」


「行ってきやす」


 ワンさんが罠解除用の手袋をはめ、手首を回しながら階段を降りていく、数歩進んだところから慎重にあたりを調べ始めた。


 今回発見した階段は今までより豪華な作りをしていた。

 階段の幅は二倍以上、三人が横に並んで降りてもまだあまりがあるほど幅広だった。

 階段の段数も多くていつもの二倍以上あるように思う。

 階段下は大きくて立派なドアが見え、これもいつもと感じが違った。

 いつもは闇の中に階段が消えていくようになっていて、そこを通り抜けると次の階層へ行けるようになっている。

 しかし今回は一番下までよく見えて、更に扉が付いていた。

 いつもと違う仕様に一抹の不安が頭によぎるが、ワンさんの報告を待って下層への階段かどうかの最終判断をすることにした。


 一段ずつ降りていくワンさん。

 ワンさんが止まって何かをすると罠が作動して仕掛けが飛び出してきた。

 床から勢いよく炎が吹き出したり、極太の槍が勢いよく壁から出たり。

 見ていて心臓に悪いことばかりが起きる。

 しかし罠はずしのプロであるワンさんは確実に罠を回避していく、いくつもの罠を解除して一番下までたどり着いた。


 念入りに扉を調べ罠を確認していく、安全性が確認されたようでワンさんが手を振ってこちらを見てきた。


「どうやら終わったみたいだな、みんな慎重に階段を降りるぞ」


 ゆっくりと階段を降りワンさんの元へ近づいて行った。



「旦那、少々問題が発生しやした。扉の罠は問題なく外せやしたが、開けるためには鍵が必要でやんす」


「鍵? 何だそれは」


「扉の真ん中を見てくだせぇ。ちょうど握りこぶしぐらいの窪みがあるのが見えやすか?」


「ああ、たしかに穴が空いているな」


「あそこに何かをはめ込まなければこの扉は開かないようになっていやす」


 ワンさんが指差す先には丸い穴が開いていた。

 そこに何かをはめ込まなければ扉を開ける作業ができないらしい。

 駄目もとで巾着袋から色々な物を出して穴に押し込んで見る、しかし当たり前だが何も変化がなくもう一歩のところで行き詰まってしまった。




「困ったな……、どうすればいいんだ……」


 心底困って天を仰ぐ、扉の上を何気なく見るとかすれた文字が微かに読めた。


「あれ? あんな所に古代文字があるぞ」


 扉ばかりに集中していて周りを見ることがなかった。

 慎重に周囲を調べていればこんなヘマはしなかっただろう。


「どれでやんすか? あれは文字なんでやんすか……」


 ワンさんは俺が指し示す先を見ながら唖然としている。

 古代文字を読めないワンさんはかすかに壁に残る文字を認識することが出来なかったようだ。


「かなり風化しているからワンさんはわからなくてもしかたがないよ、今から読める所を読んでみるよ」


 集中して壁の文字を読んでいく、かなり苦戦したがなんとか読むことが出来た。


「ええと……、『新たなる……、求める……、守護者の……、心臓を掲げ……』って書いてあるな」


 断片的だが意味がわかるように読むことが出来た。


「どういうことかしら、守護者の心臓って何なの?」


 セルフィアが謎解きに行き詰まって首を傾げている。


「そもそもこの先は二十階層なのでしょうか? 決めつけるのはまだ早い気がします」


 アニーが冷静な問題提起をしてくる。

 他のメンバーたちもうんうん唸りながら一生懸命考えていた。


「守護者ってサラマンダーや大司教みたいなボスのことじゃない? どこかにボスが居てそいつを倒すともらえるアイテムが鍵なんだよ」


 妙に説得力のある推理をモーギュストが披露する、みんなその意見に驚きつつ納得していた。


「なるほど、その線が一番しっくり来るな。まとめるとこの階層には他に道があり、その先にボスが待ち受ける二十階層がある。そいつを倒してアイテムを獲得してこの扉に取り付けるということか」


 声に出して整理するともうそれしか答えはないような気がしてきた。

 みんなもうなずいて反対するものは居なかった。


「よし、更にこの階層を丁寧に探索するぞ、ここからは忍耐力がいる探索になる。みんな覚悟してくれ」


「「「「「「了解!」」」」」」



 一旦『コロニー』に引き返した、明日からは虱潰しらみつぶしに探索をするつもりだ。

 早めの食事を取りたっぷりと休息をとって明日からの探索の備えた。




 ここで余談だが俺は十九階層のことをシンプルに『城』と名付けた。

 見た目そのままだがこの名前が一番しっくり来るのであえて複雑な名前はつけなかった。

 そして『コロニー』のことは『詰め所』と命名した。

 これも見たまま、一番最初に見た感想を採用した。

 仲間たちも特にこだわりはないらしく賛成してくれた。




 迷宮はだいたい探索し終えたわけだが、まだ探索していない場所もある。

 そこを中心に丁寧に探索していった。




 探索を再開してから二日後、モーギュストの唱えた仮説が信憑性を帯びてきた。

 丁寧に探索をした結果、この階層から上へ向かう階段を発見したのだ。


「やったわ! 今度こそボス部屋へ行けるんじゃない!?」


 諦めかけていた進路が確保されてみんな飛び上がって嬉しがった。

 例によってワンさんに調べてもらい階段を慎重に上がっていく。

 否が応でも期待は高まっていった。

 階段を上るにつれて辺りが明るくなり眩しさに目を細めた。

 最後の数段を軽快に駆け上がると、そこには想像していた場所とはかけ離れた光景が広がっていた。



「あれ……? 何なのここは……」


 先程まではしゃいでいたセルフィアがビックリして言葉に詰まった。


「見たまんま城の地上部分だろうな……」


 俺は素直な感想をつぶやく、みんなの意見も同じで反論してくるものは居なかった。


 俺達の目に写った光景はまさにお城の中、豪華な粧飾を施された室内だった。

 階段がつながっていたのはムダに広い廊下の一角で廊下は大理石で出来ていた。

 その床は鏡のように磨かれていてちょうど『大聖堂』の礼拝施設の床と同じだった。

 しかしこちらは窓から明るい光が降り注いでいて陰気な感じがしない。

 ここが迷宮内だと忘れるほど穏やかな光景が広がっていた。



「ここが『城』の一階部分なのでしょうか?」


「やけに静かでやんすね、廊下の端まで誰もいやせんよ」


 驚き戸惑いながらもみんな少しずつ冷静さを取り戻し辺りを観察し始める。


「魔物の分布が変わったかもしれない、慎重に進むぞ」





 俺は『城』の巨大な外観を思い出し、これからの探索の困難さを感じて深いため息を吐くのだった。

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