表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
117/280

115.再会

 十九階層で『コロニー』らしき施設を見つけた。

 樹海に戻りウサギを捕まえることにした。





「あれ? アトラスさんの家の壁が見えて来たわよ」


 夢中で走り回っていたので気付くのが遅れたが、たしかに懐かしい丸太の壁が見えてきた。

 俺の『気配探知法』にアトラスさんが引っかかり近付いてくるのがわかった。


「アトラスさんが家から出てきたぞ、せっかくだから挨拶していこう」


 俺の提案に仲間たちが歓声を上げる。

 みんなアトラスさんに早く会いたくてスピードを上げて走っていった。



 壁の一角にある大きな木の門の前へ到着する。

 到着と同時にかんぬきを外す音がして扉がゆっくりと開いていった。


『おお! お前ら久しぶりだな! こんな遅くにどうしたんだ? とりあえず中へ入れ』


 アトラスさんが嬉しそうに俺達を壁の中へ招き入れる。


「お久しぶりです! 近くへ来たので寄ってみました。アトラスさん元気そうですね」


 久しぶりに見るアトラスさんがは全く変わっておらず元気そうだった。

 リサが俺の横を走り抜けてアトラスさんの足に飛びつく。


「おじさん!」


 嬉しそうに笑ってアトラスさんを見上げた。


『おお! リサか、元気だな! わはははは!』


 アトラスさんはリサを抱き上げると肩の上に座らせて豪快に笑った。


「師匠! お久しぶりです!」


「アトラスさん! 会いたかったよ!」


 ワンさんとモーギュストが泣きながらアトラスに駆け寄っていく。

 セルフィアとアニーも嬉しそうに近づいて行った。


『おお! お前ら元気だったか? だいぶ修羅場をくぐってきたようだな』


 お互い言葉はわからないが気持ちでつながっている。

 嬉しそうに話す仲間たちを俺は満足しながら眺めていた。




 興奮が一段落した後アトラスさんに樹海へ来た理由を簡潔に話した。


「ウサギがなかなか見つからなくてここまで来てしまいました。変な時間に突然来てしまってすいません」


『そうかそうか、今日はもう遅いから泊まっていけ、熊のシチューを作ってやるぞ』


 母屋へ歩きながらアトラスさんが誘ってくる、別段断る理由もないのでお言葉に甘えて泊まることにした。

 仲間たちに伝えるとまた興奮して歓声が上がる。

 アトラスさんも嬉しそうに笑っていた。




 懐かしい母屋へ入り巨大な長椅子によじ登る、セルフィアやアニーも簡単に飛び乗り全員がテーブルを囲んだ。


『今お茶を入れてやるから少し待っていろ』


 アトラスさんが嬉しそうに厨房へ消えていく。

 その後姿を見ながら懐かしさで顔がニヤけてしまった。


「懐かしいわね、まだ一年経ってないのに凄い昔のことのような気がするわ」


「そうですね、今になって思えば辛い修行も懐かしく思いますね」


 セルフィアやアニーも食堂を見渡しながら感慨深そうに呟いている。

 リサははしゃぎすぎて疲れてしまい、俺のひざの上で小さな寝息を立てていた。



『お茶が入ったぞ、みんな飲め』


 大きなおぼんに美味しそうな香りのお茶を乗せて、アトラスさんが戻ってきた。

 みんなの前のテーブルの上に次々にお茶を置いて、アトラスさんも椅子に座った。


「アトラスさん、あれから俺達樹海の奥深くまで探索してきましたよ、今は巨大なお城中を探索しています」


『そうか、お前らあそこへ入ったんだな、だいぶ強くなったのも納得できるな』


 びっくりすることにアトラスさんは城の事を知っていた。

 俺達の知っていることをアトラスさんに話していく。


「今『コロニー』らしき部屋を見つけてその確認作業をしているんですよ、それでウサギが必要になってここに戻ってきたんです」


『そうか、あそこはなかなか手ごわい敵が出てくるからな、慎重に探索しろよ』


 俺の話を聞いてもアトラスさんは探索を止めるようにとは言ってこなかった、それだけ俺達が強くなったという証で少し誇らしく思った。


 厨房から食欲をそそるいい匂いが漂ってきた。

 熊のシチューが出来上がったらしくアトラスさんが席を立つ。

 鍋いっぱいのシチューを持って戻ってきたのを見て仲間たちが歓声を上げた。

 アトラスさんは久しぶりのにぎやかな食卓にとても嬉しそうで、機嫌よくシチューを皿に盛ってテーブルに並べていった。



「「「「「「「『いただきます!』」」」」」」


 アニーの食前の祈りの後、一斉にシチューを食べ始める。

 寝起きのリサにシチューを食べさせると、半分寝ながら黙々と食べ始めた。

 かわいい小さな口にスプーンを持っていくと大きく口を開けてシチューを食べる、黒パンも小さくちぎって交互に与えていった。


「レイン様、あ~んして下さい」


「レイン、あ~ん」


 セルフィアとアニーが交互に俺にスプーンを差し出して食べさせてくれる。

 懐かしい光景にアトラスさんが嬉しそうにこっちを見ていた。



 大きなベッドに滑り込み眠りにつく、全てが懐かしくて落ち着くのでいつもより眠りにつくのが早かった。




 朝早く起きだした俺は、顔を洗うために水車小屋のある小川へ歩いていった。

 小川にはワンさんとモーギュストがすでにいて挨拶してくる。


「旦那おはようごさいやす」


「レインさんおはよう」


「おはよう二人共、今日も早いな」


「師匠の家を出発するまで手伝いをしやす、畑の世話を今からしやすよ」


 二人とも大きな鎌を持ってアトラスさんの畑の草取りをするらしい、俺もお世話になっているアトラスさんの役に立ちたいので、草取りをすることにした」


 『身体強化』を高めてどんどん草を刈り取っていく、三人で手分けして壁の中の草を綺麗さっぱり刈り取った。


『お前ら朝食ができたぞ~、早く食え~』


 アトラスさんが母屋から顔を出し俺達を呼んでいる。

 元気に返事をすると急いで母屋に駆け込んでいった。




 食事を食べた後は樹海に入りウサギを捕まえることになった。

 アトラスさんに先導されて樹海に分け入っていく。

 さすがは猟師のアトラスさん、すぐにウサギを見つけ簡単に生け捕りにする。

 発見するコツなどを聞きながら樹海をゆるく探索した。



「アトラスさん、ありがとうございました。また寄らしてもらいます」


「おじさんまたね」


「師匠お元気で」


「アトラスさんまた来るね」


 門の前でアトラスさんに別れの挨拶をする、仲間たちは名残り惜しそうな様子でアトラスさんを囲んでいた。


『おうまたな、いつでも来いよ』


 アトラスさんに見送られながら樹海のふもと目指して進んでいった。



 ワンさんの背中には子牛ほどあるウサギが足を縛られて吊るされていた。

 ときおり暴れるが基本的におとなしく逆さになっていて、鼻をヒクヒクさせながらつぶらな瞳で樹海の景色を見ていた。


 リサがワンさんの後ろに張り付きウサギの背中をなでている。

 フカフカもふもふの毛並みはとてもさわり心地が良さそうだった。



 樹海のふもとの崖に戻り石碑で十九階層へ飛ぶ、動物を一緒に転移させても時空の狭間(はざま)に飛ばされることは無いそうで、無事に霊廟れいびょうへたどり着くと慎重に詰め所らしき部屋へ進んでいった。



「よし、『退魔の香』を焚いてくれ。それからウサギが逃げ出さないようにな、野菜も少し置いておこう」


 巾着袋から色々な野菜を出して部屋の中央の床に置く、ウサギを紐で縛ると長椅子の足に繋いで詰め所を後にした。





 探索をしながら霊廟に戻る、遺跡へ飛んでその日はそこでキャンプをした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ