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真の名  作者: ら+の=くま
6/145

超難問

6話目になります。ごゆっくりお楽しみください。

「もー、せっかくの感動の再会シーンだったのにぃ、、、」

昨晩から何度目だろう、僕が先生のお家にお邪魔したとき真奈さんはまだぶつぶつ言っていた。


昨晩はあのあと、そのままの流れで長老会が始まり、真奈さんも僕も先生も同席した。

長老会の議題は当然真奈さんと銀のマナに関する情報収集についてだった。

おおまかに次の4点が話し合われた。

・真奈さんは今回はお試し召喚であり、魔法の習熟、この星の風習や文化についての勉強、

 星の抱える問題の把握がメインの課題。

・銀のマナの使い方、龍脈の探り方などについては各国単位で長老を中心に行う。

・情報交換は適宜国同士で行ってよいが、できるだけ情報はオープンにする。

 他の星、他の世界とも積極的に情報交換する。

・原則、本問題に関する情報は長老会および今いる人員以外に漏らしてはいけない。


会議の場では真面目に話を聞いていたが、いきなり出席させられた謎の会議の中心が

自分で、しかも遊びに来たんじゃないことをそこで初めて知ったから、もっと機嫌を

損ねちゃったんだ。(この点は失敗したなぁ、と後悔しまくり)

ともかく会議中も帰路も真奈さんは終始先生にべったりで僕の方を見ようともしなかった。


いずれにせよ真奈さんは(家に泊めるわけにいかないし)、はじめからこの街にいる間

先生の家で寝泊まりする予定だった。

ともかく昨晩は会議もあって遅くなったから僕は途中で僕の家の方に別れて帰った。

(家の方にはあらかじめ夜の星座を眺める会に参加する、という話を通してもらってある)

で、今後のことを話し合うため朝から先生の家に来たら、冒頭のあれ、だよ、、、ふぅ

昨晩から耳タコなんだけど、バリエーションは次の5パターン

・再会のシーンがだいなし(姿が違う、声も違う(声変わりだもん))

・遊びに来いっていうから楽しみにしてきたのに修行?勉強?なにそれ

・夏休みとは言え、12日間も家を空けるアリバイ工作、大変だったんだから

・いきなり偉い人の会議の中につっこまれた

・銀のマナなんて知らない

よくよく考えると、全部自業自得だから早いところ謝って話を先に進めたいところ

なんだけど、重なっちゃったお怒りが複雑にからまりすぎてこんがらがった毛糸より

手のつけようがないように感じちゃう、、、しかも何故か先生まで

「そうだ、ニャンパネルラが全部悪い」

とかいじりモードのスイッチ入れてくるし、、、泣きたい。


かと言って放置もできない。まずは一の矢を放ってみることにする。

「真奈さん、本当、ごめん、お詫びってわけじゃないけどこれ、この地方の名産で

 作ったケーキ。今の時期しか食べられないんだ。みんなで食べようと買ってきたん

 だけど、気に入ってくれたら僕の分、真奈さんに上げるよ?」

話してる最中も僕の方は一切見なかったが、ケーキだけは見てくれた。

「ふーん、だ。甘いもので釣ろうとしたってそんな簡単には許しませんよ〜。

 もちろん食べるけど。何、合う飲み物も買ってきてくれたんじゃないの?」

「あ、飲み物は普通に入れたほうが美味しいかなって思って、、あの、先生、紅茶

 ありますか?」

「おう、あるぞ、台所も使っていいからな」

うわ、先生まで僕をパシリにする気まんまんだ、、しかし今は僕がやるしかない。

「真奈さん、紅茶、大丈夫?うん、今入れるからちょっとだけ、待っててね。

 台所おかりしまーす、、、」

初めて使う先生の家のキッチンでへどもどしながら何とかお茶を入れる。

「お待たせいたしました。先生も、どうぞ」

「おう、気が利くな。では馳走になろう」

「いただきます」

真奈さんは顔はつんけんしたままだが、ひとまず口はつけてくれるようだ。

ちゃんといただきますを言うあたり、育ちが出るよね。今は言わないけど。

「え、なにこれ、やばいくらい美味しい」

「うん、メロンってウリ科のフルーツなんだけど、焼く前に生地にも練り込んで作ってるんだって」

「え、メロンって私の世界にもあるわよ。こんなケーキにできちゃうなんて職人さんのワザあり、ね」

「ほぉ、お互いの世界の食べ物も食べ比べてみたいものだな」

「先生、よかったら今度うちきてよ、今回お世話になったお礼もしたいし」

「それは構わないが、今回の旅行はご家族には内緒なのではなかったか?

 いきなり私のようなものがお邪魔しては、びっくりさせてしまいそうだが」

「あちゃー、そうだったわ。なんとか先生がうちに泊まれるようにうまくお話考えておくね」

美味しいものと女子トークで盛り上がってしまった。僕の下がりまくった株の回復率は微増、程度か。

ひとまず女子トークの邪魔をするのは避け、終わった食器を率先して片付ける。

「へぇ、ニャン君って意外と女子力たかいのね、いや、何でもない」

プイとまたテーブルに戻ってしまった。

演劇箱(真奈さんの世界にもテレビという似たようなものがあるらしい)に見入っている。


洗い終わった食器をかごから上げ、拭いては棚にもどしていく作業を手早く片付けた。

僕は最後の手段に出る。

真奈さんが演劇箱を見ている間にすすすっと近づき、頭を90度以上下げる。

「真奈さん、ごめん!姿が変わってること説明できなくてごめん、この星の問題のこと黙っててごめん、

 無理やりさそっちゃってごめん!」

本心で謝るしかできない。真奈さんは顔を演劇箱に向けたまま

「も〜、やめて。顔上げてよ〜、もう、そこまで怒ってないってば。

 そもそも誘ってもらったことはとっても嬉しかったんだから」

と言いながら顔をこっちにむけてくれる。僕も言われるまま顔を上げる。目と目が合った。

「にゃ〜♪猫のニャン君だぁ、お手☆」ぽん「おかわり☆」ぽん

手懐けられてしまった。でも笑顔になってくれて純粋に嬉しい。姿が違ったことを怒ってもいたので

謝るときこっちの方がいいかと思ったんだけど、思った反応と違った。

「また、ケーキ買って来てくれるなら許してあげる。この肉球ももうちょっと触らせて♪」

「ニャンパネルラ、ケーキ買うなら当然私の分もな」

どうやらこの夏はパシリ決定っぽい。

今回はここまでです。最後までお読みくださって本当にありがとうございました。

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