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真の名  作者: ら+の=くま
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召喚儀式

いつもありがとうございます、5話目、始まります。

ついにこの日が来た。

真奈さんをこちらの世界へ召喚する儀式を執り行うのだ。

この日のために僕たちは召喚儀式を執り行うための許可申請から

儀式を行う会場の選定、使用許可取得、

外の世界へ魔法を通す穴の安定化依頼、

関わり合う全ての人たちの日程調整、

該当日に必要な魔法陣の作成および儀式用正装の準備(こちら側と外、両方分)、

唱えるべき呪文の正当性の確認(両方)

真奈さんが執り行うべき手順のマニュアル化、

こちらで真奈さんが過ごす日程のスケジュール作成、移動手段の確保、宿の手配、

僕が真奈さんに教えるべき教科のプチ教科書作成、必要な小道具の手配、授業のリハーサル、

ひいては儀式に必要なろうそくの買い付けまで、

もちろん全部先生と僕でやらなければならなかったわけじゃない。

長老会の絶大なバックアップあってこそなんだけど(多分、すごい額のお金がかかってる)

やっぱりとっても忙しかったから、本当、あっという間だった。

先生の方針で僕は学校の勉強もおろそかにできなかったので

先生自身にも山のように負担をかけてしまったことだろう。

(もちろん、先生も本業あったのに、本当にありがとうございます、先生)


僕の仕事はもう一つあって、それは真奈さんとの連絡係兼、必要な物品の送付だった。

これは手紙のやり取りも兼ねていたから僕的にはかなり楽しい仕事だった。


転送のハンカチも包む必要はなくて、広げた上に置くだけでいいことが判ったから良かったけど、

衣類や道具は包むなんてできないから最初どうしようと心配しまくっていた。


今、会場には5星の正副長老が勢揃いしており、それだけでも僕なんかがこんな場所にいて

いいのかな、なんてどぎまぎしちゃってるんだ。

(うちの青の副長老は先生の種族ワン族の長、ハスキー・ロイワンタール師です。)


儀式の付き添いにはダーケシュ・ゴゥーダ大司祭様がいらしていて、

(こちらもとても偉い方なんだけど、とっても優しい)

執行者の僕は基本、この方の手はず通り動けばいいことになっている。

ゴゥーダ大司祭様が空の月を見上げる。

僕もつられて見上げた。とても大きく綺麗な満月だ。

そろそろ開始の時間が近いのかと思うと緊張が高まる。

大司祭様の目配せで、儀式のアシスタントさん達が動き始め、ろうそくが点灯する。

大司祭様が僕のところに来て、魔法陣の中心まで連れて行ってくれる。

「大丈夫かい?」

「はひ(噛んだ!)。き、緊張はしてますが、だ、大丈夫、です」

「緊張するなと言っても無理だろうけど、私がする通りに動いてくれればいいからね」

「はい!よろしくお願いします!」(やっぱり優しい!)


大司祭様が魔法陣から出るとこちらを振り返り、僕と向き合う形でゆっくり深呼吸する。

大司教様でも緊張するのかな?後ろに見えてるのは先生かな。

とのんきなことを考えてしまったが違う、これは僕へのメッセージだ。

いよいよ始まる前に、せめて深呼吸くらいして肩の力をぬきなさい、ということだろう。

あわてて僕もゆっくり深呼吸をする。

会場全体の空気が張り詰めていくのを感じる。

大司教様は両手で杖をゆっくり持ち上げる。僕も手に持った杖を同じように持ち上げる。

さぁ、儀式の開始だ。(真奈さんも始めてることだろう、僕もしっかりやらなきゃ!)


、、、儀式は滞りなく進み、僕は呪文を唱え終えたところだ。

魔法陣がうすぼんやりと赤や青の光を放ち始め、周りの空気がさらに張り詰めた気になる。

大司教様が掲げていた杖を体の前におろし、両手で杖にやや寄りかかるような姿勢をとる。

僕も動作を合わせ、大きな声で言った。

「さぁ、我の召喚に応じよ!!」

一瞬の静寂の後、ドガッシャーン!!!と雷が目の前にあった塩柱の上に落ち、

青白い炎を放った。

炎はだんだんと人の形をとって、やがて消える。

消えた炎のあとには、僕と同じくらいの背の子がしゃがんで祈りのポーズをとっていた。

その手は震え、少し怯えているようにも見える。

今回、真奈さんに用意した正装はフードがすっぽり鼻まで覆ってしまうため、何も見えない

だけでなく、音もあまり良くは聞こえないだろう、怯えるのも無理はない。

唇が小さく「ニャン君?」と動いたように見えたが、僕は儀式を続けなければならない。

僕は真奈さんにゆっくり近づくとその両手をとって、右手を甲を上にして持たせる。

「さぁ、汝、われと契約せよ!!」

教わったとおりに大きな声で叫ぶと、真奈さんはちょっとだけ安心したような顔つきになって

ゆっくり僕の手の甲に口づけをした。

そのキスに僕の手の甲に書いてあった魔法陣が反応し、光りながらぐるぐる回る。

やがてそれは回りながら僕の手を離れ、少しずつ小さくなりながら、真奈さんの額に張り付いた。

それは一際強い光を一瞬放って消えた。同時に会場に書かれていた魔法陣も

光るのをやめ、僕は暗闇の中に投げ出されたように感じた。

目が月明かりに慣れてきたところで、大司祭様の方に目をやると、優しい顔で微笑みながら

小さく頷いてくれた。儀式は成功だ。

周囲の人たちが「オオォ!」と小さくどよめく中、僕は真奈さんに向けて

「ようこそ、サンクキングダム、僕たちの星へ、真奈さん」と笑顔を向けた。

真奈さんのフードは魔法陣と一緒に消えてしまったようで、懐かしい真奈さんの顔が

よく見える、、んだけど?

真奈さんは僕の手をつかんだまま、また少し怯えたような顔になっていた。

「ニャン君?どこ?」そう囁いているように聞こえたが、目の前にいるよ?

先生が怪訝な顔で近づいてきてくれると、真奈さんは僕の手を振り払って

先生に駆け寄った。

「先生、先生ですよね、よかった。知ってる人がいて。先生、ニャン君はどこですか?」

「どこって、目の前にいるのだが、どうした?忘れてしまったか?ぁ、」

と、先生はこっちに向いて大きめの声で

「おい、ニャンパネルラ、君はもちろんちゃんと説明したんだろうね?

 こっちの世界にいる間はその格好でいることを!」

そうだ、うっかりしてた! こっちの世界はいろんな種族の人たちが行き交うので

基本、人間の形態を取るルールを、僕は真奈さんに伝え損なっていたのだ。

真奈さんは先生にすがりつくような姿勢で半分泣きそうな顔をこっちに向ける。

知らない人を見るような目、そんな目で僕を見ないでくれ〜!

最後までお読みいただき、心よりお世申し上げます。

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