ギャンブル
ご愛読いただきありがとうございます。それでは、3話目、始まります。
すがれる藁が見つかったというだけでも、長老会でも祝宴ムードらしいことをあとから聞いた。
何度めかの呼び出しで聞かされた先生の作戦はこうだ。
「向こうから来たってことは、こっちからも送れるんじゃないか?だから、直接手紙を送ることができればすごい前進だとおもわないか?」
「自動翻訳機に外の世界の言語も入ってましたが、手紙の翻訳ができるものって僕見たことないですよ?
それと、手紙の内容はどうしましょうか、
『銀のマナでこちらの世界を助けてください』
なんて、いきなり言われたら、マナさん困っちゃいますよ」
「翻訳機は金の長老のところにあるらしい。ミッタマイニャ長老が借りる手はずを整えてるところだ。
何しろ、この星全体がかかってるんだ、いやとは言うまい。手紙の内容は、最初は挨拶程度でいいさ、道がつながるかも知れないから今度遊びにこないか〜?くらい軽いのりで。
大体、『助けてください』なんて重いノリで『はい、行きます』なんて人間より
『よかったら遊びに来ないか?』って誘われれば、
『うん』って楽しい気分で言える人間のほうが多いだろ?」
マナさんなら前者のパターンもあり得るとは思ったが、確かに先生の言うことのほうが一理も二理もありそうだ。
「接続路はまだまだかかるんでしたよね?」
「勉強が足りないぞ、ニャンパネルラ君。魔法が通っている状態で物や人を移動させる一番簡単な方法は何だね?」
「あ、召喚魔法ですか?」
「そうだ。魔法陣や手順はこちらから指示したものを送ればいいんだからこっちの準備だけ先やっといて、大事なのは先方の日程調整の方かもな。
それと、彼女の世界では魔法を使ってないんだろう?こっちに来たらニャンパネルラ君が基礎を教えて上げるんだぞ、準備しとくんだぞ?」
先生もなんだか軽いのりになってきてる気がするのは僕だけだろうか?
「え?何で僕なんですか?魔法の先生なんて、いっぱいいるじゃないですか」
例えば僕の目の前に。
「前、言ってたじゃないか、彼女が雲の庵にたどり着くための飛行法を教えたのはニャンパネルラ君なんだろ?
こういうのは相性というのも大事なんだぞ?
誰でもいいってわけにはいくまい。
それに君相手のほうが彼女が安心するんじゃないか?
いやというなら、無理はさせられん。他をあたらんでもないが、、、」
う、これ絶対いじられてる。
ともかく、翻訳機が届くまでは手紙を送る試験もできないため、それ以外でできることを色々確認してその日は解散した。
「ニャン、最近エドワンズ先生の研究室に入り浸ってるって?
何やってるんだよ?教えてくれてもいいだろ〜?」
その日はジョンに捕まってしまった。
確かに前は毎日のように一緒に帰っていたのだから、疑問に思われないはずがない。
「この前、試験の点で注意されてから、勉強がてら研究の下働きをさせられてるだけだよ。」
「え?それって、パシリさせられてるってこと?あの先生はそういうことしないと思ってたのに、イメージ下がるなぁ、、、」
しまった、無駄にエドワンズ先生をディスってしまった。ごめん、先生。
「で、それってちゃんと勉強になってるの?大変なら僕も手伝うようエドワンズ先生にかけあうけど?」
忘れてた。こいつ、いいやつだった。
「いや、逆にジョンが勉強したいなら、一緒にできるよう頼んでみようか?エドワンズ先生がそんな無理な仕事させるはずないじゃん。手伝いなんてちょっとで、ちゃんと勉強みてくれてるよ?」
「ん、、うん。ニャンがきつくないなら、別に無理に一緒にいなきゃいけないってわけじゃないんだ。きつかったら言うんだよ?」
「うん、ありがと、嬉しいよ。今日は何もないから一緒に帰ろうよ。どっか、よってく?」
「あ、そおなんだね。一緒に帰るだけなら大丈夫だよ。でも今日は塾があるから、ごめんね」
「そっか、塾のこと、忘れてたよ。じゃぁ、帰ろう」
本当は今日も用事はあったのだが、これ以上入り浸ると、ジョン以外からも疑われるようになると、いろいろまずいと思ったんだ。
帰るなり、遠隔共鳴板を使って先生のところに連絡した。
ジョンの話をすると、
「なるほど、確かに周りの目を集めるような行動は謹んだほうがいいな。必要なものは瞬間伝書鳩で送るから、これからの作業は君の家で行ってくれ」
と、理解してくれた。一安心して部屋にもどると、鳩がもう来てた、早すぎるよ。
こうしてマナさん召喚に向けた準備は着々と進んでいった。
なお、話を嘘にしないためにも、先生はたまに僕を部屋に呼んで本当に勉強を教えてくれた。
「こちらの準備はもちろん一番大事だが、君の成績が下がっていいというわけではない」
とのことだ。うん、ありがと、先生。
ご愛読、大変ありがとうございます。