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調査

 今回の調査で宿泊するため、泊まる部屋に案内される。

 廊下から窓越しに見える和を思わせる庭は流石であった。その風景を眺めながら2人はついていく。和希はあまりその辺の知識は無いため雰囲気として良いと思っているのだが、戌崎はどう思っているのだろうか。


 「実は幽霊騒ぎがあってからはお客様は来なくなりまして」

 歩きながら女将が切り出した。その声音は少し話すのを躊躇っていた様子があった。

 「来ない?減ったのではなく?」

 「はい。幽霊はただ人を驚かせるだけでなく、事故を引き起こしたりしまして」

 「事故ですか......」

 「はい。夜中に首吊りの影が見えるというものから、首を吊っているという悪夢、終いには病院に運ばれたという人も出ました」

 「厄介ですね。何か悪霊が取り憑くようなきっかけとかありませんでした?」

 「多分この旅館で自殺したお客様かと」

 「ほう、自殺ですか」

 興味が有りげに微笑みながら言う戌崎。

 「はい。どうやら株取引で失敗したようで多額の借金を抱えていたようで」

 「それはそれは」

 「その後から悪霊が現れ始めたのです。未練があったのでしょうか」

 「そうでしょうね」


 そりゃ自殺をしようと思っている人で未練がないやつなんているのだろうか?なんて心のなかで突っ込みながら和希は二人の後ろについていく。

 それに私が依頼をしに来たときと比べて接しているときの態度と大きく違うな。普段なら絶対しないバカ丁寧な口調が、彼の胡散臭さを際立たせている。


 「こちらです」

 そして女将に紹介された部屋へ私達は入っていった。

 


 「なんで同室なのですか?」

 あからさまに嫌そうな表情をしながら和希は言う。一人で旅館を満喫したかったのに、何故こんな男と一緒の部屋で居なくてはいけないのだろう?

 「そりゃ悪霊が出る旅館にお前一人を寝泊まりさせるわけにはいかないだろ。別にまた不幸になりたいのなら止めないけど」

 嫌味な奴め。


 戌崎は荷物を置き終えると、外の風景を見ながら煙草を取り出し火を付けた。

 「戌崎さんって煙草吸っていましたっけ?」


 和希が働き始めて一週間、戌崎が煙草を吸っている姿は見たことがなかった。というかゲームをしている姿しか知らない。

 「いや、話し方とか丁寧にしていたから精神的に疲れてな」

 ふぅーと煙を吐く。溜息と言えそうなほど深く、疲労が見て取れた。

 「やっぱり意識していたのですね」

 「何か不満だったか?」

 「いえ。私の時とは随分違うな〜と思いまして」

 棘があるような言い方をしているが、戌崎は物ともしない。

 「まあな。理由が知りたいか?」

 和希は首を縦に振った。


 「まあ、丁寧に接するのはビジネスだからな」

 「つまり私の口コミはいらないと」

 「まあ高校生とか大学生とかは肝試しで沢山お祓いに来るし、払える額も雀の涙程度だからな。でも旅館は違う」

 「お金が目当てだったのですか」

 「始めに言った通りビジネスだからな。それに実際旅館で自殺をしようと考える人は少ないかもしれないが、それが悪霊となる確率は高いんだ」

 「なんで?」

 「地脈とか残量魔力とか、いろいろオカルトの方であるからそこは割愛させてくれ。そしてお祓いを頼もうとするとまず神社に頼むだろ?」

 「ですよね」

 実際和希もそうした。もしこんな怪奇探偵事務所とかホームページで見たりしたら、まず詐欺だと思うから行かなかったと思う。

 「だからだ今回神社よりもいいサービスをしたらそこから口コミが広がって俺のところに仕事が来るということだ」


 うんうんと自信満々に頷く戌崎。

 「でもよく神社でなくうちを指名しましたよね」

 「まあ、ここが最初に相談したのはほかの神社だったようだけれど、そこの神社が失敗してその尻拭いが回ってきたってとこだな」

 「そうだったのですか」


 煙草が短くなると、灰皿に擦り付けるようにして火を消し、もう一本手を伸ばした。

 「まあお前は風呂とか入って旅の疲れを癒やしてこい。ここの湯は美肌効果があるらしいぞ」

 「仕事の邪魔ということですね。わかりました」

 というと、和希は自分の衣服の袋を持って出ていった。


 「さてやるか」

 そしてここの旅館の建物図を広げる。建物図に実際の建物の情報を組み込み、そして建物全体に魔力反応がないか調べていく。事前に用意してきた紙人形の束から数枚取り出し、息を吹きかける。すると紙人形は生命が吹き込まれたかのように動き出し、調査を始めた。


 紙人形を飛ばして数分後調査が終わったようで俺の下に帰ってきた。紙人形は目的を達成したためもとの紙に戻る。

 そして地図の上に青い光が2つ灯った。今俺がいる部屋と温泉に向かって歩いている光、きっと瀬々良木だろう。彼女は魔力を持っているのは以前の呪の件で体内に俺の魔力が残っているからだ。

 他に光がないということは、悪霊は夜中にしか動かないのか。


 まあ、昼から活動している悪霊はそれほど魔力を溜め込んでいるという証拠だ。今回の悪霊はそこまで至っていないようだ。なら夜に動けるよう今のうちに休憩しておこうか。戌崎は立ち上がり、着替えを準備した後旅館にある温泉へと向かった。

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