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9 知多半島を自転車で

 7月初旬の昼休み。携帯電話が鳴った。和田さんからである。


 「森山さん。海の日って何か予定ありますか?」

 

 「いや…特にないよ。なんで?」


 「高校の先輩たちと、海の日に知多半島を自転車で走ろうという話になってまして…。森山さんの話をしたらぜひご一緒にと。2人とも森山さんと同い年なんですよ」


 「面白そうやねぇ…。でも、私なんかが行ってもいいんかな?」


 「いいですよ!一緒に行きましょう。よし、決まり!」


 いつもは穏やかな和田さんが、妙にハイテンションでうれしそうである。


 和田さんは、愛知県の旧・足助町の出身で、高校時代は吹奏楽部に所属していたと聞いている。知多半島は愛知県である。目的地は理解できるが、なぜ「自転車」なのか…? まあいいか。それよりも、長距離のツーリングは久しぶりである。頑張ってトレーニングせねば…


「和田さん、本番まで朝練ガッツリ行くよ。覚悟しときや!」


「はい。楽しみにしてます!」


 そして海の日。早朝に大阪を出発し、愛知県へ向かう。途中で和田さんを拾い、西名阪・名阪・東名阪・伊勢湾岸道を東へ向かう。そういえば、遠出も久しぶりである。この年は梅雨明けが早く、「海の日」によく似合う夏空が広がった。暑くなりそうだ…。


 2時間半ほどで、知多半島の付け根にある東海市に到着した。海浜公園の駐車場に車を停め、自転車を組み立てる。ほどなく、名古屋市内から自走してきた、伊東さんと高田さんと合流した。


 「森山さん、はじめまして。和田が無理に誘ったみたいですみません。今日はよろしくお願いします」


 「私の方こそよろしくお願いします。運動不足で足を引っ張るかもしれませんが…」


 ん?何か話がズレてるなぁ…和田さんは、先輩2人がぜひと誘ったという。先輩2人は和田さんが無理に誘ったという。…まあいいか…。


 4台のロードレーサーは、颯爽と臨港道路に飛び出した。伊東さんの先導で、知多半島の西岸を往復する。


 「気持ちええなぁ…」


 自然とそんな声が出る。中部国際空港を右手に見ながら、確実に、着実に知多半島の先端・師崎へと突き進む。


 休憩中に聞いたところでは、伊東さんと高田さんは、3年ほど前に興味半分で自転車に乗り始め、どっぷりハマってしまったそうだ。そんな話を後輩の和田さんにしたところ、大阪で先輩…すなわち私と自転車朝練を続けていることを知り、今回のツーリングの話につながったとのことである。先輩が私を連れてくるように言ったのか、和田さんが私を連れて行くといったのかは結局わからずじまいであった。


 師崎では、地元の漁師飯に舌鼓を打った。そして、和田さん、伊東さん、高田さんと、今回の道中の諸々や、大阪での朝練の話で笑い合う…最高である。


 離婚から8ヶ月が経ち、ようやく心の底から笑えるようになったと思う。和田さんとのメールでの文通、休日の自転車朝練、そして知多半島ツーリング…感謝しても感謝しきれない。そして、彼女と再会させてくれた国松課長にも…。


 「人を助けるのは人…」


 国松課長の顔が浮かんだ。仕事のお師匠さんのみならず、人生のお師匠さんだ。よし、近いうちにお神酒を注ぎにご自宅へ伺おう!

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