3 人事大異動
まだ離婚問題の戦後処理で悪戦苦闘していた2月の下旬。仕事中に青木所長から呼び出された。
「森山君。家のことではいろいろ大変やったね。少しは落ち着いたかな?さておき、来年度の人事異動の話なんやけど…。君は、施設とか本庁とか児童相談所とか福祉事務所とか、いろんな職場を経験してきてるよね?その経験を、他の部で生かしてほしいんよ」
「所長…それってどういうことですか?」
「相談の仕事は福祉だけではなく、医療とか労働とか、いろんなところで行われている。今回労働部から、福祉制度と相談業務に精通している人材を1名派遣して欲しいという依頼があったんよ。そこで、君に行ってもらえないかと。立場としては、『生活相談室長』ということになる。責任は重いけど、やりがいはあると思うよ」
これって離婚問題の影響…?とか疑念を抱きつつも、私はその話を受けることにした。大阪府庁は、異業種分野の寄せ集めである。部が変われば仕事も大きく変わり、民間でいうところの「転職」にも匹敵する。幸か不幸か、気軽な一人身で融通も利く。そして何より、新たな生活の中での新たな挑戦…人生再出発にはふさわしい舞台である。
「森山直樹。労働部労働対策課 生活相談室長に補する」
そして4月になり、桜吹雪に見送られながら南部福祉事務所を去り、新天地へと旅立った。15年前、障がい者施設から本庁の福祉総務課に配属になった際の違和感とは全く異なり、ありがたいことに、私の着任を誰もが心待ちにしてくれていた。そこには私の「能力」に期待しているという空気が満ち溢れていた。
やはり部が変わると何もかもが違う。部下にいろいろと教えられながら、少しずつ体裁を整えていった。予定では3年間である。よし、頑張ろう!