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11 一緒に歩いていこうか

 「前にも申し上げましたが、森山さんが離婚したのは、森山さんのせいではないと思います。『私みたいな人間』なんて言わないでください。それに失敗だなんて…」


 「でもね。離婚歴があるのは社会的にはハンデやと思うよ。だって、職場の人たちの目は明らかに変わったし、私が他部へ異動したのも、少なからず影響があったと思っている。それに、私はもう懲り懲りやわ。もうあんなしんどい思い…もう勘弁して欲しい…」


 「私はそんなに出来た人間ではありません。こうして森山さんとご一緒させてもらっているなんて、分不相応だと思っています。でも、森山さんといると素でいられるというか、すごく気持ちが落ち着くんですよ。だからこそ、他の人には話したこともなかった家族のこともお話ができた…」


 しばらく車内で沈黙が続いた。私の脳裏で、花見の翌日の国松課長の言葉が弾けた。


 「それがネガティブや言うてるねん!そんなもん、やってみんとわからへん。…っていうか、俺は和田ちゃんと結婚せえとまでは言うてない。別に結婚はせんでも、人生を共にする方法はある」


 確かに、私にとっても和田さんは大きな存在である。離婚問題で谷底まで落ちていた私を引き上げ、生活に張り合いを与えてくれたのは彼女である。彼女と過ごす時間は、素直に楽しいと思える。国松課長が言うように、私と彼女の価値観は十分共存できるし、こだわりどころは少し違うが、一本筋が通っているところも共通している。


 そして何より、和田さんは私の離婚問題にきちんと向き合い、理解してくれている。私も彼女の葛藤を理解したつもりではいる。


 「和田さん。私はあなたと過ごす時間はとても楽しい。ずっと続いて欲しいと思っている。でもね、怖いんよ。また同じような目に遭うんではないかと…」


 「森山さん。私だって、正直不安ですよ。幼い頃の悪いイメージがこびりついていて、私なんか、絶対に家族を持てない。持ってはいけないと思っていました。実際今でもそうです。でも、私は森山さんのそばにいたいんです。その気持ちは間違いありません」


 また少し沈黙が続き…


 「お互いの背景や心配ごとはともかく、一緒にいたいという気持ちは我々に共通してるよね。それは間違いない」


 私は和田さんの目をしっかり見つめ、そう告げた。彼女はコクンと頷いた。


 車はパーキングエリアを出て、再び夜の高速道路を走り始めた。明らかにお互いの気持ちが近くなっている…私は和田さんにこう告げた。


「難しいことを考えずに、とりあえず一緒に歩いていこうか。なるようになる…よね?」


「…はい!」


 和田さんを自宅に送り届けた後、まさかの展開にわけがわからずの頭のままで、国松課長に電話をした。そして顛末を報告した。


 「森山!そうか!しかし…何か煮えきらんはっきりせん話やなぁ…お前らは付き合うということでええんやな!まあなぁ…お前ららしいけどなぁ…。今度の日曜日、2人でうちに来い。祝杯や!がはは…!」


 こうして私たちは、国松課長が言うところの、「人生を共にする方法」を模索していくことになった。

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