終章 眼差し
街の時計塔にて。日が落ちて街が闇に沈んでいく中、人影が一つ。
ある一点にその視線は集中していた。
その人物の目線の先には二人の男女。片方は長身の青年。片方は幼さの残る少女。
「見つけた。黄昏の神女」
常人には届くはずのない距離から少女を見下ろす。しかし神光術を用いている様子はない。
相手を射抜かんとする鋭く赤い双眸。口元に浮かぶ不気味な笑みの隙間からは牙のようなものが覗く。
「あれを連れて帰れば……あいつは!?」
少女を見ていた視線は横の青年へと移る。
そして双眸は紅く、怒り、憎しみを浮かべ始める。
忘れもしない。あのときの。
今にも飛び出したい衝動をなんとか抑えてその人影は立ち上がった。
一歩、踏み出した足は宙をきり重力にされるがままに落下していった。
「っ!?」
鋭い視線を感じたソルファは反射的に立ち止まり、その方向を見上げた。しかしもうその姿はない。
「どうかしたの?」
急に雰囲気が変わったのを感じ取ってフィーナが心配そうに問いかける。
「いえ、多分気のせいです」
強ばった表情をすぐに緩めるとソルファはフィーナの隣まで歩いていく。
「そう?ならいいけど。それより模擬戦の反省会!」
先の視線には殺意のようなものが混じっていた。気のせいではない。しかし、だからこそ心配させんと話すのはやめた。
「あんなことがあったというのに凄い向上心ですね」
「あったからでしょ。もっと強くなってあーいう状況でも一人で切り抜けるぐらい強くなりたいの!」
「わかりました。では初戦から」
ソルファはいつでも応戦できるように警戒しつつ、フィーナとともに屋敷への帰路へと足を進めた。
長い時間をかけてやっと第一幕(文庫本で言う一巻分ほど)が完結致しました!
投稿当初から読んでくださっている方がいるならありがとうございます!
完結とは言ったものの最近は執筆の意欲が湧かず、終盤正直言ってだいぶ適当な文になってしまいました…のちのち改稿致しますのでお待ちいただけると嬉しい限りです!
続きの第二幕ですが、既に案は浮かんでいるため書けないこともないのですが(大まかテーマ自体は四幕ぐらいまで決まっている)、意欲の乗らないまま書いても良い文は書けないと思うので少し間を空けてから投稿したいと思います。その時は数日連続投稿ができたらいいな!
長々とここまで読んでくださりありがとうございます。本作は暫く投稿しないと思いますが、新作の予定(これはマジで頑張って書くつもり!)が御座いますので、そちらにご期待を!