6章―2 準決勝の前
屋敷を出る前に軽く朝の稽古を終えたソルファとフィーナは、足早に会場へと入った。
今日は一日目で日程を終えた生徒達が観客席に多くはいることもあり、昨日より密度の高い様子が見受けられる。
控え室に向かう途中、一人の女生徒が二人を待っていた。微笑みながら一礼する。
「待っていました、フィーナさん」
「……あなたはAクラスのアネットさんですね」
彼女の姿が確認できた時にはなるべく落ち着いて話そうと考えていたフィーナは、まず名前を確認する。幾ら戦う覚悟が出来ていたとしても緊張はやはりある。
Aクラスのアネット=スカーリズ。彼女は今年第一学年の中で首席として入学をした飛び抜けた生徒だ。
その佇まいは可憐な姿と共に余裕を見せている。
「少し挨拶でもと思いまして。お邪魔でしたか?」
小首をかしげながら尋ねる。挑発じみたその問いかけにソルファの怒りが僅かばかり蓄積される。
「いえ、大丈夫です。ただアネットさんもこんな所に来ている余裕はあるのですか?」
負けじとフィーナも挑発をし返す。しかし強がっているのはソルファから見れば一目瞭然であった。
「わたしの心配をしますか。そうですね、確かにお互いに準決勝に向けて集中すべきかもしれませんね。結果は分かりきっていますが」
そうとはわからなかったアネットは挑発を受け取り、微笑みを絶やさないまま足早に去っていった。
それを見届けたフィーナはどっと緊張が解かれるのを実感する。
「はぁー……試合前から少し疲れたわ」
「まさかお嬢様があんな挑発的だったとは、初めて知りました」
「あ、あれは売り言葉に買い言葉というか」
顔を赤くしながら否定するが説得力はない。
「でもあんなこと言われたら負けたくないわね」
「その意気ですお嬢様。余裕を持て余しているアネット様をギャフンと言わせてやりましょう」
そうね、と勝利の決意を一層強くしたフィーナは控え室へ向かう足を早めた。
しっかりとフィーナを送り届けたソルファは昨日と同じく観客席へ向かう。今日は人が多いこともあり、ほとんどの席が埋まっている。それに来賓の席には軍の騎士のような姿も見える。
一学年の試合といえど、それゆえの未知数さから準決勝からは将来有望株を偵察しに観戦しに来たりするのだ。
しかしソルファが特に注目したのは警備隊員の人数だった。昨日と数は同じくらいだろうか。変動があったならば何らかの事件然りトラブルが発生しているとも取れたが今はなんとも言えない。
それはそうと、
「ソルファさんどうかしましたか?落ち着かない様子ですが。お嬢様のことが不安でございますか?」
流石メイド長というところか。自分とほぼ変わらないと見える年齢なのに簡単に見透かされてしまった。
彼女の本来の年齢がいくつか気になるところであるが、女性にそれを尋ねるのは野暮というものだ。
「そうですね。発展途上ではありますがお嬢様には確実に才能があると思います。しかし相手が相手ですから」
「信じて待ちましょう。フィーナお嬢様なら大丈夫です」
ソルファとの稽古を見てきましたから、と付け加える。
「そうですね。彼女の力を信じます」
扉がコンコンとノックされた。
控え室で待っていたフィーナは誰だろうと疑問を持ちつつも、「はーい」と返事をして扉を開く。
「あなたは…?」
人影が見えたと思った次には痛みを感じると共に視界が虚ろとしていた。そしてフィーナは意識を失った。
1ヶ月ぶりですいません!
10月は中間テストや進研模試、体育祭等々忙しくあまり書く機会が取れませんでした。
もう既に三日坊主状態ですね。
少しずつでもモチベーションを上げて行きたいと思います!




