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黄昏の神女と執行者  作者: 神木 蒼空
第1幕 少女と記憶を失った剣士
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5章―7 作戦概要

 「大丈夫、出来る。わたしなら出来る!」


 入場口で待っている時、フィーナは自分を鼓舞するように繰り返し呟いていた。

 こんな所で負けてたらセラと戦うことさえできない、だから負けるわけにはいかない。そう思うとなおやる気が出る気がした。

 もうそろそろだろう。最後に作戦を確認することにした。

 フィーナの考えた作戦はこうだ。



 まず始めに相手は速攻に対する警戒、即ち動いてこないと想定できる。こちらから攻めたら相手の思うつぼだ。かといって何もしなかったら戦況は変わらない。

 だからフィーナは考えた。相手を動かざるを得ない状況を作ればいいと。

 具体的にどうするかと言うと、密かに練習していた神光術(しんこうじゅつ)を使うのだ。

 神素共有(ソーシアス)を行うまではフィーナは自分で神素の制御をするのが難しかった。しかし行った後は感覚的なものでしかないが、制御ができるようになったと思った。理由は余分な神素はソルファの方へ送られているからだ。

 ソルファから聞いた話によるとフィーナは神素容量(キャパシティ)が少ないが、体内の神素の量は人一倍あるらしい。なのに神素容量(キャパシティ)が少ないから、例を挙げるならバケツから水が溢れ出すように、神素が溢れだしてしまい無意識領域で演算が円滑に進まない状況になってしまっていたのだ。

 それを克服したフィーナはソルファのいない場所で、先生や友達に教えて貰ったり、本で読んだりして攻性(アサルト)防性(ディフェンス)の初等級の神光術を使えるようになっていた。

 今回使うことにしたのは風系統―攻性(アサルト)―初等級【強風(アインスターク)】。なるべく強くなるように調整して、相手の後ろから自分の方へ向かって使用することで、フィーナの方つまり前へよろけるという魂胆(こんたん)だ。

 そして体勢を崩した隙にすかさず詰め寄り、剣で斬る。初戦と同じ結末になる予定となっている。

 セラのことを意識しすぎて知らずのうちに風系統の神光術以外、思考にも浮かんでこなかったことにフィーナ自身は気づいていなかった。




 入場の合図と共に神経を集中させる。緊張をしているはずなのに一歩一歩の足取りが軽く感じる。

 知らずのうちに極限に近い集中状態になっていたフィーナのもとに開始の声が聞こえた。


 

 対戦相手のミヤ=リッシュはフィーナの想定していた戦い方をしようとはしていなかった。

 初戦のフィーナの攻撃方法を友人から聞いてはいた。しかし彼女の攻撃を避けるスピードは自分にはなく、また迎え撃つことも難しいだろうとミヤは考えた。

 ミヤもまた初戦の相手のカザラと同じようにAクラスの生徒、しかもクラス内で五本の指───貴族クラスは一クラス三十人弱───には入る実力者だ。単純に計算をすれば学年百五十人ほどの中のトップ五位ということになる。ちなみにカザラはクラス内では下位の方だ。

 だからフィーナの考えたように守るだけしかしないはずがない。

 ミヤの選んだ対抗策は神光術(しんこうじゅつ)。理由は明白、彼女の得意なのは武具を用いて戦うことより神光術を使うことだからだ。いや、神光術もまた武具とも言えるか。

 中でも得意としている属性は水系統。

 しかも幼い頃から雪国で暮らしていたこともあり、自然とその派生形である氷系統を習得していた。また、水系統より氷系統の方を得意としている。

 遺伝の傾向で得意な系統がある程度定まるとされている神光術であるが、ミヤの家系は水系統を得意しているなか氷系統を習得したミヤはリッシュ家で大きな期待を背負ってきた。

 だから基本的に大人しい性格の彼女でも神光術では絶対に負けたくないと、ましては平民クラスの子にはと思っていた。

 彼女が選んだ戦法は相手の動きを阻害し、その隙に攻撃するというものだ。

 氷系統―防性(ディフェンス)―【氷壁(フリーズウォール)】、主に名前の通り壁として相手の攻撃を遮るものだが、ミヤは壁を薄くされど強度は落とさないようにして地面に焦点をあて、そこに張り巡らせるという方法を身につけていた。

 結果、走るものなら氷の上で滑ってしまうということになる。殺傷の可能性のある神光術の用い方は禁止されているが、これは使うだけでは殺傷に至らないから禁止はされないだろう。

 氷を張るよりも相手が速かったら単に壁として用いるだけ、そう決める。フィーナは一つだけしか作戦を考えていなかったが、ミヤはしっかりと別の方法も考えていた。


 そして二回戦の開始の合図の音が鳴り響いた。

 


遅れてしまいすいません!

テストも無事終えることが出来ましたのでこれから頑張っていきたいと思います!…と言いたいところなのですが、漢検も受けるのでまだ早くても1週間に1回以上は早く挙げられないかも知れません。

今回は最近の中では長く書けた方だと思うのでこの調子で初心の頃のように文字数多く書けるようにしたいと思います!

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