5章―1 模擬戦開催!
高く青の広がる澄み渡る空の下。
聖ソレイフィア女学院は活気に満ち溢れていた。そう、今日からいよいよ学年別模擬戦が始まるのだ。
この期間中は学院の生徒だけでなくその親戚や国の上位貴族などの人々も観客として学院内へ立ち入ることが許されている。
そんな中、もちろん二人の姿はあった。
「今日はついに模擬戦ですよ。調子はいかがですか?」
「調子は悪くないけど……自信がなくなってきた…」
フィーナは周りとちらりと見ながら弱々しく言った。それも無理はない。第一回戦の会場のまわりにはフィーナのクラスメートはおろか知り合いすら一人もいないのだ。見えるのは貴族クラスの生徒ばかりだ。だが自ら選んだ道なのだから文句は言えない。
「そんな弱気でどうするのですか。誰にも負けないという気持ちでいかなければ」
「だって一回戦の相手が…」
手に持つ対戦表を見ながらなお弱々しい声音で言う。ソルファの鼓舞する声も届かなそうだ。
フィーナの一回戦の相手は貴族クラスなのはもちろんのこと、その中でもAクラスの生徒。
実力によってクラスが分けられているこの学院ではAクラスが学年ごと実力が特にのある生徒が集まっていることになる。
すなわちフィーナは初戦から学年の中でも最も実力者揃いのクラスの生徒と対戦することとなる。
今にも深いため息をついてしまいそうなフィーナからソルファは、さっと対戦表をとって胸ポケットへとしまう。
「これを見るのはやめましょう。相手が誰であろうと今までの稽古の成果を出し切ることが大切なのです。では最後にお嬢様最後に重要なことを教えておきます」
そう言ってソルファはフィーナにお守りとして手のひらに収まるサイズの石を渡して、客席へと向かっていった。途中「えっ!?」とまわりから注目を集めるほどの驚きをみせるフィーナだった。
控え室へフィーナを見送ったソルファは観客席へときていた。
ここへ来る途中、ソルファは違和感を感じていた。
───警備の数が多いような気が。いざとなれば戦うことのできる上級貴族も少なからずきているはずだし、犯罪のようなものも起こることはないと思わないのだが。
心当たりがあるとすればフィーナのクラスメートのメグの話だがあれはもう一ヶ月ほど前のことだ。解決済みであろう。相手が能力者を相手にできる手練であれば話は別だが。
となると気のせいかもしれないと考え直した。
そこへ一人の女性が歩み寄ってきた。
「おはよう、ソルファ先生」
「おはようございます、サレカ先生。お久しぶりです」
保健の教師であるサレカ=シュヴナクだった。一言ソルファに断って隣へと腰を下ろす。
「ところでなぜここに? 今日から模擬戦の開始ですし保健教師としての仕事で一杯なのでは?」
「私もそのつもりだったんだけど、今年は例年に比べて国から人が多く来ていて今は休憩中」
だからフィーナちゃんの試合でも見ようと思って、と付け加える。
「そういうことでしたか。でもなぜ多く….いや、そういうことですか」
やや考え納得がいったというような動作をする。
「そう。今年の二、三年生は実力派揃いだからね。特に三年生は」
そう言って説明を続ける。
今年の三年生は学院の歴史の中でも一、二を争う実力者揃いであると言われている。その中でも特出しているのは生徒会長であるキレナ=レーテシルインだ。
一年生のときから学年首席として期待されていた。彼女についてソルファが知っていることは風属性を得意とする能力者であるということぐらいだが、実際は槍の使い手でもある。
あのときの一件があったことからキレナがソルファを気にかけていることは確かだろう。
学年首席に続いて次席のカレン=シイラギも注目されている一人だ。
魔獣たちに奪われたかつての人類の領土であった極東大陸ナグストの国の血族であるカレンは、ソルファやフィーナの使う剣とは違う、刀と呼ばれる武器を使う。
刀を使って戦う者は極東でしか見られなかったため今の世界には少なく、歴史を辿ってもこの学院にも彼女以外にいない。
それゆえに刀との戦いに慣れている者は少なく、一年、二年時と勝ち続け次席へと上り詰めたというわけだ。
首席でない理由はキレナに負けたからということではない。単に模擬戦などでの勝利数の差だ。
一年、二年と二人は二勝二敗と互角の戦果を出している。ただキレナの方が試合数が多く勝利数が多いからというわけだ。
「と、そろそろ始まるようだよ」
会場中の観客の目は中央のフィールドへと集められた。
今回も毎回のように謝罪を!!
受験勉強がやはり大変でしてで…。あ、頭が悪い訳では無いですよ!? いや、多分そのはずです。
とりあえずあと一ヶ月!頑張りたいと思います。
ですので次の話も遅れてしまうと思いますがご了承いただけると幸いです。




