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黄昏の神女と執行者  作者: 神木 蒼空
第1幕 少女と記憶を失った剣士
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4章―2 これからの予定

 ―――剣の上達は上々。想定していたよりも呑み込みがよく一学年の中でも十分に通用する。神素はまだ取り組んでいない。―――


 ソルファは育成記録帳と(めい)したメモ帳を取り出し書き綴った。

 フィーナに剣と神光術(しんこうじゅつ)を教えるということ、学院では家庭教師という名目ということもあり、記録帳を付けることにしたのだった。



 学年別模擬戦まであと二週間と少し。

 刻刻と近づいてくるその日までの予定もソルファはおおまかに考えている。フィーナの成長速度によっては予定が狂うこともあるだろう。

 しかし、それは即ち速く成長しているということの証。そうならばいくらでも予定は変更するつもりでいる。

 その逆、つまり遅い成長の場合も予定を見直さなければならないが、今の調子ならば剣の方は大丈夫であろう。

 不安要素があるのは神光術の方だ。

 今日は神素共有(ソーシアス)の繋がりの安定性を高めるために神素を用いた稽古(けいこ)は行わなかった。

 そもそもソーシアスを使わなかったらフィーナが神素(しんそ)を使った戦い方をするのは難しかっただろう。

 ゆえにソーシアスを使ったことは正しかった。しかし問題はここからだ。

 不安要素というのはフィーナの神光術、神素による身体強化の上達速度だ。

 少なくとも昨日までのフィーナよりは神素制御技術は向上しているはずだ。そうでなければこれまでと全くと言っていいほど変わりがない。

 今朝の様子だと上手く使えてないようだった。ただ、これはソルファの起床後と同じ原理の結果ではないかと思われる。だから原因に予想がついたのだ。


 ソルファは起床後、立ち上がろうとしたとき、ふらついて倒れそうになった。

 この後にフィーナが外で倒れたのを目で確認したときにソルファは原因に予想がついた。

 原因は神素量の不安定だ。

 フィーナがソルファから多くの神素を取ったことにより制御が上手くいかず、ソルファは神素が急に少なくなったことで体が不安定な状態になりよろけることになってしまったのだ。



 現段階の結論としては明日からの稽古(けいこ)に取り入れるつもりである神素の扱いで、どれだけ上達していくかを見ていくしかないだろう。



「それにしても成功して良かった」


 今更ながらかと思いながらソルファは嘆息とともに呟いた。

 成功していなかったら今頃どうなっていたのかはわからない。もしかしたらソルファは生き残ってフィーナは……。

 そうはならなくて良かったと全身の力が抜けたような感覚になる。

 ふと脳裏にあの言葉がよぎった。


「『待っているわよ』か。あれはいったい何だったんだ…」


 あのときも考えたが答えは出ないまま。

 確定的にに記憶喪失の影響だ。今のソルファにある記憶なんて戦いのノウハウと基本的な社会知識、ここに来てからのフィーナとの生活ぐらいだ。

 待っているといってもどういう意味でだろうか。ソルファが言葉の主の下へと(おもむ)くことだろうか。手紙を待っているのだろうか。それとも、何かを思い出すことを待っているのだろうか。

 思い当たる節はやはりない。

 またあの声が聞こえるのを待つほか手がかりは一切ない。それまで待つか、と育成記録帳から一枚ページを破りそれとなく書き記しておくことにした。



「ソルファ、まだ起きてる?」


 少し座り疲れたと伸びをしたとき、コンコンとノックをし、部屋へフィーナが訪ねてきた。


「起きていますよ」

「入ってもいい?」

「どうぞ」


 時計を目端にみると既に午後の十一の時をまわっている。時間も遅いので多少躊躇(ちゅうちょ)したがソルファは入室を許可した。

 フィーナはゆっくりと扉を開けて入ってきた。心做(こころな)しか恥じらいを隠しているような様子だ。


「お嬢様、夜も遅いですがどういった用件ですか?」

「……何か体が熱いの」


 火照るように恥ずかしがる顔でフィーナは言った。


「もしかしたら俺の神素と適合が上手くいってなくて、いまお嬢様の体は適合するように頑張っているのだと思います」


 少し考える素振りを見せたあとソルファは予想でしかないが答えを返した。ソルファといえど初めての経験ゆえ予想でしか答えられない。

 ソルファのところへ訪ねてきたのは神素関連のことだろうと推測し、メイドたちでは何もできないかもしれないと考えたからだろう。夜遅くなのは心配をかけないようにか。

 でもそれだけなら何故恥ずかしがっているのだろうか。


「お嬢様どこが熱いのか見せてもらっても構いませんか? 症状が早く良くなるようにできるかもしれません」

「それはちょっと…」


 頬を染め横を向きながらそう答える。

 普段のフィーナとは全く違う様子にソルファは疑問を抱く。


「では教えていただくことは?」

「………ね……よ」

「すいません、聞こえなかったのですがもう一度よろしいですか?」

「…む……よ」

「お嬢様?」


 フィーナは一つ呼吸をする。そして恥じらいの色を見せながら次の言葉をはっきりと紡いだ。



「胸よ!!!」



 ああ、とソルファは合点がいった。だから恥ずかしがっていたのかと。

 フィーナは胸元を隠しながら僅かに涙目になっている。


「そうでしたか。すいませんお嬢様、見せろなどと言ってしまって」

「いいわよもう。……わたしはどうすればいいの?」

「方法としては、俺が直接お嬢様の胸元へ手を触れ外から適合が早く終わるように調整するか、時間を待つしかないです。ただ後者の場合はあと一日はかかるかと」


 ソルファとしては前者の方が望ましい。

 下心があるなんてことはなく、稽古が滞らないためにはその方がいいからだ。

 しかしフィーナの意思を尊重するのが最優先である以上ソルファはその意思に従うまでだ。

 フィーナとしてはどちらか選ぶのは難しいだろう。

 前者の場合にはソルファに胸元を触られなければならない。双丘の間を触ることになるのだがそれでも胸元を触られるのは女性として嫌であろう。

 後者をとるにしても熱さが続くのは日時生活にも支障をきたすおそれもある。

 フィーナが結論を出すまで一分ほどだった。


「……胸元を触る方をやって」

「よろしいのですね…」


 ソルファは最善の注意をはらおうと決心する。


「ただし、目隠しをして!」


 これだけは、とフィーナは条件をだした。

 目隠しをして見えない状態からフィーナがソルファの手を自分の胸へと運ぶというもの。


「これで見えないわね」

「はい、何も見えません」


 傍からみれば誤解をされそうな状況が完成した。

 フィーナは目隠しをしたソルファの前で手を振ってみる。反応はない。ほんとに見えていないようだ。


「…いくわよ」

「いつでも」


 そしてフィーナはソルファの手を掴んだ。ゆっくりと自分の胸元へと近づけていく。

 ソルファの手がフィーナの胸と密着する。男の人の手に触られるという状況に貴族のお嬢様は羞恥が絶頂へと達する。


「ひゃっ!!!」


 ソルファによる適合作業の返しとともにそんな声がフィーナの口から漏れた。



 



 


遅くなりすみません!

今回は久々に長くなりましたね。

多分これからもこの調子になりますかよろしくお願いします!

サブタイいいのが思いつかなかった!!

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