3章―6 銀との邂逅
白く。
白く。
ただ果てしなく白い。
空も陸も何もかも。
そんな空間にフィーナの意識(、、)はあった。
全身を見回してみる。
自分の体はしっかりと存在する。しかし感覚がない。
奇妙な感じだ。
意識して動かすことはできるが、動かしたという感覚は脳にフィードバックしてこない。
「問題なく来れたようですね」
後方から安らかな声が響いてきた。
この声は、
「あの時の!?」
フィーナは言いながら振り向いた。
その先には銀色の鱗があった。
雰囲気から察することができる、およそ世界に生息し得ない強大さ。
おずおずと上を見上げる。
次の瞬間、フィーナの背丈の数十倍はあるであろう巨体が視界に広がった。
虹色にも輝くような銀色の鱗を全身に、無数にもつ龍だ。
ただ書物でしか見たことのないフィーナはその迫力に、存在感に圧倒される。こんなに自分は矮小なものかと感じた。
しかし、それには龍特有とも言える獰猛さというものが感じられなかった。
鮮やかな翡翠色の双眸はフィーナを見据える。
「あなたと話すのは二度目ですね」
「あなたはどなたなのですか? ここはどこなの?」
フィーナは銀龍の言葉など気にせず今最も知りたいことを立て続けに訊いた。
「そうですね。私が何者なのかですか。今はあなたが見たままの銀の龍としか言えません」
銀龍は即答した。訊かれると分かっていたのだろう。
「次にここがどこかですね。ここは端的に言って私とあなたとの狭間の世界です」
「わたしと銀龍さんの狭間の世界…?」
「ええ。言葉で表すならこれが最も適切でしょう。位置的な概念はありません」
位置的な概念は存在しないということはこの空間は現実ではないということか。
齢十三にしか満たないフィーナでもこれはすぐに理解出来た。
しかし、狭間の世界。
これの意味することは。
「狭間の世界の細かい説明をする前に重要なことを一つ」
銀龍が遠くからでも感じられる冷気を纏わせる翼を広げた。
「私とあなたの存在は紙一重と言えます」
「紙、一重?」
フィーナはよく理解出来ず聞き返す形で呟いた。
もちろん言葉自体の意味を理解できなかった訳では無い。
人間であるフィーナ自身と龍である目の前の銀龍が紙一重───すなわちほぼ同様の存在ということに驚いた。
「力といった能力的な点では同等ではありませんが、存在としては世界でたった一人、私と同じ価値があると言えます」
「同等の価値───うっ!?」
銀龍の言葉に耳を傾け問いかけようとしたその時、突如強烈な刺激を受けたような感覚を得た。
そう、表すなら何か強大な何かが自分の中を巡るかのような。
「そろそろ時間切れのようですね」
直後、空間が崩れ始めた。
崩壊部から黒い何かが流れ込んでくる。
「またの機会に詳しく話しましょう」
そう言い残して銀龍は霧のように消えていった。
フィーナは身体を巡る謎の感覚に耐えようと忘れていた集中状態に入った。
遅れてしまいすいません!
毎回言ってるような気がするけど……
今回も前回同様とても短くなってしまいました。
キリがよかったってのもありますが時間の都合もありまして。
時間は自分で作るものなのでなんとか作らなくては!