3章―5 【神素共有(ソーシアス)】
床に描かれた神光陣の中へと二人は足を踏み入れた。
蒼き双眸と黒き双眸が交わされる。
映し出されているのは成功という未来。
不安など微塵もない。完全に振り払った。
ソルファは軍服の懐に常備されているナイフを取り出した。
鎖が装飾されたそれはいざという時の剣であり、儀式にも用いることも可能なものだ。
今回の場合の用途は後者。
【神素共有】には対象者の血液が必要となる。
躊躇いもなくソルファは無造作に指先を浅く裂いた。
鋭い痛みとともに血が滲み出てくる。
「お嬢様、オレがこの血を落としたらそれを読んでください」
「わかったわ」
さきに確認した通り、フィーナにはもう何の言葉をかける必要はない。
ソルファがゆっくりと血の出ている指先を地面へ向ける。
重力に引かれ血は落ちる。
一瞬の時間がとても永く感じられる。
そして時は過ぎた。
ソルファの血が神光陣へと着いたとき、神光陣が蒼く耀いた。
瞬間、
「「我詠唱す!」」
「「如何なるモノでも解けない呪い
それは深淵より深き絶対の誓い
誓いを破棄するならば死して髑髏へと還るだろう
故に絶対遵守の誓い
故に如何なりとて解けない禁忌の呪
されど我は其との繋がりを欲す
永劫なる刻に現封じる」」
銀と黒から紡がれる言葉。
詠み終わって一時。
足元の神光陣が急激に輝きを増した。やがてそれは回転しながら直線上に上へ上昇していく。
ソルファとフィーナの体を陣内に位置しながら脳天まで上昇しきった直後。
神光陣から、亜空間から何かが二人を拘束した。
幻視の鎖だ。
【神素共有】によって恒久に解かれることのない呪い。鎖は呪いそのものだ。
鎖は呪いとともに二人の神素の流れの道でもある。
鎖は神素を求め始める。
束縛された二人は神素を奪われる。
体内に流れる神素は奪われないようにと暴走を起こす。
これを抑えることが出来なければ体は神素の流れが急激になって耐えられず。
ここからは如何に抑えることが出来るか。
ソルファは視を閉じる。神素の動きに集中する。
遅れてフィーナも目を閉じ、意識が神素の動きに行くように集中する。
ソルファには神素の制御など造作もないことだが、フィーナにはそうはいかない。
そもそも制御が難しい状態だから神光術を使いこなすことが出来ないのだ。
その状態で神素の動きを制御することは並大抵の集中力では到底敵わない。
極度の集中状態に入る。
自分の中に何かが流れ込んでくる感覚。
同時に神素が鎖に奪われる。
まだ慣れていない神素では体に適応せず、暴走を起こしてしまう。
だから奪われてはならない。
数瞬、閉じている目越しに目の前が白い光で満ちていることに気づく。
目を開くと何もない空間が視界に入る。
ソルファはいない。屋敷の部屋でもない。
意識だけが別の空間にいる。
そうフィーナは知覚した。
まもなく、あの声が聞こえた。
遅れてしまい本当ににすいません!
最近何かと忙しく(テストやら、受験勉強やら)あまり書けていなかったので投稿が遅れてしまいました。
プロットは第2幕まで出来ているのですが、文章にするのはまだまだ時間がかかりそうです…。
綺麗な表現をしたいということもあり、アドバイスなどいただけると嬉しい限りです。
今後、受験終わるまではこの調子の投稿となりますが、読んでくださる皆様、何卒よろしくお願いします。
 




