3章―2 生徒会長
「やあぁ―!」
そう気迫を入れながらフィーナは走っていく。
手には薔薇の装飾の施された鉄製の長剣。
走っていく先にいるのはフィーナより幾分か背が高いソルファ。
手には同じく剣。しかしこちらは木剣だ。
フィーナは勢い任せに剣を振り下ろした。
ソルファはそれを難なく躱す。
そして躱しきる間際に軽くフィーナの脳天へ木剣を振り下ろす。
「いったぁ〜い!!」
「軽く叩いただけですよ。お嬢様が痛がりなだけでは?」
「うぅ〜〜」
辛辣な言葉を放つソルファにフィーナは涙目で訴えかける。
言葉にしないのはその通りだと認めているからか。
「いきなり動きつつは難しかったようですね」
「では次は正面から打ち込んでみて下さい」
「わかったわ」
そう言ってフィーナは涙を拭い、剣を構え直す。
こういった切り替えの早さは戦いの最中の判断の速度にも関わってくるため重要だ。
それが出来ているフィーナを見てソルファは内心微笑む。
剣が振り下ろされる。
後に続くのは剣の打ち合う音。───ではなくスッと、空を切る音だった。
それが幾度か続く。
ソルファは剣を構え立っているのみ。
けれど剣は空を切るのみ。
「なんで当たらないのよ!」
フィーナは答えを求める言葉をソルファへ投げかける。
「それはお嬢様が剣に振り回されているからです」
「ええ。剣を自分のものにできていない。扱いきれていないのです」
「自分のものにするってどういうこと?」
フィーナは重ね重ね疑問をぶつける。
言外には見本を見せて欲しいと含まれている。
「そうですね。───こんなふうにです!!」
直後、ソルファは後ろへ振り向いた。
振り向きざまに剣が風を切った。
何もない空を切ったのではない。
ひとりでにソルファへ飛来していた剣を弾いたのだ。
「何!?」
フィーナが剣が飛んできたことに驚きを隠せないという表情を浮かべる。
「へぇ。今のを弾きますか」
何処からか声が聞こえた。
刹那、ソルファの目の前に人が現れた。少女だ。
美がつかなければおかしい程の少女。
「あなたは何者ですか?」
ソルファは警戒をしながら緊迫した空気の中問う。
「生徒会長!?」
ソルファの問いに答えたのはフィーナだった。
「ええ、その通り。私は聖ソレイフィア女学院の生徒会長キレナ=レーテシルイン」
次に続いた少女からの言葉はソルファへの答えと共にフィーナへの呼応ともなっていた。
「生徒会長さんでしたか。キレナ様、これは失礼を」
「いえ、元はと言えばこちらがいきなり攻撃を仕掛けたのが悪いのですから」
特にこれといった失礼な点はなかったが、ソルファは貴族クラスの生徒ということで謝礼をするが、それはキレナの言葉に遮られる。
「それで、なぜ攻撃してきたのですか」
最も重要なことをソルファは単刀直入に訊く。
「ソルファ先生の技倆をこの目で確かめたかったのですよ」
キレナは隠すことなくありのまま答えた。
「先生がどんな御方なのか全く存じ上げなかったので剣の腕前はどれほどのものなのかと試させていただきました」
「あれぐらい防げなかったら、この学院に入ることの許された唯一人の殿方を追い出そうと思っていました」
言っていることが本気なのか、奥が見えない。
これがこの学院の生徒のトップに立つ少女か。
「そうでしたか。ということはオレは合格ということでしょうか?」
剣を振りながらソルファは涼しい笑顔を返す。
「今の【風烈刃】を防いだのが最後の試験といったところでしたので、その通りです」
数瞬前までソルファたちの周囲にあった神素は消えた。
それを感じたソルファは警戒を解く。
「で、キレナ様の要件はこれだけではないですよね」
「全てお見通しってことですね。殿方にお見通しだなんて」
キレナは頬を赤らめてみせる。
……冗談を混ぜながらもキレナは要件を話し始めた。
話の内容は学年別模擬戦のことだった。
例年あった貴族クラスと平民クラスとのことから、今年より導入された希望制の模擬戦。
改めてそれに出るのかということだった。
キレナの神光術を垣間見てか、一瞬参加を躊躇うかのように思えたが、フィーナはしっかりと参加の意思を示した。
強くならなければならない理由があるから…
時間があるときに投稿していくつもりです。
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