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黄昏の神女と執行者  作者: 神木 蒼空
第1幕 少女と記憶を失った剣士
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2章―4 お嬢様の素顔

遅くなってしまいすいません!

 今お嬢様と従者の二人は彼女の部屋にいた。

 理由は学院の保健室での最後に交わした言葉から分かる。

 フィーナはベッドの端に座っている。

 対照的にソルファはフィーナの少し前に立っている。こうすると身長差が歴然とする。

 二人の服装は、フィーナは可愛らしい桜色と表現できるネグリジェのような部屋着で、ソルファは軍服の下のワイシャツの姿だ。


 

「お嬢様。これから何のことについて話をするかわかりますか?」

「い、いえ」


 これから何について話すのか全く見当がつかない。

 何か自分はやったのだろうか。フィーナはそう考えるが答えは出てこない。

 目の前の青年は怒っているようには見えない。ということは怒られるといったことはなさそうだ。

 そう思いつつ密かに安堵(あんど)するが、僅かに残る懸念から表情が硬くなりそうになる。


「そんな硬くならなくて大丈夫ですよ。今日は倒れたのですからリラックスしてください」

「は、はい。その通りですね」

「それです!」

「え?」


 突如放たれた青年の言葉に疑問符を浮かべるしかないフィーナ。

 それ、と言われてもどういうことかさっぱりだ。


「…お嬢様」

「はい」


 直ぐに切り替わった雰囲気に戸惑いながらも返事をする。


「俺に隠していることはありませんか」

「隠していること…?」

「そうですね。例えば、お嬢様の素顔とか」


 そう指摘されフィーナは驚きを露わにする。何とか声は押し殺す。


「具体的には、口調とか」

「あーあ、気づかれちゃったか(、、、、、、、、、)


 そして、フィーナの様子は大きく変わった。豹変(ひょうへん)したという言葉も過言ではない。

 大きく変わったのはやはり口調か。

 ソルファはそれには全く驚かない。

 このぐらいの変化は予想していた通りといった様子だ。

 時折見せる様子から憶測(おくそく)は簡単だった。


「あれ? 全然驚かないの?」


 自分の変わりように盛大に驚くことでも期待していたのか、逆にフィーナ自身が驚いてる。


「ええ。お嬢様はわかりやすかったので。周りの皆様の反応からも」

「そうだったかなあ」


 ここらでソルファは少しは驚いてみせても良かったかと思ったがもう遅い。

 

「ですが、今のお嬢様の方が生き生きしていていいと思いますよ。俺は好きです」


 せめて少しは喜んでくれるだろうかとそう言う。お世辞でも何でもない、ただの本音だ。


「好きって、私に惚れたの?」


 フィーナはソルファの本音に対して冗談交じりに言う。


「そうかも知れませんね」

「な、ななな、な、なな、なに言ってのよ、こ、こ───」


 フィーナはわなわなと唇を震えさせている。

 ソルファは間違った答えをしたかと戸惑う。


「この、バカーー!!」

「え?」

 

 次の瞬間、力一杯の蹴りがソルファの腹部を襲った。

 この年頃の少女が放てるものとは思えない衝撃に、無意識に 【付与(エンチャント)】されたものだろうとこんな状況でも考察してしまう。

 付与(エンチャント)とは自分の神素を体の一部、または他者、物に付与することで一時的に力を高める基本的な神光術だ。

 だが、神素容量(キャパシティ)が少ないフィーナがこんな付与(エンチャント)を出来るわけがない。

 これは乙女のなせる技というものだろうか。

 そして付与され流れ込んでいる神素の中に違和感のある流れを見つけた。

 それがソルファの体へ触れたとき、突然体が宙に浮いた。

 正確には反発するように飛ばされた。

 

 幸い飛ばされた先には何もなく、着地の体制を空中で体を捻じ曲げ、床に着いた。

 天井は高く、十分な広さのこの部屋に救われた。───もしそんな条件が揃っていなくてもソルファなら何とかしたかもしれないが。


「ソルファ!?」


 フィーナは慌ててソルファのもとへ駆け寄る。


「大丈夫です、お嬢様」

「ふう、良かった」

 

 無傷なことを確認するとフィーナはそっと胸を撫で下ろす。


「それにしても、今のは…」


 ソルファは自分の腹部を見る。特に異常は見られない。

 状況から察するにこういうことだろう。

 フィーナの神素の流れに紛れていた違和感のあるもの。それはソルファの全身を流れる神素と相性が合わず反発した。


 神素同士の相性とは、例えば五大元素の内の"火"と"水"。

 この二つの相性は一般的に言えば水の方が良いと言え、逆に火は悪いと言える。

 しかし場合によっては火の方が力が強く、水を蒸発させてしまうほどならどうだろう。

 こういう場合は前者とは打って変わって火の方が相性が良いとなり、水はその逆になる。


 といったように相性の良し悪しによって反発したりと何かしらの影響があるのだ。

 もしこの場合にフィーナの方が相性が良かったとしよう。

 しかしソルファの方が圧倒的に力量は上だ。

 即ち、先程と後者の例のようにフィーナの方が飛ばされる可能性が高いのだ。

 そうでなくとも両者ともそうなるはずだ。

 しかし彼女には何の影響もなく、ソルファのみに影響があった。

 やはりその理由はフィーナの神素の中にあったあの違和感。そうソルファは確信した。


(だが、それを確認するためにはあの手段しか…)


 バタッ。

 急に床に何かが落ちた音がした。

 それはソルファの目の前から──フィーナのもとへから発せられた音だった。


「お嬢様大丈夫ですか!?」


 フィーナは倒れた訳ではなく、脱力したように床に座り込んだだけだった。

 

「うん、大丈夫。ちょっと疲れちゃってるみたい」

「御夕食の時間まで少しベッドで横になっていて下さい」

「うん、ありがとう。───えーと、その、」

「何でしょうか」


 急に大人しくなったフィーナを心配しているソルファにフィーナは簡単なお願いをした。


「その、私をベッドまで運んでくれない?」


 疲れきった様子で、恥じらうことすらままならないフィーナは、疲れのせいか頬を僅かに赤らめソルファに頼む。


「ええ。もとよりそのつもりです」


 まずはそうすべきだと考えていたソルファは直ぐに実行に移した。

 お姫様だっこと言われる状態でフィーナを運ぶ。

 さっき素顔を明かしてくれたばかりだが、元気のあるフィーナなら何かと反抗しただろう。

 そんな風に元気になってくれることを祈りつつ、ベッドへ歩いていく。


「すー、──すー」


 腕の中の彼女はもう寝てしまっていた。

 起こさないように最善の注意をはらい、ゆっくりとベッドへ下ろす。


(お嬢様、おやすみなさいませ)


 そう語りかけ、反射的に眩しい銀髪をそっと一撫でする。

 フィーナの疲れきった顔が一瞬嬉しそうに見えたのは気のせいだろうか。


 そうしてソルファはフィーナが目覚めるまで自分も仮眠を取ることにした。

 壁に立て掛けてある鞘に収められている闇色の剣の刀身が、キラリと、自ら輝きを放ったのは気のせいだろう。


 


前書きでも書きましたが、

遅くなってしまいすいません!

受験勉強の最中にやっているため投稿が遅くなることが多々あると思います。

それでもどうか読んでくださる方がいてくれたら幸いです。

今回の話ではフィーナの素顔を入れてみました。

どうしでしたでしょうか?

こんな素顔を隠し持ってると既に気づいていた方もいるでしょう。

また逆に驚かれた方もいるかもしれません。


早く投稿したい気持ちがあり、場面の移り変わりが駆け足になってしまいましたが、後から直していきたいと思いますのでよろしくお願いします!

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