Session8:PT
お待たせいたしました。
速いもので、このエンチャンターのススメ…を執筆し始めてから、1週間になるようです。
読んで頂いている皆様に楽しんでもらえるよう……努力してまいります。
私は、乾いた笑みを浮かべながら目を息を吸う。
「あぁ、早く『アクアステルラ』に帰りたい」
もどって、一度ログアウトしたい。
切実に……切実に思ってしまった。
そもそも、どうしてこんなにテンションが下がり、一刻も早くログアウトしたいと思うのか。
……時は遡る。
「じゃぁ、狩りにいこうか」
その言葉と共に、レーヴとルクスとPTを組み『アクアステルラ』より飛び出し、草原に向かう。
ここまでは、普通……だった(・・・)
その後は普段はどんなゲームしてるか、どんなものが好きかなんて他愛の無い話をしながらモンスターを探していた。
時折、すれ違う他のプレイヤーに挨拶をしたり時には「意外と出現しないもんなんだねぇ」と二人と話しながら……。
時間にして、10分位だっただろうか?
ようやく、お目当てのモンスターと遭遇することができた。
――敵を目視でとらえる。
ゲル状のモンスターが3体。そして、豚のようなモンスターが4体。群れを成していた。
名前を確認すると、ゲル状のものはどんなゲームでもおなじみのアイツ『スライム』だった。
豚の方は、『キラーピッグ』という名前である。
敵の数は多いけど、まぁ何とかなる相手でしょう……
そう思い、2人に声をかける。
「じゃぁ、とりあえず最初は好きに戦ってみようか!」
私がそういうと、レーヴは「斬り込みは任せろ!! 」
と、私の言葉を聞き終わる前に走り始める。
「ちょっと!! ≪支援術≫アタック……スピード!! ≪付加術≫エンハンスソード」
魔法の対象範囲外に出ないうちにかけ終われるよう、急いで魔法を選択し、レーヴにかける。
……≪支援術≫アタックは名の通り、Str上昇効果。
スピードはAgi上昇効果がある。
≪付加術≫のエンハンスソードは剣装備時、剣の攻撃力をあげるというもの。
どちらもLv1故に、無いよりはマシ程度なのだけれど。
そして、冒頭に戻るが……
私が『帰りたい』と思うような事件が起きるきっかけがこの戦闘にて起こる。
レーヴが、丁度スライムと交戦し始めた頃……
ルクスが弓に矢を番える。
『レーヴが交戦しているスライム達に向けて』
……あ、ちょ。
声に出すときには遅かった。
ルクスは、レーヴを援護しようと矢を放つ。
……軌道は逸れず綺麗に、風を裂きまっすぐに飛んでいく。
だけど、その矢はスライムには当たらず……。
綺麗にレーヴの頭を射抜く。
「ちょ、いってぇぇ!」
レーヴが叫ぶ。
「あっ、ご……ごめんなさい!! 」
ルクスはすぐに謝る。
幸い、このゲームにはPTを組んでいる仲間に対して攻撃が当たってもHPが減らないようにできている。
……減らないだけで、痛覚はしっかりあるし攻撃は中断されて、のけぞってしまうのだけど。
これが、上級ダンジョンになると即、死亡に繋がる。
ま、今は最初の草原だし……そんなことないんだけど。
と、ふりかえりレーヴを見ると……
……スライムに飲み込まれていた。
「うぉぉ、助けてくれぇ」
本人もパニくっているようだ。
実際にはほぼダメージもない為、落ち着いて対処すればすぐに抜け出せるはずなのだが……。
「駄目みたいねぇ……」
私が言うと、ルクスは涙目になりながら謝り始める。
「レーヴごめんなさい……」
なぜか、故人みたいな扱いを受けるレーヴ。
まぁ、助けないとねぇ。
「≪風魔法≫スライサー!」
スライムを消し飛ばすように、魔法を行使する。
「ルクスも、同じように。今度はレーヴにぶつけないようにね?」
「ん……わかりました! ≪風魔法≫スライサー」
ルクスも私に続く。
あっという間にスライムのHPはなくなる。
「助かった……誤射はかんべんな……」
とにこやかに笑って、キラーピッグに切りかかる。
(レーヴのHP思ったよりも削れてるねぇ)
そろそろ、支援術と付加術も切れる頃だろう。
「レーヴもう一度支援するよ?」
掛け声とともにレーヴに魔法をかける。
「≪回復魔法≫ヒール。アタック……スピード!エンハンスソード!」
んし、これでOK
……今度はルクスに違う敵を狙うよう伝えな……い……と?
横を振り向くと、綺麗に矢を番えた弓を持ち……矢を放つルクスの姿が見える。
……いうまでもなく、矢は再度レーヴに当たる。
「いってぇ!! ちょ、まじやめろよ!」
今度は少し怒っている様だ。
ルクスは、あわあわしている。
「……ルクス。……レーヴが狙ってる敵じゃなくて違う敵を狙うといいよ。あとは、レーヴと重ならないように撃たないとね……」
そう、言うのが精一杯だった。
それでも、ルクスはハッと気づいたようで「わかりました……!」そう一言いい。
まだレーヴが接敵していないキラーピッグを狙い始めた。
「ルクスにも、支援かけとくね。≪支援術≫デックス……アタック……スピード!」
ありがとうございます……とルクスがいい力強く、矢を放つ。
その矢は、レーヴの元に飛来した様に綺麗に風を裂き、キラーピッグの頭を射抜いた。
そして、クリティカル判定になったのか……キラーピッグはそのまま光のエフェクトとなる。
「やりました……!」とルクスは笑顔になる。
「うん……その調子!レーヴを援護するときは、レーヴの動きをよく見てね……その先を予測して撃つんだよ」
そう告げると、やってみます……。
ルクスはそう言い弓に矢を番える。
凛とした姿で……放つ。
だが、そこにレーヴが重なり……
「いってぇぇぇぇ!! 」
レーヴを射抜いた。
……ある意味才能かもしれない。
その後も何度か同じことを繰り返しているうちに、段々レーヴにイライラが募っていく。
「ルクス!! たのむから射線気にしてくれ……」
「私だって、気を付けてるよ……!」
「……現に当たってるんだ!! もう少し気を付けるかいっそ撃たないでくれ」
「……わかったわよ!! 」
キラーピッグをあと二体倒すだけのはずなのに、険悪なムードになっていく。
「2人とも……周りの動きはよく見ないと……」
「「わかってるよ(ます)!!」」
……あ、これ完璧にダメなパターンの奴だ。
その後も、何度か誤射を交えながら討伐するころには……。
レーヴとルクスは完全に喧嘩状態に入り……
私は2人の喧嘩を仲裁しないといけないのだった。