Session6:不遇
アクセスが急に1000人を超えていました。
何事かと……。これからもたくさんの人に見ていただけるよう、精進してまいります。
それから……気づくと朝日が昇る頃になっていた。
ゲーム内時間は午前5時半。
現実の時間は、もう間もなく午後2時を迎えようとしていた。
……単純計算8時間で1日が過ぎる。
現実の一日が【GTO】の世界の3日に換算されるというわけだ。
大まかな時間間隔を把握したところで、アーネットさんにそろそろ、行きますねと声をかける。
「あら、もうこんな時間なのね。ついお話に夢中になっちゃったわ……人と話すのなんて久しぶりだったから」
そう、笑いながらアーネットさんは返してきた。
「……この服お返ししないと」
服を脱ごうとする私に、いいのいいの……とアーネットさんが言う。
「もう娘も着ない服だからあなたにあげるわ……その代わりお願いがあるの」
「何でしょうか……?私にできる事であれば……」
そう切り返すと、只一言。
「また、私の話し相手になってくださいな」
そう言って笑うのだった。
ポロンとポップ音が鳴る。
どうやらクエストを完了したようだった。
同時にLvも上がったようだった。
後で確認すればいっかと今はポップを無視する。
「私でよければ、また来ますよ!」
「ルナちゃん……まってるわね。いつでも」
アーネットさんがそういうと……
ポロン。と
告知音が鳴る。
New「再来:ロック受託可能までまで7日」
条件付きの……クエストが浮かび上がるのだった。
?
アーネットさんの家を後にして、相変わらず灯台を目指して歩く。
その身には、少し大きい服を着て。
その服は白を基本としたチェック柄のセーターと、現実でよく見る、ジーンズのようなものだった。
……ふと装備がどうなっているのかが気になる。
果たして、この服は、装備として反映されているのか。
気になった私は「オープン」の声と共に、装備欄をチェックした。
『チェックのセーター』
アーネットさんからもらった服。
Def+4
Mdf+2
『ブルージンズ』
アーネットさんからもらったズボン
Agi+3
……初期装備よりもそれぞれ値が1ずつ高かった。
ちょっとしたお得感を感じ、アーネットさんに心の中で再度感謝し、中心にある灯台を目指してまた歩き始めた。
灯台に着くと、そこにはたくさんのプレイヤーが、PTを募集していた。
口頭でPTを募る者、チャットに細かく記載をして募る者様々な人たちがいる。
私もその波に乗るように、PTを募集する。
「どなたか、私とPT組んでくれませんか……」
その言葉は、周囲にいる人達を振り向かせるには十分だったようだ。
大勢の人が「あの子、可愛くね?」といった声をあげる。
また、装備を見て何かを考えている人もいるようで「もう初期装備じゃない……?レアドロップ情報持ち?」
だが、気後れしているのか話はしているようだが、声をかけてくれる人はいなかった。
……まぁ、仕方ないか。
そう思っていると、男性が声をかけてくる。周りに数人の男性を連れて。
「おい、嬢ちゃん。スキル構成を教えてくれないか?それ次第ではPTに入れてやる」
初対面の人に対して、失礼な口調で。
「……支援術、付加術、回復魔法をメインとしてサブに、風魔法……それから召喚術です」
(普通は挨拶から入ったり名前、名乗ったりするでしょうに……)
少し思う所はあるが……所詮ゲームの中だ、ある程度は仕方がない。
堪えて、答えると突然その男性たちは笑い始める。
「……何がおかしいんですか?」
流石の私も、スキル構成を笑われたことに対しては苛立ちを覚える。
「嬢ちゃんは、正式サービス時から始めた初心者かな?スキルの説明文はよく読んだかな?」
……ある程度は。
そう口にしようとして、黙る。
……この人が、言いたいことが何となくわかったからだ。
だから黙って、男性の眼を見据える。
「……だんまりか。まぁ、いい。回復魔法はいいが、支援術、付加術を取っている意味がまるでわかんな。そんな、序盤では『死にスキル』を取ってどうしたいんだ?大体、召喚術だってそうだ。『召喚するまでに時間がかかりなおかつ、親密度が低いと命令を無視する』しかもPT枠を一つ潰すスキルなんて……いい所がほぼないじゃないか」
周りの人にも聞こえる様に、男性は高らかに宣言する。
周囲の男性たちも、途中から冷え切った目で、こちらを見つめていた。
その発言に反論する術は……今の私にはない。
……この人が言っている事はすべて事実だから。
支援術の魔法は、Lvが低い間では一度に魔法効果を与える対象が一人しか選択できないうえに、効果時間が短い。
色々魔法はあるが、多くは基礎ステータスをアップさせる効果の魔法が多い。
だがその上昇率は基礎ステータスに対して0.1倍。初期値では1しか上がらない魔法なのだ。
なおかつ消費MPが他の魔法に比べると多いため、不遇スキルと言われる。
付加術は、一時的にスキル発動に対しての消費MP量が減るという魔法や武器に属性を付与するといった魔法が主ではあるが、こちらもLvが低いうちは一度の魔法での対象が一人しか選択できない。
そして、支援術よりも消費MPは多くすぐにMPを枯渇させてしまう原因となる。
これだけでも、大抵の人は序盤にスキルに組み込んでいる人を毛嫌いする要因となりえるのだ。
私の場合はそこに、さらに召喚術が入っている。
【GTO】の世界では、基本6人までのPTが組めるが、召喚されたモンスター1体に付きPT枠が減ってしまうのだ。この為、召喚術師とPTを組むとアイテムのドロップ確立や分配方法などが複雑化される。
ダンジョン攻略においても、レイドにおいてもそうだが連携も取りづらくなる……いわば、良い所がほぼないスキルなのだ。
……10個の内,3つのスキルが不遇でありさらにメインに置いていますと公言すれば。
何を言っているんだ?と思われても仕方ないという事である。
……まぁ、こっそりとかさらっと教えず、大々的に言う人もモラル的にあり得ないのだけど。
「女性だから、女の子だからチヤホヤされると勘違いしちゃったのかな? はっ……ご愁傷様」
その男性は、哀れだなといったトーンで話を区切る。
今度は周囲に居た、人たちに向って、丁寧な言葉遣いで諭すように言葉を紡ぐ。
「……と、外見だけでPTに誘う人もいるから注意した方がいいですよ?皆さん」
そう言い笑う……周りの男性たちも同様に笑う。
大勢いた筈の、プレイヤーたちは黙り込み何事も無かったかのようにPT募集を再開する。
(……はぁ、こんな人まだいるのかぁ)
他者を見下すことで愉悦を感じる人が。
というか、なんですか。この人は女性に対して、どんな恨み辛みがあるんですか……。
呆れて物も言えません……が、反論はしておきましょう。
「……随分と失礼な人ですね。さすがに私だってそこまで言われれば怒りますよ?」
「おぉ怖い。しかしまぁ、回復魔法があるならPTに入れてあげよう……と思ったがそうだった俺のPTメンバーですでに回復魔法が使えるやつがいたんだった」
好きなだけ怒ってくれ、とぶっきらぼうな言葉と共にその男性はその場を去ろうとする。
(……言いたいだけ言って、はいさよならですか!! 最初からPTに入れてくれる気もなかったくせに)
「……去る前に一言だけ、あなたのお名前は?」
「俺か……?俺は『ドゥラーク』だ。そしてPT名はハイラント……いずれこのPTメンバーでギルドを立ち上げる予定だ。覚えておけ。お嬢ちゃん」
そう言って、高笑いしていた。
(……何が救世主ですか。どう見ても愚者の方がお似合いですよ……)
心ではそう思いつつ、抑える。
「そうですか……では覚えておくことにします。ドゥラークさん。支援術と付加術を馬鹿にした事、忘れないでくださいね。『絶対に後悔させてあげますから』」
そう言い、私はその男に背を向けた。
猛る心を、怒りに燃える眼差しを携えて。
私事ですが、明日明後日と家に居ない環境の為、もしかしたら投稿できない可能性があります。
予約投稿を予定していますが……間に合わなければ木曜日のみお休みさせていただきます。
時に、